『夢野久作(文芸・小説、マンガ(漫画))』の電子書籍一覧
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不条理の手触りを戦慄し愉しむ。評価の高い、7篇
明治20年ごろ。煤煙におおわれた北九州の炭坑都市の街はずれに奇妙な道楽をもつ、ひとり暮らしの名物老爺・藤六が営む小さな居酒屋があった。道楽とは、乞食をやたら可愛いがり、忙しいときでもかならず何かを与えることだった。この老爺がポックリ死んでしまった。店からは、白紙に包んだ大量の麦の黒穂の束と、古ぼけた茶褐色の頭蓋骨が発見され、人々を驚かせた。その後、この地方には乞食が群れ集まったかと思うと、まもなくひとりもいなくなってしまった。人びとは乞食の赤潮と呼んで不気味がった。これが血の気もよだつ惨劇の幕明けだった。アウトローの人間群像を描いた表題作ほか「山羊鬚編集長」「笑う唖女」「巡査辞職」「人間レコード」「芝居狂冒険」「オンチ」を収めた戦慄の世界。
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乱歩に激賞された表題作など斬新な試みの傑作3篇
夢と現実を巧みに融和し、異色の作品を遺した夢野久作。その土着性と戦慄の文学は、魂からほとばしった彼の情念がそのまま文字に残されたものである。肺病を病んだ美貌の女流ピアニストが、自身の出生の秘密に思いをめぐらし、母親にうりふたつの歌舞伎俳優に手紙をしたためる。天才的な押し絵作家だった母と俳優の父、ピアニストと俳優の関係は。表題作はじめ、作者一流の話術がもっともよくその本領を発揮した代表作「氷の涯」「あやかしの鼓」の3篇を収録。 -
むごい夢か、グロテスクな現実か。7篇を収める
「ホホホホホホホ……。わたしはねえ失恋の結果、世をはかなみて、何度も自殺をしかけたんですって。そんな記憶はチットもないのに」。古い土蔵の2階に閉じこめられ発狂したはだかの少女。たったひとつの人形を相手に頬ずりし、話しかけ、泣き暮らすだけの毎日だった。そんな彼女が、ふと目にした新聞記事の切れはしから抱いた、世にも戦慄すべき狂人の妄想とは……。表題作をはじめ、夢と現実とが不思議に交錯している夢野久作の世界。ほかに「縊死体」「難船小僧(S・O・S BOY)」「焦点(フォカス)を合わせる」「斜坑」「幽霊と推進機(スクリュウ)」「爆弾太平記」を収録。 -
日本の近代文学史を彩るキラ星たち。そんな作家の代表作を短篇中心にコンパクトな一冊に収める文学全集。各巻に詳細な年譜を附す。怪奇幻想作家として知られる夢野久作。他にも、軍人、農園経営者、僧侶、謡曲教授、新聞記者と多くの顔をもっていた。本巻では、代表的な短篇を始め、詩、実父・杉山茂丸の評伝、能楽に関するエッセイと、特異な才能を発揮した著者の、多彩な作品群を見ることができる。
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[作品について]草川巡査は、高等文官試験の準備に忙しかった。そんなある日の早朝、駐在所の硝子戸をけたたましく叩くものがあった。深良屋敷の老夫婦が惨殺されたという。平和な村に突然降って沸いた兇悪犯罪であった。殺された老夫婦は、徹底した金の亡者で、高利貸しの取り立ては厳しく、納期の遅れる小作の土地は法律をたてに取り上げる。一方、村のつき合いには決して出てこない。それ故、嫌疑者は村人全員、というやっかいな事件であった。知らせに来たのは、最近老夫婦の養子になった一知というラジオいじりが唯一の趣味という村の模範青年。草川巡査は、この一知に疑惑の目を向けるのだが……。 1935(昭和10)年「新青年」11、12月号に掲載された。(小林繁雄)[初出]「新青年」1935(昭和10)年11~12月[文字遣い種別]新字新仮名
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