『笹沢左保、401円~500円(文芸・小説、実用)』の電子書籍一覧
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「思いきって、やったらどうなの」「何をだ」「わたしを殺すのよ」――社の常務の姪と不倫した挙げ句、妊娠させ、結婚を迫られてしまった夫。“玉の輿”を目論む夫に、妻は離婚を絶対拒否することで対抗する。はたして、夫婦の運命は……(「霧」)。ほか、全編会話だけで構成された異色の短編を6篇収録。
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「故萬田氏よ、お前を許さん」不気味な言葉を残し、失踪中の日本WHM社課長代理・安芸一弘が、死体で発見された。事件の真相を探る海老沢四郎。さらに安芸を慕う女性の白骨死体。苦闘する海老沢の前に、「萬田」と名乗る美貌の女性が現われた! 衝撃の真相! 非情な企業の論理! 先端企業の暗部に潜む病巣に、鋭いメスを入れた長編推理、野心作。
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女の部屋へはいったとたんに、何となくいやな予感がした。女のちょっとした行為に疑問を覚えたのだ。過去に一度関係をもち、これは十年ぶりの再会。女はなぜ、男を求めたのか。(表題作)男と女のさまざまな出会いと別れが生むミステリー、そしてサスペンス。現代の人間社会を鮮やかに浮き彫りにする傑作小説集。
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ミス・コンテストの最終予選に残った5人の美女が、最終審査を前にして、脅迫、交通事故、怪死……次々と謎の事件に巻き込まれてゆく。警視庁特捜班の追及が開始されるが、巧妙なアリバイ工作、鉄壁の密室など、複雑に絡み合った“犯罪連立方程式”が立ちはだかった。周到な伏線が、読者を不可能犯罪の迷宮へと誘う、笹沢本格推理ワールド決定版。
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本郷家の嫁姑の対立は、日増しにエスカレートしていた。姑の加代子を追い出そうとする嫁のマスミ、姑もまた逆襲……。大蔵官僚の夫・高次(たかつぐ)は、インサイダー取引事件で家庭を顧みる余裕がない。その渦中、近所の人妻・大河原美子が殴殺(おうさつ)された。しかも凶器は高次のゴルフクラブだった! ――永遠の問題・嫁姑の対立と、ミステリーの見事な融合。新機軸の傑作長編。
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杉並に五百坪の土地と家を持ち、中野でマンションを経営する未亡人が自宅で首を吊った。主治医によると鉄欠乏症貧血を苦に「死んだほうがいい」とまで言っていたという。自殺か他殺か?そこで登場するのが酒歴二十年、毎晩ボトルを空ける十和田定雄巡査部長。肝硬変寸前の真っ赤な自分の両掌をヒントに難問を描く(「肝臓の不安」)。ユニークな刑事たちがその特技を生かして事件に挑む傑作警察ノベル短篇集。
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東京地検検事・江藤昌作は、帰宅途中に立ち寄った喫茶店で、かつて思慕を寄せた根岸瑶子と15年ぶりに再会した。6年前に夫を亡くし、女手ひとつで1人息子を育てていたが、縁あって再婚するという。が、相手は24歳年上、しかも7度目の結婚と聞かされ、江藤は不吉な予感に駆られた……。その予感は適中した。狷介な実業家と美貌の妻と思春期の只中にあるその連れ子…彼らが綾なす“危険な関係”を鋭く描く!
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「先生は和食オンリーで、お酒はウィスキー一本槍ですものね」鹿児島本線の特急グリーン車で話しかけてきた女は、一面識もないはずだが驚くほどぼくの好みに詳しい。富士子と名乗ったがどうも偽名くさい。なぜ偽名を? という疑問とともにその晩、彼女を抱いた。五日後、定宿のホテルに帰京してみると……(「知りすぎる女」)他、様々な女との情交を描く官能ミステリー傑作集。
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三木秀彦は婚約者の姉・今日子に心魅かれていた。その今日子が、戦死したはずの従兄に偶然出会い、しかも彼女と離婚した男がかつて従兄の兵隊仲間だと知るや彼は「殺してやる」と叫んだ。その呪いは、今日子たち姉妹が襲われるという形で現実となり、妹は即死、姉は重傷を負った。婚約者の死で、三木は今日子と結ばれるかもしれないとひそかに期待したのだが……。不毛の愛の孤独を描く長篇推理秀作。
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古瓶問屋・三橋商会に勤める小田切は、社長以下首脳陣に呼び出され、こともあろうに恋人の容子を殺せと命じられる。先代社長の娘である容子は、会社を卑劣な手段で乗っ取った現社長たちにとって邪魔な存在であり、それに彼らがひそやかにすすめている陰謀を容子が嗅ぎつけたらしいのだ。きらびやかな企業戦争を、因習と旧弊で裏からささえる古瓶業界――そこに展開する男女の妖かしの愛を追求した長篇推理。
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伝九郎頭巾と聞いただけで、呑太は全身の血が熱くなる。どんな悪人であろうと、それなりの節度がなければならない。それが、この伝九郎頭巾と俗称される盗賊は、押し込み、追い剥ぎ、幼児殺しとその場の思い付きで凶行に及ぶのだ。必死に捜査を続ける呑太の前に、船頭が赤ン坊を抱えて飛び込んできた。(表題作)疫病神と恐れられる男の怒りが炸裂する痛快捕物。巨匠の文庫オリジナル。
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いまや、世界でもトップクラスの大国となった日本。しかし、日本人の文化的意識は果たしてトップクラスと言えるだろうか。知性、教養、知恵、誇りを失った日本人に、練達の作家が鋭い筆致で警鐘を鳴らす。
いまや、世界でもトップクラスの大国となった日本。しかし、日本人の文化的意識は果たしてトップクラスと言えるだろうか。最近の異常な凶悪犯罪の増加や、刻々と進む環境破壊に代表される世紀末現象は、もはや対岸の火事ではない。日本はこのままでいいのか? 知性、教養、知恵、誇りを失った日本人に、練達の作家が鋭い筆致で警鐘を鳴らす。 -
青年剣士・沖田総司の数奇な一生を描く。
不運な出会いを持たねばならなかった武家の娘・千鶴。その形見の懐中鏡に、新選組副長助勤・沖田総司はつぶやく。
「また、ひとり斬った」、命令のまま人を斬る! 組織に属し、その命に服しながら……。
だが、人斬りの空しさ、新選組への絶望、局長・近藤勇への不信、そして労咳に冒された肉体。幕末の青春とは、そして死とは?
筆者の美意識が投影された終章。多くの作品のテーマとなっている新選組を、沖田総司の視点から、組織に属しながらも“一匹狼”として厭世的な目で見つめた青年剣士の数奇な一生を描く異色の時代小説。 -
夫と息子が外国に出かけている2カ月間、敷地200坪、建坪60坪の奥平家は、女二人だけである。真佐子は姑と呼ばれる隠居の身であり、嫁の立場に置かれる奈緒は専業主婦である。――姑は嫁に日常のあらゆることに嫌味を言いはじめる。嫁も負けずにやり返す。疑心と憎悪が渦巻いて、女同士の闘いは、日に日に激しくなる。危うい人間関係を描く異色サスペンス。
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服飾デザイナー・宇佐見治郎は、充実した日々を送っていた。TVにも出演し人気を博している。しかし、そんな彼にも忌まわしい過去があった。2年前、デザインの盗用を抗議してきた男とその妻を殺害したのだ。それは完全犯罪のはずだった。しかし、ある日、彼のもとに死者からの脅迫状が――!(表題作)男と女の深淵を見事に描ききった傑作サスペンス・ロマン!
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白昼の路上で、美也子は夫と愛するわが子を刺し殺された。犯人は錯乱状態を理由に不起訴。そして四年後、その犯人と人妻の心中死体が発見され、美也子と、再婚した夫・石毛晴彦に容疑がかけられた。二人は、九州、北陸、北海道と旅をしながら、予想外の真相へ。前人未到、古今未曾有の全編会話だけの長編推理小説!(『同行者』改題)
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純情一途の恋に燃える八百屋お七、無軌道な邪恋にのめりこむ柏屋お駒。同じ小町娘と謳われながら、正反対の二人の恋が、やがてもつれ合い、あげくは殺人、放火の大事件へ……。お駒の父、柏屋忠兵衛や町奉行所同心、小野寺儀十を門弟にもつ俳人・松尾芭蕉は、鋭い推理で天和江戸大火の不可解な謎に迫る。〃探偵〃芭蕉があばく、悪漢、悪女の陰謀と愛欲模様。
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〃今年こそレコード大賞を獲れ〃レコード会社のやり手ディレクター鬼頭一平に至上命令が下った。――老獪な裏工作と卑劣な暴露作戦。そして生贄の女。ライバル追い落とし戦争は熾烈を極めた。病床の妻を失い、部下にも去られた鬼頭がつかんだものは?……現代社会を生きる人間が否応なくおちいる罠と孤独を非情に抉った傑作。
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直飛脚――それは徳川十一代将軍・家斉(いえなり)の密書を、定められた刻限までに目的地に届けることを使命とする、凄腕の武士たち。使命を果たせぬときは、即刻切腹。秋元炎九郎は手裏剣、本荘錦之介は大刀(だいとう)、太田又兵衛は短槍(たんそう)、各(おのおの)の武器を携え、彼らは極限の疾走を開始した。襲いかかる凶刃(きょうじん)をかわして、たどり着いた場所には……?! 痛快、傑作、新感覚時代小説の極北。(『一千キロ、剣が疾る』改題)
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四年間の平凡なOL生活が終わった。美弥子は郷里で結婚する。しかし送別会の夜、波乱のなかった人生をくつがえす事件が起きた。ひとり暮らしの彼女の部屋に、深夜、殺人犯の男が逃げ込んだのだ。異様に熱っぽい目。女の本能で、彼が何を考えているのかを予知できる(表題作)。笹沢作品の根底にある、あるものが濃厚に漂う、常に高い評価を受けてきた推理短編傑作集。
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社長秘書をつとめる倉沢ユミの姉のマヤは、結婚を餌(えさ)に騙した男を札幌で殺し、姿を消した。が、社長の大木戸(おおきど)は、マヤが犯人でないと主張、ユミを誘って現場を訪れた。美男の社長への淡い恋心。殺人事件は逆転できるのか!?(踊らされた殺意) 不可能興味あふれる本格推理から、意外な結末をむかえるサスペンス、怪談まで、笹沢作品の良質多彩が味わえる傑作集。
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愛人・鎌倉糸路に結婚を迫られ、妻・多恵には離婚を拒否され、悩みぬく小山田光男。ところが突然妻が蒸発、死体で発見された。……妻の昔の恋人など関係者と対決しつつ犯人を追う小山田は、ついに愛する女性・糸路をも疑いはじめた。すべてに疑惑の眼を向けざるをえない悲劇の男を、サスペンス・タッチで描く傑作長編推理。
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南伊豆今井浜温泉の、とあるホテル。静養に来た週刊誌の記者が、そこで妖艶な美女と意気投合し、彼女の部屋でひと夜の情事を楽しもうとした。しかし、いざという前に彼女は不可解な失踪を。彼は警察から疑われる羽目に。(表題作)魅力的な謎の設定、論理的推理、そして結末の意外性。本格推理の醍醐味を伝える推理小説集。
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美貌の若妻・津村三重子は、ホテルの部屋に突如、侵入した三人の暴漢に犯された。しかも、その鬼面をつけた一人の男は、彼女の八年前の過(あやま)ち、少女売春の相手だった。夫に知られることを恐れ、地獄の脅迫電話に呼び出されたホテルの15階の部屋。三重子がそこで目撃したものは!? 現代の性と犯罪を鮮やかに抉(えぐ)る愛欲サスペンス。
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剣の師・荒木又右衛門から、天分(てんぶん)に欠けると宣告された若き武芸者・正木(まさき)伊織は、厳しい修行の末「夢剣」を体得した。まさかその剣が……。剣豪物から股旅(またたび)物まで、推理小説的手法を縦横に駆使した傑作集。
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妻を陵辱した不良学生を殺した須賀原純は、将来を嘱望された若手官吏だった。情状酌量され、五年の執行猶予判決。それもあと11日で自由の身になる……旧友が突然来訪したのはそんな大事な時だった。「人を殺した。アリバイ作りに協力してくれ」――複雑な人間のもつれを鮮烈に捌き、アリバイ打破に新機軸をみせる傑作推理。
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都下、国分寺市の水谷家が不審火で全焼、焼け跡から新婚まもない水谷夫人の絞殺死体が発見された。夫が殺人容疑で逮捕された翌日、隣家に住む日比野蓉子の義妹・川添真紀が失踪。さらに千葉の殺人事件現場に真紀の定期券が! 真紀の残した言葉「三日月」の謎を解くべく、蓉子は恋人・瀬戸とともに九州へ飛んだが!? 平穏な家族の裏に隠された恐るべき真実とは?
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能代(のしろ)三香子は、別れた夫船津久彦が溺愛する娘千秋を、復讐のため誘拐した。三香子は交通事故を理由に離婚されたが、これは久彦が愛人と結婚するための罠だったのだ。ところが、何者かが娘を逆誘拐!? 三香子は現在の愛人・別所攻次郎とともに、娘の行方を追ったが……。二重誘拐という斬新な状況設定のなかで展開する、本格ミステリーの白眉(はくび)!
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鉄壁のアリバイ。謎の記号。密室。あざやかな結末――笹沢推理文学の輝ける出発点。
事件は、商産省の組合の秘密闘争計画が、省側に筒抜けになっていて、スパイが発見されたことが発端だった。裏切り者の組合員と、彼の内縁の妻と誤認された女性が殺された。二つの事件の容疑者も事故で死んだ。事件全体に釈然としないものを感じた警部補。鉄壁のアリバイ。密室で姿を消した凶器。乱歩賞次席ながら世に出た、笹沢推理文学の輝ける出発点。 -
佐賀県多久(たく)市の山中で横浜在住の画家・井坂俊介が絞殺体で発見された。死亡時刻の2日前までともに写生旅行を楽しんでいたはずの妻・レイは死んだ井坂に対し、なぜか冷ややかな憎悪を見せる。2日前、夫婦に何が? だが、容疑者としてマークされたレイには、死亡時刻に完璧なアリバイが! 佐賀県警の〃落としの達人〃水木警部補の苦悶(くもん)。警察小説の傑作。
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宿命のもつ恐ろしさ。殺人現場に残された写真には、恩人の一人娘が写っていた……。
奇観を誇る佐賀の『七ツ釜』で会社員・波多野仁の死体が発見された。かつては凄腕(すごうで)でならした末森刑事も捜査に加わる。現場に残された波多野の車から発見された6枚の写真……そこに写されていたのは、なんと末森の幼少時の恩人・菊池香織の一人娘・恵理子であった。著者のテーマである、「宿命のもつ恐ろしさ、奇怪さ」を集大成した、入魂の本格推理! -
大都会では殺人事件さえ溶解して行く…傑作、4篇
ここは都心の一流ホテル、明日を考える必要のない人種がただれた夏を過ごしていた。ある日、彼等のひとり、倉石財閥令嬢が殺された。だが、よどんだような日常に突然起きた事件の波もすぐに静まり、彼等腐敗した階級には一点の悲哀も残さずに忘れられて行く…。大都会の中の若者の虚無と断絶を鮮烈に描く笹沢の、珠玉の短篇4篇を収録。 -
色と欲の渦が殺人事件で動き出す…長編サスペンス
協和興信社の草狩夏彦はアズマ観光の重役・佐山真一郎から調査を依頼された。佐山はその不思議な魔力で女を惹きつけ数人の女に貢がせていた。草狩自信は風間アケ美をヘンリー織田と争い、今度は織田に霧谷水江との仲を邪魔される。その水江は観光事業界の大ボス十時勘三郎の息子・勇二のトリックに引っかり簡単に身を許してしまう。おまけに、アケ美は松岡財閥の松岡準一との結婚を望んでいた。佐山、勇二、松岡の3人は、山中湖のダルマ山を買収、観光開発を計画していたが、これには裏がありそうだった。そして佐山の女の一人、クラブ「エリーゼ」のママ真佐江が殺され欲望の渦は動き出した。 -
特異な設定の、けれど等しく哀しい人間ドラマ、6篇
12月のある朝、疲れ切った様子の男が、枯葉舞う銀杏並木の間を歩いていた。名を高見沢といった。高見沢は浅野という元小児科医を探していた。そして、30年近く前、高見沢と幼なかった弟妹を捨てて逃げた母も――。弟と妹は事故で死んだという。その原因を浅野が知っているらしいのだ。ナイフ投げの芸人だった父親の、形見のナイフだけをポケットに、闇にかくされた自分の過去を辿っていく男。そして行きついたすえ見い出した真実は――。特異な設定でくりひろげられる異色の人間ドラマ。 -
死と背中合わせの痛切な青春像を描く、連作集5篇
1年以上も前にアメリカで死んだはずの混血の美人歌手が、札幌のクラブで歌っている――売れっ子歌手をかかえる音楽事務所の事実上の経営者、八田勉のもとに、怪談めいた情報が届いた。一笑に付したものの、“幽霊歌手”の存在が気になり始めた八田は、三日後、北海道へと向かった(「絶唱は海の彼方に」)。ほかに「噴煙はわが位牌」「十字架にわが業火」「過去に見た終焉」「明日こそわが柩」を収録。死に急ぐ若者たちの心に内在する懊悩を鋭くえぐり出し、ミステリー・タッチで綴った異色の連作短編集。 -
独創的な趣向とアリバイ・トリック。長編ミステリー
「あなたは父を欺した。父は自殺し、病身の母はショックで死期を早めた。妊娠中だった姉までが発狂して、両親の後を追った。あなたは父の事件で3年の刑に服したが、その後インスタントラーメンとカレーで売り出した新興会社の社長におさまっている。千坪の邸宅に住み、妻と一男二女が健在で幸せな家庭を持っている。群馬大学教授の一家として、つましいが幸せな家庭を奪われた私は大学も出ず、しがない地方駐在員だ。被害者が抹殺され、加害者が知名人として優遇されている。あなたの罪は償われていない。僕にはあなたに報復する権利がある。それが唯一の生きがいだ」。舞い込んだ一通の脅迫状が、江原庄吉郎の人生に波紋を投げ、やがて大波となってうねり始めた。江原の娘・麻知子は父を守ろうと苦しんだが……。 -
初期異色作、4篇。若き笹沢左保の意匠を愉しむ
久保田次郎は死んだ。いま、ユカが見下ろしているレールの上でボロ雑巾のようになって死んでいた。久保田は泥酔したあげく、この陸橋から落ち、終電車に轢断されたという。久保田とユカは来年早々には結婚する予定だった。通夜を抜け出して、久保田の飲み歩きの終点である「多文」へ。ユカの勘は正しかった。久保田は死ぬ30分前に「多文」に顔を出していた。しかも連れがいた。疑惑の火がユカの中で大きくなっていく。表題作ほか「勲章」「行った・来た」「曇天」を収録。著者初期の異色短編集。 -
サラリーマンの夢と代償を描く、戦慄の長編サスペンス
広告代理店に勤める倍償郁夫は、3年前に製薬会社の宣伝課員だった妻・紅子と結婚した。紅子は結婚後も勤めを続けていたが、倍償の方はその後閑職に追いやられたことから、独立して自らの広告会社を興すことを決意する。資金の工面を愛人・中曾根冴子らからの借金と妻・紅子の貯金でと考えていた倍償は、ある晩初めて盗み見た妻の預金通帳に巨額な数字が記されているのを知り唖然とする。紅子が死体となって発見されたのは、その8日後のことだった――。広告業界を舞台に、独立に賭けるサラリーマンの野望を描く傑作推理。
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社命は恋人殺害、妖かしの愛の行方…長編推理
株式会社三橋商会東京支社の社長室には大槻社長以下、常務の猿田、営業部長の大河内、仕入部長の鬼沢と首脳部全員が顔を揃えていた。呼びつけられた東京支社長の小田切次郎は、悪い予感で胸が痛くなる思いだった。この4人はあまり善人とは言えない連中である。「あの女を消すのは、君にしかできない」。大槻は不快そうにいった。あの女、三橋蓉子は前社長のひとり娘。大槻たちは、事実上、三橋商会を乗っとり、蓉子を東京支社へ追いやったのだ。そして蓉子は小田切が結婚を約束した恋人だった。企業戦争の中で愛を生きる男と女の闘いを描く長編推理。 -
時間の残酷を端正に描く表題作、ほかに3篇を収める
麻由子には祖父の正次郎と雑種犬のピロしかいなかった。学校に行っても、いつも一人。小学生の時は、明るくて男の子のように悪戯好きだったが、この2、3年で急速に変化した。麻由子が無口になったのは、製菓会社に勤めていた父が出張先の大阪で事故死し、同じ年に神経を病んで母が死んでからだ。麻由子はすべてをあきらめた。残されたものは祖父だけ。幸福だった代田町の家を出て祖父と孫はひっそりと暮らした。その祖父が怪我をして、麻由子は久しぶりに昔を思い出した。なつかしい代田町を訪れて、麻由子は不幸に塗り込められた悲しい真実を掘り出してしまう。 -
伊勢波邦彦警部、颯爽デビュー。傑作長編ミステリー
180センチの長身を真白な背広に包み、淡いピンク色のワイシャツに黒ネクタイと、ひどく派手な装いだが、オシャレに徹したスマートさがある。短く刈り込んだ髪、浅黒く精悍なマスク、知的で愛嬌のある大きな目。これが38歳の警視庁名物警部、捜査一課主任・伊勢波邦彦である。伊勢波に挑戦状が届く。それは全国の警察本部防犯課長会議の席上で明らかにされた。江戸の蘭学者・高野長英の曾孫と称する元東国大助教授で殺人者、高野真一郎からのメッセージで、四国宇和島の旧家の人妻・宗方美紗子殺害を予告するものだった。伊勢波は宇和島へ向った。美紗子は楚々とした美人であったが、数日後、尾道で殺された。遺留品は、高野の犯行を物語っていた。しかし犯行時刻、高野のアリバイ証人は、なんと伊勢波自身であった。高野は途方もないことを企んでいる。伊勢波は慄然とする。
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凶悪犯の気配を身近に感じる恐怖…長編ミステリー
1月末から始まった日野市の連続放火事件は3月に入って、15件目でついに死者を出した。放火現場の百草天神の階段の下に何者かに突き落された少女が死んでいた。4月に入って春休みで混雑する東京駅の階段で上から押されて30人が将棋倒しになって転げ落ちるという事件がおきた。白髪を逆立てた赤鬼のような男が突き落した犯人として目撃される。目撃者の錯覚か幻影か。しかしその後、佐賀の農道で、また福井の不審火の現場で、まったく同じ白髪鬼が目撃されたのである。東京駅事件の被害者で日野市に住む毎朝新聞の記者・神代金吾は、東京、佐賀、福井に現われた、まったく同じ白髪鬼を現代の怪談として取材に乗り出した。 -
〈同窓会屋〉の男を通して“現代の不信”描く長編推理
一流企業のサラリーマンを辞め、同窓会の雑務を代行する新商売で収入を得ている二本柳優介は、五か月前に結婚したばかり。しかし、妻がなぜかセックスを拒むことから、今は三田マンションの一室に別居していた。優介は日曜日ごとに通う高級レストランの常連。そのレストランで一人の女性と知りあう。翌日、マンションを突然訪れた彼女と関係を持つが、城戸由香子という名前以外、一切が謎だった。由香子の行動をさぐるうちに、優介は由香子が名門私立「東京文明学院」の理事長・浜中桜子に養われている事実をつかむとともに、この有名私学が内紛で大揺れになっていることを知る。そして次の日曜日、優介はマンションの自室で何者かに襲われた――。
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真相究明の果ての哀切な真実…抒情サスペンス
雪の降る白樺高原、女神湖の湖中に沈む車の中で、小沢正樹と五十嵐カオリの若き新婚夫婦が惨殺死体で発見された。カオリの義姉・初音川恵美は二人の死に疑問を抱き、愛人でもあるカオリの又従兄弟・五十嵐剛と共に事件の解明に向かう。ところが、カオリの告別式前に恵美を訪ねてきた男が熊本で殺害された。二つの事件を結ぶ謎とは。雪降る女神湖を舞台に、エロスと殺意が交錯する抒情サスペンス巨篇。 -
都合のよい関係のはずが…愛の異相を描く長編
入院中の流行作家・麻生は、華麗な女性遍歴でも知られていた。麻生は、見舞いに来た編集者・由布子と、当然のように深い関係になっていった。お互いの生活に干渉しないことを条件として――。だが、時間がたつにつれ、由布子は大きく変わっていった。しだいに、麻生を束縛するようになったのだ。それも、麻生の全生活を拘束するように。由布子の呪縛から逃がれようと、麻生はさまざまな手を打つが、すべて裏目になっていくのだった。男と女の凄絶なしのぎ合いの中で、“愛”が持つ、恐るべき牙を描く異色作。 -
彼のために、愛の勝利のために…ミステリー・ロマン
Mデパートの外商部長・須藤は、地方支店の視察に出かけたまま消息を絶った。須藤の部下で、愛人関係にある江津子が気をもむ矢先、須藤が死体となって発見されたのだ。それも、出張のコースから遠く外れた鳥取砂丘で――。原因は、Mデパートの内紛にあるのか、それとも? 須藤との関係が表沙汰になり、職場を去った江津子は、単身、須藤殺害の犯人を追った。そのためには、自分の体さえ餌として与えながら。美貌のヒロインが求めた真相とは?ミステリー・ロマンの秀作。 -
友情で結ばれた男女の崩壊と純愛の長編サスペンス
アパートのオーナーは美貌の人妻・玉造加代。17年前、高田馬場の学生アパートでは、加代を中心に4人の学生が集まっていた。森正春、白旗信夫、一ノ瀬夕彦、そして加代の甥・松木史郎。同じ釜の飯を食った4人は玉造アパートを巣立ち、社会に出ても仲間として深い縁で結ばれていた。その日、今は手広く貸しビル業を営む加代が殺された。重要参考人として追われた森が、2日後、摩周湖で若い女性と服毒心中した。「思い出の摩周湖は、静香と最短距離にあるような気がする」。先立たれた愛妻への思いを語る遺書に妹・白旗美智子は疑問を感じる。美智子に助けの手を差しのべたのは、夫の信夫でなく秘かに愛していた一ノ瀬だった。愛に燃えたふたりはサイパンに旅立ったが、その後を松木と刑事が追った。
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