『文芸・小説、女性向け、不破希海、森明日香』の電子書籍一覧
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聖美は経理課で働いている。昼休みになると、いつも一人で弁当を食べていた。ある日、聖美の弁当をのぞき込んだ九堂が言った。「おいしそうだね。俺も食べてみたい」同じ経理課の九堂は大手の会社から転職してきた。聖美より十歳年上。落ち着いた雰囲気を漂わせ、女性社員から注目を浴びている。さらに、九堂は聖美に聞いた。「よく窓の外を見てるけど、何か理由はあるの」聖美には、夕方になるとそわそわする癖があった。暗くなる前に帰らなければ、と。九堂に指摘されて、聖美は当惑した。誰にも知られたくないことだったから。
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藍子は大学生。勉強とバイト三昧の忙しい日々を過ごしている。入学して間もなく、映画愛好会のチラシを配っていた柊と知り合った。気さくな人柄に魅了され、柊と親しくなりたいと思った藍子は入会することを決めた。互いに惹かれ合い、藍子と柊は交際を始める。とても幸せな日々を送っていたが、卒業が近づいたある日、柊の父親に呼び出された。「柊には、会社の後継者としてふさわしい縁談がたくさん来ている」別れて欲しい、と。
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すみれには、なかなか恋人ができない。会社の同僚から男性を紹介してもらったが、あっけなく振られてしまった。そんなある日、すみれは幼なじみの丈哉と再会した。泣き虫だった頃が思い出されて恥ずかしかったが、幼なじみのポジションは居心地がよかった。このポジションでいつまでも安らいでいたいような。ここから先に進みたいような。すみれの気持ちは揺れ動く。
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小学校の入学式で出会った日から、香純は翔太郎に恋をしていた。けれど、翔太郎はサッカーに打ち込むために、すべての告白を断っていた。その気持ちを尊重して、香純は自分の想いを胸の中に隠してきた。高校の卒業式。長い片想いに区切りをつけるために、香純は翔太郎に打ち明けることを決意した。そんな香純に、クラスメイトの宏己が告白した。「好きです」と。宏己はサッカー部のメンバーであり、翔太郎の親友だった。
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和花子は華族の一人娘として、蝶よ花よと大切に育てられた。高等女学校に入学した年に、なつ江と惣治が新たな使用人として雇われた。二人とも和花子と同じ十三歳。けれど、なつ江は淫靡な雰囲気を漂わせ、惣治は小柄で痩せ細っている。和花子は惣治を弟のように思い、親しげに接した。歳月が過ぎ、一人前の庭師となった惣治はたくましい青年に成長した。庭の木を大切にしている和花子にとって、頼れる存在になっていた。一方、なつ江は和花子の父親に取り入って、正妻の座を奪うつもりだった。屋敷の中には不穏な空気が満ちていた。嵐は屋敷の中だけではなく、外でも吹き荒れていた。第一次世界大戦が終結して戦後恐慌が起こり、父親の会社にも暗い影を落とした。
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紫《ゆかり》は派遣社員として働いていた。上司の高梨は、若くして出世コースを歩んでいる。何かと絡んでくるが、紫には忘れられない人がいた。長く遠距離恋愛をしていたが、「もう待たなくていい」と言われたのだ。けれど、紫は未練がましく想い続けている。贈られたアメジストの指輪も捨てられない。アメジストは紫の誕生石だから。そのために、決して高梨の誘いに乗ることはなかった。ところが、衝撃的な事実を目の当たりにして、紫の恋心は打ち砕かれた。不覚にも高梨の前で泣いてしまう。さらに、高梨にも癒やせない傷があることを知り、紫の心に変化が訪れた。
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中学時代、美乃里はクラスメイトから嫌がらせをされて学校へ行けなくなった。周囲はたちまち美乃里から距離を置いたが、美術部の副顧問・堂園だけが励ましてくれた。「学校へ行けなくても、大好きな美術は続けよう」それが堂園と繋がる唯一の方法だと信じて。ついに美乃里の想いは通じた。二十歳の誕生日を迎える秋に、堂園と再会することができた。
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会社の同期と交際していたけれど、あをいは裏切られて失恋した。同僚たちから好奇の目で見られ、いたたまれなくなって会社を辞めた。もう二度と恋はしない。誰も好きになりたくないと思っていたのに、取引先の相手だった慈雨と再会して心が揺らぐ。慈雨とは話が合うと感じていた。けれど、お互いに踏み込めないまま「仕事の知り合い」以上にはなれなかった。それには理由があった。慈雨は手痛い失恋を経験していた。
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弓子は二十七歳。雑居ビルの中にあるオフィスで働いている。一人娘のために、親からは結婚のプレッシャーを受けていた。けれど、お見合いではなく、恋愛から結婚に至りたいと考えている。そんなある日、ふとした出来事をきっかけにして、若い警備員と話をするようになった。「ダブルワークをしている」と聞いて驚いたが……。
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13世紀の西ヨーロッパ。リアンはトリフォレスト家の姫。優しい両親と兄に見守られながら、平和に暮らしている。ある日、領内で兄とともに馬に乗っていたら、吟遊詩人の服装をした若者が倒れていた。そばには竪琴が投げ出されている。「山賊に襲われたのかもしれない」兄の言葉にリアンは心から同情し、館へ連れて行くように頼み込んだ。夜が更けてから、リアンは若者の部屋へ食べ物を持って行った。「助けてくださってありがとうございます」若者はディーンと名乗り、竪琴が無事だったことに感謝した。しかし、朝になるとディーンの姿は消えていた。まるで夕べのことなど嘘のように。それを知って、兄はリアンを叱りつけた。「ウェールズ大公の差し金だったかもしれない。我が領地も狙われているのだ」と。ディーンの優しげな風貌に、リアンは「まさか」と信じられずにいた。※ この物語は史実を参考にしたフィクションです。
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湖雪には母親がいない。小学校へ入学した年に家を出て行った。以来、父親と助け合いながら二人で暮らしてきた。クリスマスの夜、「早く帰る」と言ったのに父親はなかなか帰って来ない。心細くなった湖雪はドアの外で待つことにした。雪がしんしんと降り、寒さが身に染みる。涙がこみ上げてきたときに、どこかから歌声が流れてきた。「どんな人が歌っているんだろう」――泣かないで、泣かないで。きれいな歌声は、まるで湖雪を慰めているように思えた。
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