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『文芸・小説、ファンタジー、著者センター、日野 裕太郎、401円~500円』の電子書籍一覧

1 ~1件目/全1件

  • 昼は男性、夜は女性。艶かしくも美しいブロンドの主(あるじ)第三の目を持つ執事。角を持つ給仕の女性。黒猫に変化する庭師の少年。なぜロロが選ばれたのか、人外たちの住む世界はいったい!?

    「さっきもいったけど、あたしはサムカ。本性は猛るもの」
    「……はぁ」
    なんのことか、とロロが間抜けな返答を返すと、サムカが帽子を取った。
    彼女は頭部に一対の大きな白い角を持っていた。
    赤毛をかき分けて生える角は、頭部に沿って湾曲している。
    彼女の立派な角をロロは凝視し、硬直した。
    「よろしく。……冷めないうちに、スープ飲んじゃいなさいね。おいしいよ」
    驚いてしまい、ロロは反応を返せない。
    少年が咳払いをした。
    「俺、コルデワ。雑用だよ。たいてい庭で植木いじりやってる。本性は探るもの」
    ロロは食器を取り落としそうになった。
    着席していたコルデワが、紙を丸めるようにくしゃりと消えたのだ。
    なにごとかと問う言葉を探していると、彼のいた席に金目の黒猫が現われ、テーブルに前足をかけた。
    「わからないことがあったら、なんでも訊いてくれよ。力になるから」
    艶やかな毛並みの黒猫が、コルデワの声音でしゃべる。
    ぱくりと開いた口内の赤は、感心するほど鮮やかだ。
    ロロはベルを見る。人間に見えるベルに、すがりたい気持ちだった。
    「私の本性は裁くもの」
    いって、ベルは手のひらでひたいをすり上げる。
    するとそこに黒い瞳が出現し、何度か瞬いて消えた。
    追いつめられた気分で、ロロはプールを見た。
    男か女かわからない相手は、まなじりを下げると大口を開ける。
    プールは見事な赤い炎を吐いた。
    俺、よく気絶しないな──目にするすべてを、ロロは遠くに感じた。
    「歓迎するよ、ロロ」

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