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『講談社、ROMANBOOKS(文芸・小説、実用)』の電子書籍一覧

121 ~180件目/全470件

  • 旧華族との交渉を懸念する父のすすめで、滝沢一郎と婚約した田所真木子。真木子の義父・憲介は、東洋美術館長で、重要文化財審議会の委員をしている。旧華族の東照寺公一は、徳之内元伯爵家の相続人・摂子とブルー・セックスに耽っているが、真木子の婚約を知ると、掌中の珠を失う思いに悩む。二人の結婚に執念を燃やすのは、元伯爵夫人・徳之内津留で、一郎の父・滝沢代議士は、大名華族の元家令である。この政略結婚のかげには、徳之内家所蔵の国宝絵巻屏風をめぐる、母娘の醜い争いが隠されていた……。真木子をめぐる、仮装行列さながらの上流社会の虚偽と性の腐爛を描いた大作。
  • 婚約者に裏切られ、国際見本市アフリカ隊の一行に加わってモロッコにやって来た、羽仁生節子。眠れぬ夜、睡眠薬を飲んで床に着こうとしていた節子を、隊員のひとり、一の瀬が訪れた。翌朝、同じベッドに横たわる男の醜悪な体を発見して、節子は絶望する。スキャンダルは広がった。砂漠の古都・フェズで節子に求愛した若い大使館員・北沢も、噂を知ると冷たくなった。傷ついた節子の行手に待つものは……。異国の空の下、孤独な男女に忍びよる危険と誘惑、行きずりの愛、歪んだセックスを描いて、現代人の心の傷をユニークなタッチで抉る異色作。
  • 岡村は、由紀の体や顔を眺めながら、おこなうのが好きだ。由紀は、歩く時にも、ちょっとした仕種も、ゆっくりとしている。岡村は、由紀には官能の素質があると、前からにらんでいた。それはやわらかそうな体の線や、着やせする小造りの骨細な線、白いきめ細かな肌などから、そう思っていた。愉悦を覚えている由紀の顔の中で、いちばんエロチックなのは、開いた口だ。前歯が覗き、めくれた上唇のまだらな口紅の跡とか、前歯の裏側に当てられている舌の先とかの眺めが、岡村を興奮させる……。性の美食家の目にうつる女の微妙な成長を丹念につづる「美食」をはじめ、「笑いながら」など、傑作6篇を収録。
  • 私は、都心のホテルに泊って、4日目になっていた。最初の3日間は、仕事に打ちこみ、あとの4日間は、女を入れ替り立ち替りそのダブルベッドの部屋に引っぱりこむことを考えていたのだが、不意にギックリ腰におそわれた。ギックリ腰のまま、行為は可能だろうか? 秘策を思いついた私は、ホテルにとじこもったまま、次々と女を呼び入れて行った。白人の外国人スチュワーデス、看護婦、女マッサージ師、巫女……。さまざまな女たちとの奔放なセックスの形を克明に描いた快作「満開ホテル」の他に、異色の官能短篇小説4篇を収録した、鮮烈な作品集。
  • 郷子は、手島によって、女としてめざめた。郷子が結婚したあとも、手島は「会いたい」といい、彼女もまた、会いたくなるのだった。郷子の中の「女」は、彼女の意識を離れて、1匹のけもののように、生きていた。そのくせ彼女は、夫の小池との間を、なんとか平常の形で保っていきたいと努力していた。そんな郷子が、手島との違和を感ずるときが来た。彼女のからだは、小池でなく、渇きを充たしてくれる第三の男を求めるのだった……。セックスと心理のひだひだを、まさぐるように描いた「春の渇き」の他に、「不妊の歌」「犬と情熱」「声と楽器」など、全9篇を収めた珠玉集。
  • 《私》は、大学病院の若い精神科医。患者の丹野明夫は、人妻殺しを《私》に告白し、フミコという名に激しい心理的な反応をみせた。が、被害者であるはずの大和田緋那子は、健在なのだ。彼女は、美貌のパイロット夫人だった……。《私》は、患者の告白の謎を追わねばならない。丹野の恩師・宮川教授を訪れると、教授はフミコの名に動揺をみせた。《何かがある?》……。一方、緋那子の夫・大和田は、失速・墜落の幻想に悩みつづけているという。冷えた夫婦の陰影が漂っていた。
    やがて、丹野の水死、ジェット機の炎上と事件は続発する。《私》の前にも白い靄がかかった……。
  • 滝乃の体は、日常にないものへの渇きに、いらだっていた。電車の中で白い指の男を見つけて合図を送ったり、高校時代の教師を呼び出して、その渇きをいやそうとするのだが、やはり、彼女は、体が何かを求めてあぶくを出しながら煮えたぎるのを、どうすることもできないのだった。そんな彼女は、ある日、陽に灼けた上半身をむき出しにして建築現場で働いている2人の労働者と、声を交わした。間もなく2人の労働者と滝乃は旅館へ……。という「渇きの日」の他に、「処女前後」「二度目から素敵」など、全11篇を収めた魅力短篇集。
  • 肥前唐津藩の元御馬廻役・松村金太郎は、今では突っかけ草履の小粋な兄さん、人呼んで「わざくれ橋の金さん」だ。武士稼業はすっぱりやめてはいるけれど、実は、主君・小笠原長行の内命を受けて、ひそかに藩のため働いている……。ある春宵、将監橋の上、唐津藩の内紛で長行の反対派にまわり、藩侯の里方・信州松本藩と手を結んで、藩論を朝廷方に傾けようと企む奸人で、義兄の仇でもある周施方・長谷川番作をバッサリ。ーー粋でいなせな金さんが、同じ脱藩・小南敬助らと協力、小笠原長行を扶けて東奔西走の活躍。剣雲、侠気、哀恋が織りなす、子母澤寛会心の幕末傑作長編! <全3巻>
  • 紺野は、あるパーティの席で、樹良を知った。樹良は、国際的スチュアデスである。ひと目でその性的魅力の虜となった紺野は、あと一歩のところでスルリと身をかわす樹良を、執拗に求めつづけた。これまで女に肉体的価値しか認めなかったのが、恋情を抱くようにさえなった。そして、彼はついに、樹良を陥落させたのである。その夜、二人は激しく燃えた。ことに樹良の燃え方は、さすがのプレイボーイ紺野も驚くほどだった。しかし、次に会った時、樹良はきっぱりと拒絶したのである。あれほど燃えた樹良の拒絶する理由が、彼にはさっぱりわからなかった……。という衝撃の表題作など、全6編を収録。
  • 内外航空のパイロット・吉原は、美人で評判のママ・真田光と、自由で気ままな情事を続ける一方、勤務で外国に行くと、精力的に女性を求め、スチュワーデスや外人女性と一夜のアバンチュールを楽しむことも忘れない。愛人の光のほうも、吉原の留守中は、その豊満な体をもてあまして、客の山崎と浮気をしたり、女優の枝村昌子とレズビアンを演じたりする。こうして、吉原と光を中心とする情事の輪は、だんだんと広がってゆく……。綿密な取材にもとづいて、パイロットという特殊な職業をもつ男の、日常と愛欲生活をみごとに描いた、魅力溢れる傑作官能小説。
  • ジーンズ・メーカー社長の森崎は、30代で独身である。マンションの一室をアジトにして、大胆かつ臨機応変な手法で、次から次へと女を誘惑している。向かい部屋にいた湯川奈美とは、全裸写真を盗み撮りして糸口を作ったし、高校教師の松野輝子のときは、教え子の件で相談を受けたその日にホテルに連れ込むことに成功した。女たちの年齢や職業はさまざまで、雑誌記者、テレビ司会者、高校生などである。ハプニングな性の実現に最大のよろこびを覚え、華麗な情事体験を続ける一人の男を通して、現代人の赤裸々な愛の姿と性の深淵を、巧みなタッチで描く長編。
  • 暁子は、手術直後の苦痛に歪む秋山の唇に、しずかに自分の唇を重ねた。秋山の胃ガンが絶望的な状態になっていることを知った彼女は、そうすることだけが、友だちとしての祈りであり、励ましであると信じたからだ。彼女自身も、郷里の家の束縛を逃れた東京での彷徨によって、心に深い傷を負っていたのだが……。暁子の冒険にみちた経験をカメラ・アイとして青麦のように、あざやかな色とむんむんする匂いを持つ、折れやすい若者たちの愛と真実を捉えたこの作品は、人生の地層を流れる清冽なものを、多彩な手法で探った、青春文学の名篇である。
  • 夫の帰還を待ちわびながら、女代議士としてヒロポン絶滅を叫び、社会悪と闘う香川文江の姿を通し、人生の哀歓を訴える傑作。
  • 女性研究家の肩書きを持つ青池妙五は、熱心な実践的女性探求家である。中年男の彼には、20代半ばの後妻と、中学2年になる男の子がいる。しかし彼は、パトロンを持つ夫人をはじめ、スナックのマダム、女子大生、デパート・ガール、バーのホステスなどと、次々と関係を深めていく。好色であり、才能があり、上質の肉体的構造を持っている理想的女性を求めて遍歴する青池妙五の身に、やがて意想外の事件がのしかかる……。「誘惑」に人生の悦楽を、「情事」に人間の実存を賭ける男の、超人的な女性遍歴を、川上宗薫一流の筆致で描いた異色の長編小説。
  • あまり人のいかないハイキング・コースの途中で病気になった楠田は、一軒の草深い古別荘に犬と住む由緒ありげな女に、一夜介抱された。その妖しい魅力にひかれ再び訪ねた楠田と、女は「お茶でものむように」交わる。一方、楠田の恋人・順子は、片貝助教授を知り、その家柄や名声に酔わされる。片貝を取り巻く女性は多い。彼は、財界に名の通った湯浅社長の娘・治子を選び、結婚式を挙げるが、新婚初夜を待たずに、治子は伊豆の別荘から恋人・昭夫と脱走する。そのとき、片貝がそこで幽霊のように見たのは、教え子の楠田に付添われて立つ古別荘の女であった。俗物への諷刺をこめて、愛と真実を追求する長編小説。
  • 綾子は、戸村との結婚を真剣に考えるようになってからのある日、クラスメートの村井に電話をした。彼女は、村井に誘惑してもらいたい気持ちだった。プレイボーイの村井は、彼女が予想した通りに、ことを運んでくれた。千駄ヶ谷の旅館で村井に抱かれたとき、彼女は、その日の冒険の原因になった戸村の浮気など、どうでもいいという気分になっていた。悦楽の中にのめり込みながら、自分の中の女が声をあげていた……。平凡な働く女性の肉体と心の奇妙な交錯を、しゃれた筆致で描いた「悦楽の傷み」の他に、「女体感応」「失神作家」「獣と会った日」など8篇を収めた珠玉短篇集。
  • もの書きを職業としている今井の専門は、「好色」ないしは「女体」である。だから、世間では一応、プレイボーイで通っている。彼が外国旅行をする場合、各所旧蹟にはまったく関心がない。女、動物園、食事、この3つに関心は絞られる。そのうちでも、一番は女である。彼の予定としては泊る数だけ女と寝ることである。ロンドン、ブリュッセル、マドリッド、パリと、ヨーロッパの夜を、次から次へと女を誘惑して歩く男の華麗な情事体験を描いた「欧州色めぐり」の他、「マウナ・ケアなんか」「新・欧州色めぐり」「瘋癲序曲」「沈んだ関係」を収録。心こまやかで冷酷な性の世界を描く魅力溢れる作品集。
  • 大町が道をたずねるために立ち話をした人妻は、印象的な美人だった。彼は、偶然を装ってその人妻と再会し、数時間後にはホテルへ連れ込むことに成功していた。女の道にかけて、大町には、不可能ということがなかった。そのためには、相手の女につきまとう若い男に殴られて、失神することにも耐えた。一方、彼の友人の秋山は、芸者の菊丸にネツをあげ、「お座敷旦那」になっていた。菊丸には、すくなくも10人の男がいて、それが秋山の悩みのタネだった……。二人の男の色道修行を追いながら女の百態を描き尽した、魅力ある長編小説である。「新・肌色あつめ」の第3巻。
  • 大町は、ふゆのに誘われて、彼女のアパートに泊りに行く。ふゆのの妹・りえは、ふとんを3つ並べて、先に寝ていた。姉妹の真中に、大町は寝ることになるが、それは、ふゆのによって、はじめから仕組まれた筋書らしくもあった。大町は、あやしい刺激を受ける。そして、彼は、りえが、自分の友人の秋山とも交渉を持っていることに、興奮を新たにするのだった……。セックスの地図をあますところなく踏破して行く男を描くことによって、作者は、生きていることの充実をどんらんに追及する。巧まざる健康なユーモアにあふれた異色長篇小説。「肌色あつめ」第2部。
  • 声優の殿川は40歳、テレビドラマの私立探偵アーチー役の吹替えで人気を得、私生活でもいっぱしのプレイボーイだった。前の細君とはずっと以前に別れ、いまは、娘ほども年の違う流実と結婚している。なのに、平凡な生活では物足りない彼は、次々に新しい女と浮気を重ねた。そして、単なる浮気に飽きたらなくなった彼は、より濃密な刺戟を求めて、やくざのヒモがいるという女と接して、スリルを味わうようになる。一方、流実にも、殿川には悟られてない秘密の時間があった……。性の実現に最大の喜びを覚え、次から次へと女を誘惑して歩く男の、華麗な情事体験を描く異色長篇小説。
  • 隣室に住む洋子の声が時々、那可子の部屋まで聞こえてくる。それは、罵詈に属する言葉である。まだ少女のような女に罵られて黙っている男の気持が、那可子には腑に落ちない。男は、50近い年配である。男がいない時、洋子は、若者たちを呼び入れて不埒な行為をしているらしい。ある日、那可子は、男を自分の部屋に誘い入れた。洋子の不謹慎を男に教えたい気持と、男と浮気したい気持を、那可子は、半々ずつ持っていた。男の技巧は、幼稚だった。と、急に男は、顔を踏みつけてくれと那可子に頼んだ……。変態の男と、男を足拭き程度に考えている女の、奇妙な関係を描く表題作のほかに、8編を収録。
  • 芳土女子大学の学生である佐藤ノミエの綽名は、キャンパス110番という。キャンパスは、校庭の意味。事ある所には、彼女がいつもパトロール・カーのように現れて、あざやかに事件を解決していくからだ。粋で、おしゃれで、冒険好き、行きずりの男の子とのキッスなんかへいちゃらで、適当に正義派で人情家で、気はやさしくて合気道の達人というノミエが、東北出の重タンクを思わせる松子と組んで、手当たり次第に演じるボーイ・ハントのアバンチュール、笑いと涙のタッグ・マッチとは……。青春の息吹にむせる、生きのいい現代娘のスカっと胸のすくような無責任行状記。
  • 加奈子が地方の素封家に縁づいて、もう5年。夫・浩介は、長い病床にふせったままだ。看病に明け暮れる加奈子も、いつか貞女の幻を心にえがいていた。が、そんな妻に、夫は画廊勤めを勧める。《きみのからだの外のにおいが、僕には爽かな刺激になる……》ーー勤めに出た加奈子は、青年建築家・植木との恋におちた。女心の飢えをみたす、背徳の愛に、加奈子はおののく。が、夫はすべてを知っていたのだ。やがて、臨終の枕もとに妻をよんで、心の葛藤を告げる浩介。美貌の妻に、くらい喪の季節が訪れた……。という表題作など、全10編。
  • この女! きらい! パパをいじめて、きらい……。死の床に横たわった父の身体の下に隠された、美しい女の写真は、幼ない未来子に、生まれて初めて人を憎む気持を教えた。あれから、何年の歳月が、流れたことだろうか。あの女、演劇界の女王といわれる鳳しのぶの一人娘として、映画界入りした未来子は、たちまちスターの座についたのだった……。華やかな日々、肉体を通りすぎた何人もの男たち……。いつしか母と似た道を歩むようになった未来子の心は、だが、いつもひえびえと孤独だった。硝子細工のような繊細華麗な女体に、妖しく燃える炎を秘める、ひとりの女優の愛と性を描く。
  • 鳥居恭に、「棚からボタモチ」がころがりこんできた。友人の結婚式で会った、彫りの深いインド人のような美女が、一晩トコトンつきあいたいと申し出たのだ。きけば、気のすすまぬ見合い結婚を前に、相手の男に復讐してやる気になったという。思いがけない一夜の幸運に酔いしれる鳥居だが、それにつけても思いだすのは、毎日通勤電車で見かけるあの女のこと。豊かな胸をもち、歩くたびに腰の部分にポックリえくぼができそうな、つまりはこぼれるような愛嬌がにおってくる、理想のタイプの女なのだ。日頃の空想を実現するため、鳥居は大胆な「行動計画」に着手した……。
  • 母の残した背徳の傷痕ゆえに、愛をも捨て、憎悪と怨念の石礫を浴びて、贖罪にのみ生きねばならぬ、哀しくも美しい女のさだめ――中桐晶子は、淡路島へ向う船に、傷心をゆだねていた。若い男と蒸発し、淡路島の小料理屋で働いていたらしい母の宮子が、ゆきずりの客を情交後に腰紐で絞殺、睡眠薬自殺を遂げた。客は、奈良の一刀彫り美術商・宗方春之と判り、ゆきずりの無理心中とみられた。宗方春之の妻・志津は激怒した。詫びる晶子に、ちぎった数珠を投げつけ、母親・宮子の罪をつぐなえと叫んだ。そして、晶子は、母の贖罪のために、宗方家の長男・知之の嫁として、志津の前にさらされることになった……。女の憎悪と怨念の石礫を浴びせる志津、女の愛も捨て贖罪にのみ生きる晶子の、哀しくも美しい日々を描く。
  • 伊賀・上野は、鈴鹿山脈の麓にある城下町で、組紐の町でもある。千賀は、ここの忍町で生れた、人もうらやむ美しい娘だった。紅い椿の咲く頃、千賀は、組紐屋のしにせ「増住」に織子として雇われたが、そこで増住の一人息子・洋三を知った。これがヒロイン・千賀の愛の始まりであった。やがて、千賀と洋三は、将来をひそかに約束しあうが、家柄が違うことを理由に、洋三の父・大二郎は、下請けの「藤浪」の息子・良作との縁談をすすめた。愛する人との仲を裂かれて、千賀が良作の許に嫁いだ日、花嫁姿の彼女を見た近所の人々は、花が咲いたようだとささやき合った。千賀の悲しい一生の始まりだった。
  • 正確な株式銘柄情報に、自分の誇りを感じている佐川にとって、最近は、憂鬱の連続であった。勤め先である<週刊東京情報>に書いている彼の推奨銘柄が、外れ続けているのだ。失意の佐川は、しかしある日、耳寄りな情報を得た。河松製作所に中共から、大量のブルドーザーの発注があったという。佐川はこの情報に、情報屋としての誇りの全てを賭けた。推奨原稿を書く一方、借金して河松を20万株買い込んだのである。……兜町に生きる男の栄光と悲哀を描く標題作のほか、苛烈なビジネス戦争の実態を生々しく描く異色企業小説3篇を収録。
  • 著者長年の実地調査を基に、幕末の風雲狂乱の渦中にあって誠心一徹の生涯を貫いた男たち。近藤勇、土方歳三、沖田総司らの人間像を描破、新選組の全容を史実の壁に彫り刻んだ子母澤寛の代表作ーー幕末、江戸幕府の浪人対策の一つとして結成された浪士組は、本拠を京都・壬生に置いて、禁門警護の任につき、市中見廻りの役に当たった。勤皇か佐幕か、開国か攘夷か、国論はまっ二つに割れ、世はまさに日本国あげての動乱の時代であった。この時期、幕府への至誠一徹、暗殺剣の名をほしいままにし、尊攘志士をふるえあがらせた「新選組」の隊士たちは、その青春をいかに生き、その命と魂をいかに燃焼させたのか……。著者みずから長期にわたって新選組所縁の地を訪ね、あるいは古老の談を聴取して得た記録を基に、新選組結成から最後までの真のすがたを史実の壁に彫り刻んだ会心の力作。
  • 練塀小路の河内山宗俊、天下の直参、お数寄屋勤めのお坊主である。ばくちは打つ、ゆすりはする、悪い野郎の肩は持つ、病気と届けて城へも登らず、肝っ玉の太さは天下一品。11代将軍・家斉の治世、賄賂が物言い、奸臣のさばる腐った巷で、悪には悪を、弱い者には情けをと、直参の威光を利用して、胸がすくようなやりたい放題。子母沢寛の名調子が心地よい、痛快時代小説。
  • 「あれは、あなただったのね」……大乃木容造に襲われたとき、美樹は、はじめて気づいた。10歳の夏の嵐の午後、襖の外から垣間見た光景と、同じ姿勢だったからだ。美樹の祖母・小しのを開花し、母の真穂を開眼させた容造は、せめて、生きている限り、ただの一度でいいから、美樹をこの腕に抱きしめてみたいという、火のような欲望に駆られていた。美樹の激しい抵抗に、一度は燃えた容造も、その一言で全身から活力が萎えていった。だが……。宿命のかなしさ、女の業を描いた《火の蛇》をはじめ《秋扇》《うつり紅》など、全7篇を収めた短篇集。
  • 大学の医学部教授・仁王慶一郎は、主治医として、国光家に行くことが多かった。彼は、国光夫人・安芸子の、憂いに耐えた姿に、惹かれることがあった。ある日、仁王は、その秘密に、かかわりを持つ。主治医としての立場に、とどまることができなかった彼が、その秘密の糸をたどって行くうちに、戦争の前後に起こった、幾つかの悲しいできごとが甦ってきた。しかも、それらは、彼自身の家庭とも、関係があった。八丈島、熱海、九州・飫肥という3つの火山地帯を結ぶ、愛と憎しみの歴史を描きながら、現代に失われた心の問題を、執拗にさぐった、清冽な美しいロマン!
  • 映画スター・千坂京子は、無名だった頃、お金のためにヌードを撮らせたことがあった。教育のない彼女は、人一倍知的なものに憧れたのに、世間はその1枚のヌード写真のために、彼女に肉体女優の烙印を押した。京子は、あるときは烙印の痛みから逃がれるために、あるときは自分が高められると信じて、つぎつぎに、男の胸の中に顔をうずめた。男たちは、それぞれに、彼女の中に光を放っている純粋さを知っていた。しかし、京子の魂は、どの男によっても、安らぐことができなかった。……幸福を空しく追い求める美貌の女の短い生涯を、乾いた叙情で歌いあげた名作!
  • 戦後10年、夏のモードに選ばれ、ドレスに身をまとい、ステージを歩く美女たち……。新時代の職業=ファッション・モデルを中心に、現代社会風俗を著者独特の犀利な筆で描いた興味深い力作。
  • 小ぎれいで素人くさく、何となく御しやすい感じを男に与えるトキは、39歳の未亡人である。村の男たちは、トキの女を意識して蝟集する。彼女の噂は消えることがないが、噂の実体を掴んだものはいない。村人は、未亡人という名に拘束を与えることに、満足があるようだった。しかし、トキは、女であることを十二分に生かして生き泳いでゆく。愛欲のむなしい絆を描いた、巨匠の珠玉長編小説。
  • 大学生の卓也は左翼運動崩れ、女子大生を相手に怪しげな闇斡旋をしている。一方、財閥の御曹司・道彦は、怠惰な生活を送っている。汚職の責任を取らされる自殺した父を持つ葉子は、世の中を見返すために、女優として成功するも、道彦が運転する自動車で事故死してしまう……。卓也が相手をする女たち、ゲイ・バーのジャニー、クラブのマダム・文枝など、多彩な人物が登場する、長篇風俗小説。
  • 関東大震災の翌々年に入隊した、飛田二等兵。2日目にはもう、二年兵たちを相手に大立ち回りをやらかした。除隊後は、宿無しとなったところから這い上がり、あらくれ者を束ね、労働者として教育し、やがて、国家事業を請け負うようになる。昭和のフィクサーで、任侠映画「唐獅子牡丹」シリーズのモデルとなった人物、飛田勝造(東山)の波乱万丈の半生を描く! 高倉健主演の同題映画の原作小説。
  • 神保羊子は、雑誌の編集の仕事をしている。取材で知り合った作曲家・郷雪生の、芸術家ぶらないナイーヴであたたかな人柄に魅かれ、病気で寝込んだ郷を放っておけずに、徹夜で看病する。その夜以来、郷の胸のなかにも、羊子の姿が強く灼きついて、お互いに愛しあうようになる。そして、結婚の約束をしたふたりの前に、郷が貧乏な留学生であった昔の恋人の密石麗華が、今は実業家の国分夫人となって出現する……。虚偽を許さない若い娘の心に写った「傷ついた世代」の苦悩を通じて、つねに裏切り合いながら救いを求めている、人間の魂の深部とさまざまな愛の想いを、鮮やかに、綿密画のように描きあげた長編小説。
  • 660(税込)

    ふと魅かれた女のせいで殺人事件に巻き込まれたゴルフ練習場の食堂のボーイ、彼を容疑者として追う警察、新聞記者が、それぞれ事件を追う! 天下の名宝である30カラットのダイヤを巡る連続殺人と、深まる謎。本格ミステリー。
  • 堂堀不動産の独身社長・堂堀進六は、男盛りの36歳。生まれは群馬県の貧農の六男坊だが、中学卒後、すぐ上京。兜町の証券会社の小僧をふりだしに、たちまち株で2億円のボロ儲けをして独立した。金には強いが滅法女にヨワイ進六は、自ら「風俗研究科」と称して、女の拓本蒐集を男子一生の悲願とする。東名高速をぶっとばす車の中でのホステスとのカーセックス、全共斗女子大生との同志的「結合」、さては、ガラスの床に座って用をたす女を見上げる猟奇的女研究など……。一盗二卑に徹することを色道修行の信条として、進六は今日も変った女めざして夜の街に出陣する……。
  • 赤石定造は、香港で人を買った。定価1円。彼はその男に500ポンドの保険をかけ、阿片を吸わせ女を抱かせることによって彼の精力を涸らし、1週間めに殺すことに成功した。保険金で定造は教会を建て、カトリック信者を装いながら、教会を阿片と売春の巣窟に作りあげた。こうして手始めの「銭」を掴んだ定造は、貿易商社を設立して帰朝し、KK赤石を造りあげ、悪の公式、つまり殺人・脱税・不正輸出などなどによって、あくなき「銭」への欲望を果していく。しかし「悪の公式」は、やはり万能の公式ではない……。「銭」を得るために手段を選ばぬ資本主義の公式を鋭くあばく、長編悪漢小説。
  • 清純で穢れを知らぬ娘・マリ子は、母の友人の一人息子で、現在は家を飛び出して麻薬密売業者の手先になっている青年・多賀一郎に会って、深い愛着を覚え、彼に自首をすすめて、更生の道へ導こうとするが、ふとした行き違いから、麻薬をもっていたマリ子だけが疑われて、留置されてしまい、一郎は逆に、密売業者の手で大阪へつれさられる。警察を出たマリ子は、家に戻らず、ストリッパーになってまで一郎を救おうとするが、麻薬業者たちの泥沼は、いよいよ深く一郎を引きこんでいく....…。清純な愛で愛する男を救わんとする乙女を襲う、激しい運命の起伏を描く、炎のロマン。
  • 期待とおそれに充ちた新婚の宿で、千江子は夫の庄一郎から、彼が戦傷のため男性の機能を喪失していることを打ちあけられた。しかし千江子は、肉体の結びつきよりも精神の交流にこそ真の愛があると信じ、結婚生活をつづけることを誓う。だが、庄一郎の肉体の欠陥は、精神の歪みをも招いていて、夫のいわれのない嫉妬に彼女は苦しめられる。そして、みたされない不自然な夫婦生活の渇きから、千江子は、彼女に言い寄る夫の下僚のプレイボーイ・石川に次第にひかれてゆく……。結婚生活における肉体の占める意味を抉り、奔放な現代愛欲図を描いた長編小説。
  • 夫の面前で何人もの男を転々とする妻、それでも平然と微笑する夫、そんな異常な環境の中で幸福をつかむ妹……。異色の愛欲文学。
  • 熱海の温泉旅館に勤める聖子を自活させようとする勝又の愛と、勝又にすがる聖子の愛。相克を繰り返す愛、巨匠円熟の筆。傑作恋愛小説。
  • 青年宰相の名で知られ、戦後、謎の自殺を遂げ悲劇の主人公となった、ある公爵の死因の秘密を描く、ミステリー・タッチの表題作など、全9編の傑作短編集。
  • 柿本精器の社長夫人・羊子は生来、その美貌に加え、奔放な性格の女性だった。結婚前からすでに男関係があり、結婚後もやまなかった。夫の礼介はこれを知ると激怒し、以来、妻に復讐するかのように隠れて放蕩する。そして、10余年が過ぎた。だが、羊子の乱行はやまなかった。息子の章は、自然にうとんじられた。章にとって心の結びつきは、家庭教師である22歳の青年だけになる。青年と秘かに愛し合っていた女中の喜久乃が、主人の欲望によって犯され、動顛し泣き喚く姿を、少年の章は不安そうに眺めていた……。愛欲の中に潜む人間の業を捉えた、力作長編。
  • 高校の仲良し3人の女性がたどる、それぞれの波乱の人生と恋と、そして株をめぐる復讐の物語。なにか重苦しい情念に突き動かされる!
  • 贋札造り、偽装化石師、偽真珠造りという3人の前に、突然姿を現し、そして消える可愛い魔婦。秘密の島に逃れる3人に、死の影が迫る! ゴジラ原作者による傑作サスペンス。
  • 裕福な家庭の子女が多く通う、一貫校の名門大学の中にあって、田辺信男は、大学から入った上京組だった。大原陽子は、学内でも有名な才色兼備の人だが、彼女が付き合い始めた有坂淳は、どこか陰のあるプレーボーイでよくない噂がある。ある日、陽子の落としたイアリングを信男が拾ったところから、3人の愛が絡みはじめる……。日本が高度成長期に入る時代の、ハイソサエティーな学生生活を活写した傑作。
  • 660(税込)

    布施学園理事長の布施英之は、布施家へ養子に入る前、実家の女中・雪子に子供を生ませる。英男である。英男は、別府の愛育園で育つ。20年目に再会した時、雪子と英男は浦和にいたが、雪子が前夫と関係を続けているのを知り、英男は家出して別府に戻る。折も折、英之の妻はガンで死亡。反対派の策謀により学園を追われた英之は、布施家を去る決意をして、英男を別府に訪ねる……。豪壮な邸宅に住む裕福な人々も、逆境に耐えていきる貧しい人々も、みな三尺の影をひきずって生きている。その孤独な影を、哀調豊かに描いた話題の長編小説。
  • 川口と有賀は、予科練上りの米軍通訳という経歴も同じだったし、年齢・性格も似かよっていた。粗暴な米軍人に対する共通した反感が惹き起したある事件を契機に芽生えた友情は、お互いの体内に欝積していく若さと可能性の残滓を確認しあうことで、さらに強固なものとなっていった。二人の若者にとって、未知の可能性はアメリカにしかないもののようであった。綿密な計画がたてられ豪華船に忍び込んだ二人は、満月のハワイ沖で、デッキから相次いで海中に身を躍らせた……。既成社会のモラルの中で、なお若者のエネルギーの純粋性を主張する、著者の野心作5篇を収録。
  • 健哉、三和子、十郎の3人の大きな子供たちを抱えてやもめ暮しの西條健吾は、秀れた才能を持つ建築家だが、純粋さの故に世に容れられない。子供たちは、ふとしたことから三島家の美しい2姉妹と知り合い、姉妹の母で未亡人の建築雑誌社社長・房子と父親との恋愛を嗅ぎつける。しかし、房子に横恋慕する評論家・江見は、スポーツランド設計に情熱を燃やす健吾を卑劣に中傷する……。それに対して、両家の子供たちは、その友人たちと協力して陰謀に立ち向い、親たちの婚約を実現させようと活躍する……。恋と夢にあふれたエネルギッシュな若者と理解ある親たちとの、明るいパンチのきいた長篇。
  • 人工授精に使用する精子を提供するアルバイトをする神立晋の精子で、性交なしに妊娠する、看護師のレン。自分の産んだ子が神立晋の子と分かった、名門家庭の妻・三鈴。そして、レンを愛するようになる晋の友人で路上でヤドカリを売る佐治、三鈴の夫・加瀬、医師・四宮……。彼ら彼女らが織りなす愛憎のドラマと、それを横目で見ている小説家・信夫倫太郎は……。力作感あふれる長篇小説。
  • 生物化学研究所の若き学究・宮原は、街の暗がりで焦っていた。手に持つスーツケースには、たとえようもない邪悪なものの幼生が収まっていたから。追っ手をかわし、早くこれを処分しなければ、人類に明日という日はなくなる。しかし、それはあまりに巨大な力へのはかない抵抗にすぎなかった……。映画「ゴジラ」の原案を担い、怪獣という存在を生み落とした怪奇小説家が、遊星から来た圧倒的な恐怖にあらがう人々を、ミステリータッチで描き出す。
  • 運は気まぐれなものである。8回表、中屋投手の乱れから、海城高校の1点のリードが危うくなったとき、早崎監督の頭に閃いたのは、度胸のいい刀根英一郎一塁手をリリーフに使うことだった。作戦は当たった。以来、刀根は大型の速球投手として腕をあげ、別所投手の再来とまで注目されるようになった。尊敬するプロの尾上捕手とも口をきく機会をえたが、これは高校野球にあるまじき卑劣な陥穽からだった。プロのスカウトが美辞をつらねて寄ってくる。巧妙なスカウト、刀根家の困惑……。英一郎の心の窓は、いつか同級生の清子に開かれていた……。文壇随一の野球通たる著者の力作。
  • 禁男の館に集った世代の違う女性たちが、封建社会に抗して奔放に生き、様々の人生劇を展開する、現代恋愛白書。読売新聞に連載され、三國連太郎・北原三枝で映画化もされた傑作長編。
  • はるかゴビ砂漠の発掘現場から、ひとりの男が古生物学者・曾根の館を訪れた。男はいわくありげに巨大で薄汚れた1匹の瀕死の蝶を差し出すが、曾根はすぐに打ち捨ててしまう。しかし蝶は、館の温室に隠れ棲み、やがて美しい少女に姿を変えて、曾根の前に姿を現した。化身の妖しい魅力の虜となった曾根だが、少女の目的はただ一つだった……。映画「ゴジラ」の原作者として知られる小説家が、異形と異能のものたちの蠱惑的な姿を流麗な筆致で描く、4編の幻想譚集。
  • 雨の井ノ頭公園の池に車が落ち、その中で女が死んでいた。残された男もののライターから、婚約者の秋月という男が浮かびあがったが、彼にはアリバイがあった。罠のにおいがした。そのにおいを頼りに、ひとりの刑事が動き始めた。すると、秋月のシロを証明した女が殺され、つづいてその女の部屋で、もうひとり中年の男の屍体が発見された。行方をくらました秋月は、いったい被害者なのか、加害者なのか? ……手さぐりで事件の核心に迫ろうとする刑事の行動の軌跡によって、戦争の傷痕と政治の腐臭とを、生き生きと描き出した、本格的な社会推理小説である。
  • 一代で堀江酒造株式会社を築き、大阪の財界でも女傑でとおっている堀江ギンは、孫娘の晴子に早くも結婚の相手をみつけるのに、夢中だった。当の晴子は、まだ学生だから、将来の夢と考えている。しかし、堀江家は、代々、女が家を継いで発展してきたから、晴子にもいい養子を、というギンの持論で、ともかく、晴子は見合いをした。相手は、汽船会社の重役のぼんぼん。奇妙なことに、その青年よりも、ちょっと変わっていて口の悪い脇村のほうが、晴子には好ましく印象づけられた。そして、だましうちの見合いよりも、晴子に瓜二つの美しい弓子の登場が、彼女の心を強くゆさぶった……。

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