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『文化、講談社学術文庫(実用)』の電子書籍一覧

1 ~60件目/全134件

  • 1,210(税込)
    2024/5/15 (水) 配信予定
    著:
    西山松之助
    解説:
    内田樹
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    絵画、舞踊、演劇、武術、茶、花、刀剣鍛造・鑑定……体を使って文化価値を創造する「芸」は、いかに習得し、創造していくものなのか。師匠から弟子への相伝作法から見る日本人の精神構造。家元制度というシステムの背景。千利休や芭蕉、世阿弥の芸術論や「秘伝」の哲学と社会的役割など、「芸道」という独特の文化社会を考察する!

    目次)
    第一章 芸道の成立  芸と芸道/「型」の理論/芸道成立の実例
    第二章 芸道の系譜  遊芸の系譜/武芸の系譜/大衆芸能の系譜
    第三章 秘伝の相伝  秘伝伝授の歴史/家元制度と相伝
    第四章 芸の習得   一生修行の世界/仏道の行/遊芸の行/芸の習得と想像
    第五章 至芸の境   守・破・離/名人と天才
    解説「芸」における弟子の効用    内田 樹(神戸女学院大学名誉教授・武道家)


    本書は『芸の世界 ――その秘伝伝授』(1980年刊 講談社)を改題したものです
  • 劇場のように華やかな装飾。高い天窓からふり注ぐ陽光。シルクハットで通勤するしゃれた従業員。乗合馬車で訪れる客を待つのは、欲望に火を付ける巨大スペクタクル空間!
    帽子職人の息子アリステッド・ブシコー(1810-1877)と妻マルグリットが、様々な施アイデアで世界一のデパート「ボン・マルシェ」を育て上げた詳細な歴史を、当時を描く仏文学作品や、19世紀初頭のデパート商品目録など稀少な古書から丹念に採取。
    パリの世相や文化が、いかに資本主義と結びつき、人々の消費行動を変えていったのか、
    仏文学者にして古書マニア、デーパート愛好家の著者だから描けた、痛快・ユニークなパリ社会史!


    内容紹介)
    客の目をくらませてしまえ!世界だって売りつけることができるだろう!

    「白物セール」のときには、それぞれの売り場が白い生地や商品だけを優先的に並べたばかりか、上の階の回廊や階段の手擦りを白い生地で覆いつくし、造花も白、靴も白、さらに家具にも白のレースをかぶせるなど、全館をすべて白で統一し、
    1923年の「白物セール」では、「北極」というテーマに従って、アール・デコ調にセットされたシロクマやペンギンが、ホールに入った客を出迎えるようになっていた。
    ようするに、ブシコーにとって、店内の商品ディスプレイは、〈ボン・マルシェ〉という劇場を舞台にして展開する大スペクタクル・ショーにほかならなかったのである。
      ――第二章「欲望装置としてのデパート」より

    *本書は『デパートを発明した夫婦』(講談社現代新書 1991年11月刊)に「パリのデパート小事典」を加筆し、改題したものです。
  • 明日、何を着ていこう――冠婚葬祭をのぞけば、服選びで色がもつ意味を気にする人はいないだろう。ところが中世ヨーロッパではそうはいかない。たとえば緑は恋を、青は誠実さを意味し、黄は忌避される色だった。中世の色は現代よりもはるかに饒舌で、絵画や文学で描かれた人々の衣服の色には、単なる色の美しさや好みを超えた、さまざまな意味が託されている。中世の人びとはどんな色に囲まれ、どんな気持ちで色を身につけていたのか、あるいは目の前の人物が纏う色から何を読みとっていたのか。
    多彩な史料から複雑で精緻な色彩コードを読み解き、中世人の日々の感情生活を豊かに描き出す。あの絵画もこの伝説もいっそう深く理解できる、色が語る中世世界への招待!(カラー口絵付き。電子書籍版はオール・カラー図版)

    待ちに待った初めての逢瀬。恋焦がれた女性が鮮やかな青に緑のオウムをちらしたドレス着て現れたら、相手の男性は有頂天になるだろう。なぜなら、そのドレスの意味するところは「誠実にあなたを愛します」。ところがある日、夢に現れた彼女が全身緑の衣をまとっていたら、悲嘆に暮れてしまうかもしれない。青が意味する誠実さに対し、緑は恋の色であると同時に変動の色でもある。彼女の心変わりが青を脱がせ、緑を着せたのだ――。
    このように単なる色の好みや色づかいの美しさを越えて、中世の色は複雑な精神世界を織りなしている。「中世の色は饒舌であり、中世の人びとは意味もなく色をつけることはない」。たとえば黄色には負のイメージがつきまとい、縞柄は道化師や娼婦、気まぐれな運命女神のものである。権威と権力を示す赤、醜い色からやがて「悲しみの色」として大流行する黒……。
    ブリューゲルやジョット、ヤン・ファン・エイクの絵画、数々の華麗な装飾写本の挿絵に、アーサー王物語をはじめとする騎士物語、貴族の家計簿や財産目録など多彩な史料から、当時の染色技術も視野にいれつつ、色彩に込められたメッセージを読み解き、色から見えてくる中世世界を描き出すのが本書である。
    グリーンゲイブルスのアンはなぜ「赤毛」を嫌ったのか、ルーレットやバカラなどのカジノ台はなぜ緑のフェルトでおおわれているのか、囚人服は縞柄で、スーツにダークカラーが多いのはなぜなのか。現代社会に今なお息づく色彩に秘められた歴史に迫る!(原本:『色で読む中世ヨーロッパ』講談社選書メチエ、二〇〇六年)
    【本書の内容】
    序 章 色彩文明の中世
    第1章 中世の色彩体系
    第2章 権威と護符の赤
    第3章 王から庶民までの青
    第4章 自然感情と緑
    第5章 忌み嫌われた黄
    第6章 子どもと芸人のミ・パルティと縞
    第7章 紋章とミ・パルティの政治性
    第8章 色の価値の転換
    終 章 中世人の心性
  • 政・官・軍のリーダーとして大英帝国を支えつつ、空前の豊かな生活を送った貴族たち。その知られざる実態とは!?

    イギリスの貴族は、国の主導者として法律を作り、政治を司り、軍隊を指揮する一方で、宏壮な邸宅では社交、狩猟、スポーツに熱中した。今では世界中に広がる「英国的」な文化にも、彼らエリートが育んだものが多い。イギリスを知るには、貴族への理解が不可欠なのだ。とはいえ、そうした貴族の実態は、多くのイギリス人にとって謎に包まれてきた。
    たとえば、貴族の身分はどのように決まるのか、カントリー・ハウスでの豪奢な生活はどのようなものか。貴族と紳士の違いは何か。どのような社会的役割を果たし、他方で社交に興じていたのか。そもそも、貴族の起源とは? 多くの事例とともに、軽妙な語り口でわかりやすく紹介する好著。(解説・新井潤美)


    プロローグ――大英帝国の先頭に立つ者
    第一章 貴族は稀族
    第二章 貴族の豊かな生活
    第三章 貴族の教育
    第四章 ノブレス・オブリージュ
    第五章 金と暇が生み出したもの
    第六章 貴族の生き残り作戦
    エピローグ されど、貴族
    参考文献
    あとがき
    解説 新井潤美
  • ハプスブルク家の支配のもと、血と力で600年の長きにわたり政治・経済・文化の要として欧州に君臨した、神聖ローマ帝国の都ウィーン。その都市と文化の調和はパリを羨望させた。芸術や学問にモーツァルト、クリムト、フロイト等々、数多の巨星を生んだウィーン文化の真髄を、聖堂、美術館、環状道路、カフェ、家具など都市空間に潜む感性に探る。
  • 氏神から産土神、株神を祀る。集落や同族、一家で神々を招くたびに役割を果たす神主の仕事とは? 祈祷・祭りと村の暮らしを描く。
  • 「人間の文化は遊びにおいて、遊びとして、成立し、発展した」。歴史学、民族学、そして言語学を綜合した独自の研究は、人間活動の本質が遊びであり、文化の根源には遊びがあることを看破、さらに功利的行為が遊戯的行為を圧する近代社会の危うさに警鐘を鳴らす。「遊びの相の下に」人類の歴史の再構築を試みた不朽の古典をオランダ語版全集から完訳。
  • 森と石、都市と農村が展いた後発のヨーロッパ文明は、どのようにして世界史の領導者になったのか。戦争・飢餓・疫病、ルネサンス・宗教改革・大航海を経てきたその歴史に建設と改新、破壊と停滞のリズムを読み取り、文明を一つのシステムとして通観する。西洋史の泰斗による格好のヨーロッパ入門!
  • 「あの世の闇」すら光り照らす猫の目を敬い、蛇の脱皮する姿に「復活」を想起し、糞玉を押す黄金虫に太陽を運ぶ神を想う……。ナイルの恵みで農業国として繁栄したエジプト中王国ー新王国時代。時に神と崇め、時に恐れ敵対した動物たちとエジプト人との関係や、動物ミイラの作り方、当時の社会や宗教観まで活写した、異色歴史書!

    内容一部紹介
    ◎古代エジプト人と猫の暮らし◎
    *夢に大きな猫が出たら吉兆。大豊作になる。
    *猫女神バステトは出産の神。新婚夫婦は欲しい子供の数だけ、護符に猫の絵を描く。
    *火事になったら火を消すよりも猫を助けよ。
    *飼い猫が死んだら家族全員、眉を剃って喪に服す…等

    序 文 
    第一章 猫
    世界最古の家猫図/オシリス神話/女神バステト/猫の聖地ベニ・ハッサン/パケト信仰/猫のミイラと棺/闇を退治する目/ネフルよ、ネフルよ/ブバスチスの「猫王」/バステトの祭り/猫の墓/エジプト人の愛猫心
    第二章 犬
    アヌビス信仰/西方の者/絵画と彫像/『二人の兄弟の物語』/エジプト犬のミイラ
    第三章 蛇
    二つのエジプト/『難破船水夫の物語』/悪蛇アポピス/翼ある蛇
    第四章 ライオン
    大スフィンクス/王たちとライオン/ライオン狩り
    第五章 黄金虫
    スカラベと太陽神/『死者の書』の図像/記念スカラベと印章スカラベ/護符スカラベ
    第六章 鰐
    ナイルの暴れん坊/ソベク神殿/オシリスを救う神
    第七章 ハゲワシ
    白い女神ネクベト/王冠飾りと棺の飾り/ハヤブサとトキ
    第八章 牛
    雄牛の神/雌牛の神
    第九章 驢馬、馬、駱駝
    砂漠と不毛の神/夷狄のもたらしたもの/洗浄の主役/奉仕のみの動物
    学術文庫版解説・・・・・・・ 河合 望(金沢大学古代文明・文化資源学研究所所長 金沢大学新学術創成研究機構教)
    古代エジプト略年表 

    本書は『古代エジプト動物記』(文藝春 1984年刊)を改題したものです。
    現在では差別的とされる表現が含まれていますが、本書が執筆された時代環境を考え、また著者が故人であることから、そのままにしてあります。差別の助長を意図するものではありません。
  • 東京大学が「帝国大学」だった頃、すべては始まった――
    「東大」出生の秘密を暴き、その虚像と実像を抉り出す!
     *
    明治19年の帝国大学の誕生は、のちの東京大学をも貫く基本性格を確立した歴史的特異点であった。エリート官僚養成、アカデミズムの独占的権威、立身出世・受験競争の頂点――伊藤博文、森有礼、井上毅ら設計者たちの政策的意図を辿りつつ、今日まで続く東大の本質とイメージの淵源を明らかに!

    [目次]
    第一章 帝国大学の出自――リヴァイアサンの生い立ち
    第二章 帝国大学のモデル――ドイツの大学から学ばなかったこと
    第三章 官庁エリートの供給源――工科系から法科系へ
    第四章 出身と出世――上昇気流にのって
    第五章 明治アカデミズムの体質――講座制と研究
    第六章 もしも帝大がなかったら――批判的展望
    あとがき
    解説 科学史/大学史を超えた「学問の歴史」 石井洋二郎
  • 1867(慶応3)年、パリ万国博覧会が開催された。日本が初めて参加した国際博覧会であり、幕府は徳川慶喜の弟である昭武を公使として派遣した。使節団には幕臣となっていた渋沢栄一が随行。帰国後、渋沢は、外国奉行支配調役として同行した杉村譲(愛蔵)とともに、全6巻の詳細な渡欧記録をまとめ、1871年(明治4)に刊行した。
    この記録には、フランスの繁栄を誇ったパリ万国博での見聞のほか、ナポレオン3世やイタリアのヴィットリオ・エマヌエレ2世、オランダ国王ウィレム3世ら欧州要人たちと徳川昭武の謁見、産業革命のただなかにあったイギリスの工業化や、政治・経済のシステムへの驚きなどが、生々しく描写されている。
    従来、この日記は、渋沢の単著として扱われてきたが、近年の研究により、旅の前半を幕臣として同行し、後に明治政府の官僚となった杉村譲の日記と渋沢の日記から編纂・執筆されたものであることがわかってきた。こうした旧幕臣の体験と知識が、その後の近代化に大きく生かされたのである。
    文庫化にあたっては、『世界ノンフィクション全集14』(筑摩書房、1962年)所収の大江志乃夫現代語訳を原本とし、「付録」として、一行の帰国の事情と帰国後の動向を記した、渋沢栄一談/小貫修一郎編著『渋沢栄一自叙伝』(渋沢翁頌徳会、1937年刊)の13章1節から4節までを収録した。
  • 発音も不明な謎に満ちた文様――エジプト聖刻文字、楔形文字、ヒッタイト文書、ウガリット文書、ミュケーナイ文書。主要古代文字が解読されるまで推理、仮説、検証を重ねた、気の遠くなるような忍耐と興奮の軌跡を、言語学と旧約聖書研究の泰斗が、平易かつ正確に描写。数千年を超えた過去との交流を先人とともに体感できる、心躍る書!(解説・永井正勝)

    まえがき
    第一章 言語と文字 高津春繁
    第二章 エジプト聖刻文字の解読 関根正雄
    第三章 楔形文字の解読 関根正雄
    第四章 ヒッタイト文書の解読 高津春繁
    第五章 ウガリット文書の解読 関根正雄
    第六章 ミュケーナイ文書の解読 高津春繁
    学術文庫版解説 永井正勝(人間文化研究機構人間文化研究創発センター特任教授)
    索引
    地図

    内容紹介
    両者の解く古代文字解読の世界は、解読当時の学者達や社会の常識を踏まえつつ、解読者の心境を代弁するかのような語り口でなされている。そこに時折加えられる古代社会の記述も相まって、読者は解読当時の様子をこの目で見ているかの如く本書を読み進めていくことができる。(略)本書の魅力は、文化に対する深い理解と愛を持った卓越した研究者の手になる部分が大きい。         ――――――「解説」より

    *本書の底本は『古代文字の解読』(岩波書店 1964年10月刊)です。文庫化にあたり読みやすさに配慮して、旧字を随時、常用漢字に置き換え、送り仮名も新字対応とし、ルビの追加を行い、明らかな誤植は訂しています。
    経年などにより説明が必要と思われた箇所は、編集部註として[ ]で補足いたしました。「最近」「現在」などの表記につきましては、原本が出版された一九六四年時点の時制といたします。
    本書には現在では差別的とされる表現も含まれていますが、著者が故人であることと差別を助長する意図はないことを考慮し、原本刊行字の文章のままとしております。
  • 1,375(税込)

    【幕末に「志士」たちを生み出した最重要思想書、その全貌を読む!】

    ―臣ここを以て慷慨悲憤し、自から已む能はず、敢えて国家のよろしく恃むべきところのものを陳ぶ―
    「序論」「国体」「形勢」「虜情」「守禦」「長計」からなる全篇の本文読み下し。平易な現代語訳・懇切な語釈を掲載。
    さらに参考資料として、正志斎がのちに開国政策を提言した『時務策』を併載!

    文政八年(1825)、幕府は異国船打払令を出し、日本近海に接近する外国船全てに対して砲撃を加え、排除することを決定した。会沢正志斎が『新論』を完成させたのは、まさにその直後のことである。
    一読するとわかるように、その内容は西洋諸国と直面をせまられ始めた日本全体の、今後の政策を提言するものである。だが、水戸藩主を通じて幕府を動かそうという正志斎の期待は実現されることもなく、また異国船打払令も徹底されずに、沿岸には外国船が自由に航行することが常態化した。
    しかし本書は、正志斎の関係者から友人へ、その友人から別の友人へと筆写が重ねられ、日本全国へと広まっていくこととなる。それは匿名の著作ではあったけれども、人々を引きつける何かがあったのは確かであろう。天下太平と呼ばれた時代にあって、その裏にあった言いしれぬ不安というべきものを明らかにした、という理由もあろう。結果的にこの書は、全国の志ある多くの人々を目覚めさせることとなった……


    *本書は訳し下ろしです。
  • 日本人はなぜ、いつ、「読者」になったのか? そして何を、どのように、読んできたのか?
    出版資本と鉄道による中央活字メディアの全国流通、旅行読者の全国移動、新聞縦覧所と図書館という読書装置の全国普及――官・民による、これら三つの全国的要素の融合から、明治期に活字メディアを日常的に読む習慣を身につけた国民、すなわち「読書国民」が誕生してくる過程を、出版文化研究の第一人者が活写。私たちの読書生活の起源がここにある!

    [目次]
    はじめに
    ■第一部 流通する活字メディア
    第一章 全国読書圏の誕生
    第二章 「中央帝都の新知識」を地方読者へ――新聞社・出版社による地方読者支援活動の展開
    ■第二部 移動する読者
    第三章 車中読者の誕生
    第四章 「旅中無聊」の産業化
    ■第三部 普及する読書装置
    第五章 読書装置の政治学――新聞縦覧所と図書館
    第六章 図書館利用者公衆の誕生
    あとがき
    学術文庫版へのあとがき

    [主なトピック]
    ○暴力沙汰まで! 「東京vs.大阪」新聞市場争奪戦争
    ○過疎地域を開拓せよ! 新聞社・出版社による地方読者支援活動
    ○駅は戦場! 漫画雑誌の隆盛はここから始まった
    ○お部屋訪問! 温泉地の貸本屋
    ○「情報にお金を払う」習慣を生んだ新聞縦覧所
    ○自由民権運動は下からの「読書国民」の創出
    ○読書の価値を再発見した日清戦後の一等国意識
    ○まるで監獄……帝国図書館の規律空間
    ○樋口一葉も友人と……女性が一人で行けない図書館
  • 急成長を遂げた周辺国からの侵略恐怖、増加する貧窮移民の不安、友好国へのぬぐいがたい不信、新たな感染症の脅威……「ドラキュラ」の恐怖と魅力の源泉には、黄昏を迎えた大英帝国の外国恐怖症があった。ゴシック・ホラーの金字塔に織り込まれた、ヴィクトリア朝イギリス社会の闇を描き出す!

    世界でもっとも有名な吸血鬼「ドラキュラ」。
    数ある吸血鬼作品のなかでも特権的な地位を得て、現代に至るまで映像化が繰り返され、日本では吸血鬼の代名詞にもなっています。
    そのドラキュラの恐怖と魅力の源泉には、19世紀末イギリス社会に蔓延する深刻な外国恐怖症がありました。
    「太陽の沈まぬ帝国」、「世界の工場」と謳われた栄光は過ぎ去り、軍事・経済ともに急成長を遂げつつある周辺国からの侵略恐怖、増え続けるユダヤ人など貧窮移民への不安、搾取してきたアジアの植民地から入ってくる新たな感染症の脅威……。
    落日の大英帝国に生きる人々は心の奥底で何を恐れ、そしてドラキュラは生みだされたのか。
    『パンチ』などに掲載された風刺画をふんだんに使いながら、ゴシック・ホラーの金字塔から読み解く世紀末ヴィクトリア朝の社会!

     イントロダクション
    第1章 ドラキュラの謎
    第2章 ドラキュラの年は西暦何年か
     帝国主義の世紀末
    第3章 侵略恐怖と海峡トンネル計画の挫折
    第4章 アメリカ恐怖と「栄光ある孤立」の終焉
     反ユダヤ主義の世紀末
    第5章 ユダヤ人恐怖と外国人法の成立
    第6章 混血恐怖とホロコースト
     パストゥール革命の世紀末
    第7章 コレラ恐怖と衛生改革
    第8章 瘴気恐怖と細菌恐怖
    おわりに――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究
    増補 もうひとつの外国恐怖症――エミール・ゾラの〈猥褻〉小説と検閲
    学術文庫版あとがき
    引用史料一覧

    コラム
    吸血鬼の系譜/シャルコーの催眠術/一八九三年一〇月二日のピカディリ・サーカス/ダイヤモンド・ジュビリー/火星人/海峡トンネル・パニック/ベアリング銀行の投機失敗/ロスチャイルド一族の結婚/ロンドンとテムズ川の汚染……ほか
  • 1,980(税込)
    著:
    山口昌男
    解説:
    今福龍太
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    様々な学問分野を自由に越境し、「知ることの楽しさ」を生涯発信し続けた<知の道化師>、山口昌男。その学問の真髄とも言える「アフリカ」研究を、丸ごと1冊・通史に編纂。思いがけなくも豊かなアフリカの相貌、実験的とも言える日本との対比、自身が描いたスケッチや、貴重すぎる図版を193点も掲載! 彼の地で暮らし、深い人脈を得た泰斗だからこそ書けた本作は、参考文献すらただの文字情報に終わらない、圧巻の充実ぶり。没後10年。今こそ、目からウロコのアフリカ通史を、吟味する!


    *本書は、『世界の歴史 第6巻 黒い大陸の栄光と悲惨』(講談社 1977年)を改題したものです。

    目次
    はじめに 人類史とアフリカ

    1 アフリカの古代世界
    1)アフリカにおける人類の起源
    2)アフリカの古代的世界
    3)黎明の輝き・
    4)サヴァンナの帝国
    5)東アフリカの王国
    6)アフリカの王権文化――そのパラダイム

    2 大発見の神話学
    1)プレスター- ジョンの王国を求めて
    2)アフリカの「黄金伝説」――ジンバブウェ遺跡とモノモタパ
    3)探険ラッシュの世紀

    3 伝統国家の栄光
    1)草原の覇者たち
    2)古都の盛衰
    3)奴隷の故郷
    4)アフリカと奴隷貿易

    4 東海岸――交易都市の繁栄
    1)世界へ開かれたアフリカ
    2)制海権をめぐる争い

    5 南アフリカのナポレオンたち
    1)南アフリカの原住民たち
    2) 南アフリカの清教徒たち
    3)シャカ王のズールーランド
    4)スワジ王国
    5)バストランドのモシェシュ王
    6)ムジリカジのンデベレ

    6 ヨーロッパによる仮死
    1)ヨーロッパ列強のアフリカ分割
    2)開拓者たちの運命
    3)アフリカ侵略の二つの型
    4)セネガルーー仏領アフリカの優等生
    5)最後の抵抗者サモリ= トゥレ

    7 再生への胎動
    1)マフディー運動
    2)キリスト教的反抗

    8 試行錯誤の現代史
    1)両大戦間のアフリカ
    2)エティオピアの反抗
    3)第二次大戦後のアフリカ
    4)コンゴ動乱
    5)ナイジェリアの内戦
    6)アンゴラの独立と内戦

    おわりに
    参考文献
    年 表
    図版参考資料一覧
    索 引
    解説 今福龍太
  • 全部読まなければ、この本のすごさはわからない!

    日本民俗学の創始者である柳田の原点にして代表作には、いったい何が論じられ、企てられたのか。
    「平地人を戦慄せしめよ」という高らかな宣言に込められたものとは何か。

    「ザシキワラシ、オシラサマや河童たちが躍る不思議な世界」
    「叙情豊かな日本人の原風景」
    という本書がまとってきたイメージの奥にある真価を読み取るための、
    懇切な解説つき全文現代語訳。
  • 1,210(税込)
    著:
    宮田登
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    世界が終わるとき、やってくる。
    蘇我馬子も藤原道長も惚れ込んだ弥勒(みろく)信仰。五十六億七千万年後に降臨し人々を救う、未来仏とは何か?

    広隆寺の国宝として有名な、弥勒菩薩半跏思惟像。弥勒とは、五十六億七千万年後に現れて衆生を救うという、阿弥陀や釈迦と並ぶ仏のことである。古代日本に伝わると、災害や飢饉と結びつき、末法思想(メシアニズム)として全国の民衆に広がった。戦後民俗学の泰斗が、中国・朝鮮との比較を通して、日本独自の弥勒信仰の歴史と民俗を復元し、日本文化の原型を描き出す。宗教民俗学を土台にした日本文化論!

    【目次】
    はじめに
    第一章 民間伝承としての弥勒
    第二章 宗教運動と弥勒
    第三章 比較宗教論における弥勒
    第四章 日本仏教における弥勒
    第五章 鹿島信仰と弥勒
    第六章 朝鮮半島と沖縄の弥勒
    第七章 世直しと弥勒
    第八章 大本教の中の弥勒
    まとめ
  • 妖怪博士の妖怪退治!!
    「コックリ」「天狗」「狐憑き」から、「妖怪屋敷」「西瓜(スイカ)の幽霊」「経を誦(よ)む古木」まで、全国の妖怪事象を蒐集しつつ、御一新の世になお蔓延る迷信を一網打尽にせんとした奇特な哲学者を突き動かしたものとは一体何だったのか?
    「妖怪学講義録」「おばけの正体」など、妖怪学の創始者・井上円了の精華をオリジナルに厳選した、決定版アンソロジー。

    [目次]
    編者序文
    妖怪談
    妖怪学講義録
    『妖怪学雑誌』論説
    (真怪論/妖怪学と諸学との関係/忘憂術/論怪)
    おばけの正体
    補遺
    (妖怪学講義細目/妖怪学講義参考書目/井上円了調査地一覧)
  • 河童、鬼、天狗、人魚、龍、雷獣、そして予言獣。異界からやってきた”不可思議な生き物“は、多くの日本人を魅きつけ、ある時は恐れられ、ある時は敬われながら伝承されてきた。江戸時代から明治時代を中心に、各地の絵図・ミイラ・報道記事を通して、妖怪という名前には収まらない奇想天外な生き物たちのめくるめく世界に迫る。絵図を多数収録!

    【目次】
    1章 幻獣名鑑
     河童
     鬼
     天狗
     人魚
     龍
     雷獣
     その他の幻獣たち

    2章 予言する幻獣
     件
     アマビコ
     アマビコの系譜
     予言獣の共通性
     吉祥の幻獣たち
     異形の幻獣

    3章 記録のなかの幻獣
     メディアと幻獣
     江戸の幻獣文献
     幻獣のデザイン

    4章 幻獣の背景
     予言獣の創造
     諷刺としての幻獣
     ミイラの伝承
  • 「子は怪力乱神を語らず」。孔子に代表される儒教の合理的精神のもと、早くに歴史の中に取り込まれ、断片的にしか伝わることがなかった中国神話。『山海経』や『楚辞』、甲骨資料などわずかに残された痕跡から、一つ目、一本足で猿面の山神を主人公に、古代中国史の泰斗が神話世界を大胆に復元する!

    最古の地誌であり、儒学の厳しい検閲の網を逃れて現代にまで生き残った、さまざまな怪物が登場する『山海経』。そこには一本足で、声は雷のごとく、黄帝が生け捕りにして皮をはいで鼓をつくり、その骨をばちに打ち鳴らすと五百里四方にとどろいたという山の怪物が登場する。また別の個所では楽園の番人を殺して不死の木の実を盗んだ罪によって、足にかせをはめられ、両手と髪を縛ってある山の木に逆さ吊りにされた怪物も現れる。このいずれもが「き」という音で呼ばれる、本書の主人公である。
    司馬遷が『史記』で歴史のはじめにおいた黄帝と、その強敵である蚩尤はともに風雨、とりわけ風を呪術的に自在に操る力を持っていた。風の神は同時にふいごを使う鍛冶神にも通じ、そして「き」もまた、鍛冶と深いかかわりがあったという。
    多くは猿面で一つ目、一本足で表象されるこの山神を出発点に、柳田國男や折口信夫の民俗学的手法や日本神話、時にはバビロニアのマルドゥク伝説からもヒントを得ながら、古代のはるか遠い祖先神をめぐるひとつの物語として中国の神話を大胆に復元し、さらにその後、儒教化によって神話が歴史へ、呪術が宗教へと変容するまでを描く。神話世界を冒険するかのようなスリリングな魅力に満ちた一冊。
    (原本:『中国の神話――神々の誕生』筑摩書房、1971年)

    第一章 異形の神像
    第二章 瞽師の伝承――中国の語部
    第三章 風の神の発見
    第四章 鍛冶師と山の神
    第五章 文化的英雄の誕生――三皇五帝
    第六章 神話の世界の消失
    第七章 乱――エピローグ
    あとがき
    解説 蜂屋邦夫
  • 古代、人は生きるために必要にかられて、結ぶこと・包むことを考えました。神が人間だけに授けた特殊な技法「包みと結び」が私たちの精神文化の基調となり、“礼法”という域に昇華するまでには、どんな変遷を辿ったのでしょうか。今や当たり前の景色となった「包み」と「結び」の起源を年中行事や風習から訪ね、由来と意味を解説。日本人の豊かな美の世界を堪能する!

    本書は、1991年10月、福武書店より刊行されました。

    目次
    はしがき

    一 年中行事と歳時
    はじめに 1年中行事の始まりと広がり 2「包み」の働き 3「結び」のしくみ 4暮らしの中の包み結び 5年中行事と包み結び 6中国の歳時記

    二 新年の季寄
    はじめに 1門松 2しめ飾り 3結び昆布 4生花初め 5馬騎初め 6着衣始め 7おけら祭り 8お年玉 9掛鯛 10幸木 11猿廻し 12しめ縄の四手 13綱引き 14包み蓬莱 15蘇散 16綯い初め 17縫初め 18初髪結い 19箸包み 20常陸帯の神事  21宝引縄 22万歳と鼓 23結び柳 24大黒天と布袋

    三 春の季寄
    はじめに 1梅若忌 2事始め 3桜餅 4凧 5新茶 6針供養 7三つ葉

    四 夏の季寄
    はじめに 1青簾 2菖蒲打ちと菖蒲の枕 3葵祭り 4鵜縄 5団扇 6扇子 7蚊帳 8柏餅 9祇園会 10鱚 11薬玉 12三社祭り 13代掻きと田植え 14襷 15端午の節句と粽 16茅の輪 17夏帯 18夏足袋 19夏場所 20匂い袋 21袋掛け 22 浴衣 23蚊遣り火

    五 秋の季寄
    はじめに 1牛祭り 2風祭り 3霞網 4鴨 5菊供養 6島田帯祭り 7ずいき祭り 8相撲節会と衣裳 9晴明神社祭 10俵編み 11七夕 12中元 13盆行事 14重陽 15風呂敷

    六 冬の季寄
    はじめに 1綾取り 2亥の子餅 3襟巻 4縁結び 5事納め 6紙衾 7角巻 8七五三と紐解き 9しめ作り 10障子 11頭巾 12歳暮祝い 13鎮魂祭 14縄跳び 15袴着 16日蔭の鬘 17鰤 18頬被り 19足袋 20羽織と胸紐 21節分

    七 通過儀礼
    はじめに 1新生児 2誕生祝い 3褌祝い 4結納祝い 5婚礼 6岩田帯 7還暦祝い 8葬礼 9法要 10水引 11熨斗(のし) 12袱紗(ふくさ)

    八 日本文化における包み結び
    はじめに 1神道的なもの 2仏教的なもの 3陰陽五行的なもの 4再び年中行事を考える 5包み結びとのかかわり
    あとがき
  • speechを「演説」と訳したのは福沢だった。
    そして福沢自身、抜きん出た名演説家だった。

    日本の近代化・文明化のためには、独立した個人が自らの思想を大いに論じ合わなければならない。
    明治という時代が大きく動き出す中で、日本のよりよき未来を、熱く巧みな弁論で語り尽くした、その記録。
    著作で見せるのとはひと味違う、福沢のライブ感溢れる言葉が、時代を超えて日本人の心を撃つ!

    今日における福沢の思想史的再検討をリードする編者が、残されている速記録や原稿から「名演説」を厳選し、わかりやすい解説を付して編集した、画期的演説集。

    【本書より】
    日本世界をもっとわいわいとアジテーションをさせて、そうして進歩するように致したいと思う。それが私の道楽、死ぬまでの道楽。何卒皆さんも御同意下さるように。

    【主な内容】
    第一章 「演説」と「交際」の創始
     演説はなぜ必要か/政府の専制から人民の政府 など
    第二章 実業界へ出でよ
     智識交換・世務諮詢に不景気なし/道徳は説くのではなく示せ など
    第三章 立憲国家の国民へ向けて
     経済学芸への注意を怠るな/学問に凝る勿れ など
    第四章 個人の独立、国家の独立
     銭は「人生独立の母」なり/政論の下戸となるな/学者は飼い殺せ など
    第五章 次世代へのメッセージ
     老却せる老生からの勧告/排外主義と自尊自大の戒め など
    編者解説
  • 18世紀フランスの政治家・法律家にして稀代の美食家であったサヴァランが著した『Physiologie du Gout(味覚の生理学)』は、「ガストロノミー」、食というものについての総合学の聖典として、世界中で現在まで読み継がれている。
    とりわけ日本においては、『美味礼賛』という邦題と、「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人であるかを言いあててみせよう」という警句とともによく知られるが、では実際にどのような事が書かれているのか、なぜこの本が、サヴァランという人物が、かくも偉大なものとされているのかについては、詳しく知る者は多くはないだろう。

    日本の料理文化を大きく展開させた辻静雄が、食はもとより歴史・地理・美術・文学についての広汎な知見を総動員し、サヴァランの思考を辿り、料理の精髄を縦横無尽に語り尽くす!


    【本書より】
    「私は豚肉を食べています。それで……」と言ったら、ブリヤ=サヴァランは人となりなど言ってくれるどころか、絶句して卒倒してしまうんじゃないでしょうか。


    【本書の内容】
    第一講 ブリヤ= サヴァランと『味覚の生理学』
    I ブリヤ= サヴァランはどういう人だったか
    II 『味覚の生理学』初版その他
    III 『味覚の生理学』の構成、その他
    第二講 食べ物と新しい歴史学
    I 『味覚の生理学』の背景も知っておきたい
    II ブリヤ= サヴァランの対極にいた人たち
    III パリの食糧、その他
    第三講 「おいしさ」とその表現
    I 「教授のアフォリスム」を読む
    II ブリヤ= サヴァランが好んだ料理
    III 「おいしい」という言葉/味の表現
    第四講 ワイン事情
    I ブリヤ= サヴァランとワインのことなど
    II 一九世紀のワイン事情
    第五講 ガストロノミーとガストロノームの系譜
    I ガストロノミーとグルマンディーズ
    II ガストロノームの系譜
    あとがき
    参考文献

    ※本書の原本は、1989年に岩波書店より『ブリア-サヴァラン「美味礼讃」を読む』として刊行されました。
  • 太古の「大女神」、「大母神」から、処女であり母でもある「処女母神」へ――。普遍的な女神の変質は何を意味するのか。そして処女母神アマテラス、アテナ、マリアは、なぜ至高女神の地位を得たのか。時代も地域も異なる神話の共通点から、人類社会の原像を見出し、神話の新たな可能性を探る比較宗教学の試み!

    スサノオとの宇気比によって生じた男神の母となったアマテラス、脚にかけられた精液を羊毛で拭き取り、それを捨てた大地から生まれた子の母となったアテナ、そして「主の言葉によって」母となったマリア。処女懐胎神話はほかにもギリシア神話のダナエや釈迦の母マーヤー、『マハーバーラタ』のクンティなど枚挙にいとまがない。しかし、それらの母の多くが、子の誕生時に亡くなるか、あるいはその後の場面から姿を消してしまうのに対し、至高女神として君臨するアマテラスをはじめ、アテナもマリアも、それぞれの宗教のなかで主導的立場を占めつづける。
    時間的にも空間的にも異なる信仰にあって、なぜ、彼女たちは「処女にして母」という超越性とともに、それぞれの宗教のなかで燦然と輝く存在となったのか。
    また、「処女母神」は、農耕や牧畜が始まった社会で生まれた新たな女神であり、それ以前には旧石器時代の石像に象徴される、自然の富の授与者としての「大女神」や「大母神」が広く存在していた。そんな「大女神」の系譜をひく処女女神アルテミスは、いかにして現代の優美な「ダイアナ」に変容していったのだろうか。
     比較神話学の手法によって、男性が生み出した神話の向こうに遠く浮かび上がる女性の姿を繊細にとらえ、単純な二項対立を超えた社会における男女の在り方を多彩な視点から描き出す、唯一無二の試み。
    (原本:『女神の神話学――処女母神の誕生』平凡社(平凡社選書)、1999年)

    序章 女神とは何か

    第1部 「大母神」と「処女母神」
    第一章 大母神から職能女神へ――旧石器時代の洞窟女神から考える
    第二章 女性の神話学
    第三章 処女母神の神(話)学

    第2部 日本の女神と女性
    第四章 女性のなかでただ一人――アマテラス神学生成の比較神話学的考察
    第五章 なぜ「妹の力」だったのか

    第3部 ギリシアの女神と女性
    第六章 女神とポリス――アテナとアテナイ
    第七章 アルテミスからダイアナへ――西洋における山野の女神像の変遷
    第八章 女による暴力と女への暴力――ギリシア悲劇の暴力性と女性像
    第九章 女たちを笑う男たち――ギリシア喜劇の女性像


    文献一覧
    初出一覧
    あとがき
    学術文庫版あとがき
  • 「打楽器を持たない民族はいない」。古来、人は自身の体やモノを叩いて感情を伝え、動物の鳴き声や雨風などの自然音を真似、再現してきました。楽器発祥から2万年。信仰の祭礼、政治儀式、軍事の士気高揚・・・・・・あらゆる場面に浸透していった「音」と「音楽」。気候風土や時代背景に合わせ、世界各地の「音」は、どのように姿を変えてきたのか。西洋音楽と民族音楽、その対比が示す真意は? 「音」で考える、ユニークかつ雄大な文化人類学!(解説・森重行敏)

    本書の原本は『世界楽器入門 好きな音 嫌いな音』(1989年1月 朝日選書)を改題したものです。


    はじめに
    第一章 ミンゾク楽器・
    第二章 楽器の起源
    1 生活周辺から生まれた楽器 
    2 食器から楽器へ 
    3 道具から楽器へ 
    4 自然界の音の再現から楽器へ 
    5 生存に必要な音を出す道具から楽器へ 
    6 呪術・信仰の道具から楽器へ 
    7 学問・研究の道具から楽器へ 
    8 音像から楽器へ 
    第三章 楽器分類を通して見た諸民族の楽器観
    1 中国 
    2 インド 
    3 ギリシャ 
    4 ローマ 
    5 ヨーロッパ 
    第四章 楽器の音
    1 打つ、擦る、吹く、弾く 
    2 楽器の成り立ち 
    3 音の出し方 
    第五章 楽器の分布と歴史
    第六章 風土と音
    1 風土と楽器 
    2 音の響き 
    第七章 音・数・楽器
    第八章 メディアとしての楽器
    1 経営メディアとしての楽器 
    2 視覚メディアとしての楽器 
    3 思想メディアとしての楽器 
    第九章 手作りについて
    第十章 好きな音嫌いな音
    第十一章 東方の楽器・西方の楽器
    石笛/横笛/笙/篳篥/尺八/和琴/箏/琵琶/三味線/胡弓/鼓
    /先史時代の楽器/オーボエとバスーン/クラリネット/トラムペ
    ットとトロムボーン/ホルン/テューバ/リコーダーとフリュート
    /バグパイプ/オルガン/キタラとライア/ハープ/ヴァイオリン
    /リュートとギター/ツィターとハープシコード/クラヴィコード
    とラングライク/ダルシマーとピアノ/カリヨン/ティンパニとシ
    ムバル/アフリカの楽器/インドの楽器/インドシナ半島の楽器/
    インドネシア・オセアニアの楽器/雑音の効果/種々の撥/弦
    楽器に関する参考文献
    あとがきにかえてーー楽器研究の方法論――
    解説「人類共通の財産ーー音楽とは何か?ーー」森重行敏(洗足学園音楽大学現代邦楽研究所所長)

    楽器索引
    人名索引
  • 1882年に来日し、17年間の滞在生活をおくったフランス人画家ビゴーは、その卓越した描写力で、写真や活字では記録し得なかった日本人の本質を鋭く描きとった。
    学術文庫ロングセラー「ビゴーが見た」シリーズ三作の合本版。

    『ビゴーが見た日本人』
    文明開化とともに訪れた日本の近代化。そこには、劇的な社会変化に戸惑いつつも、たくましく生きる人々がいた。そんな彼らの姿と変貌する日本を描きつづけた在留フランス人画家ジョルジュ・ビゴー。日本で過ごした17年間に彼が残した多くの作品から漫画・挿画・銅版画など、百点を厳選。愛着とアイロニーに満ちた諷刺画を通して見る日本人論。

    『ビゴーが見た明治ニッポン』
    文明開化に揺れる人々、フランス人画家が赤裸々に描く当時の生活……明治政府を皮肉る痛烈な諷刺画のほか、西洋文化にとびついた人々の滑稽な姿、日本的風習にあふれた庶民の生活、日本軍に従軍して描いた戦争報道画など、100点の作品を通して、近代化する日本の活況を明らかにする。

    『ビゴーが見た明治職業事情』
    激動の明治期、人々はどのような仕事をしていたのか。仏人画家ビゴーは、洋服屋、牛肉屋、鹿鳴館職員といった西洋化により登場した職業など、働く人々の姿を諷刺も交え克明に記録した。国会議員らエリート層の豪奢で珍奇な暮らしぶりとは対照的に、人口の9割を占める下流階級の人々が懸命に働く姿は、明治の格差社会を痛切に感じさせる。100点超の作品を紹介し、背景を解説する。
  • 6,765(税込)
    訳・その他:
    菅野覚明
    訳・その他:
    栗原剛
    訳・その他:
    木澤景
    訳・その他:
    菅原令子
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    佐賀藩士・山本常朝が語り、田代陣基が筆録した武士道書『葉隠』は、「死ぬ事と見付たり」に代表される過激な文言と、切れのいい文体で、多くの人をひそかに魅了し続けてきました。本書は、天保本を、はじめて底本として採用し、新たに綿密な校訂を施して、原文の息づかいをそのまま伝える本文の再現に努めました。独特の文体の魅力を堪能してください。


    佐賀藩士・山本常朝が語り、田代陣基が筆録した武士道書『葉隠』は、「死ぬ事と見付たり」に代表される過激な文言と、切れのいい文体で、多くの人をひそかに魅了し続けてきました。
    本書は、天保本を、はじめて底本として採用し、新たに綿密な校訂を施して、原文の息づかいをそのまま伝える本文の再現に努めました。
    独特の文体の魅力を堪能してください。

    また、読みやすい現代語訳をつけ、詳細な注を付した。
    「武士道書中の武士道書」と言われ、「死ぬ事と見付たり」に始まり、「恋の至極は忍恋」「奉公と諌言」など、次々に繰り出される条文は、武士の死生観から、職務、日常生活、教養に至るまで、幅広く、かつ深い人間洞察にあふれた内容になっています。それを、身近に味わえる訳と注です。

    ※本書は文庫版上中下巻を合本したものです。
  • 「ハードボイルド」で「アナーキー」な、現代人には到底受け入れがたい中世社会を活写しながら、そこに存在する中世人独自の秩序を魅力的に描いてきた著者の原点! 「荘園制と室町社会」および原本に未収録だった幻の博士論文「序章」の一部と「終章」を収録。「喧嘩両成敗」も「大飢饉」も「耳鼻削ぎ」も、すべてはここから始まった――。

     流罪に処されると、そのほとんどが道中で殺害されてしまい流刑地にたどり着くことさえできない一方で復讐を目的に自害し、また諸大名の軍勢が御所を取り巻いて将軍に異議申し立てを行うかと思えば、没落が確定した大名屋形には都市民衆が火事場泥棒に押し寄せる――。室町時代は現代人の目にはなんとも騒がしく物騒な社会に映る。しかし、それはよく言われる「自力救済」の暴力のみが支配する無秩序なものでは決してなかった。多様でいささか奇異な法慣習や民間習俗を分析対象としながら、その背景にある複雑で微妙なバランス織りなされる中世人の論理を、著者ならではの筆致で活き活きと豊かに描き出す。
     さらに、そのようないわば中世的文化の「野蛮さ」が、江戸時代最初の100年を通していかに変容しひっそりと払拭されていくのか、それでもなお残りつづけているものとは何なのか、各主題を通じてその変容が浮かび上がる。
     禁酒令、耳鼻削ぎ刑、梟首(晒し首)、都市民衆に開かれた禁裏など、魅力あふれる意外な視点から、中世社会を動的かつ大きな展望のもとに描いたデビュー作の決定版!
    (原本:吉川弘文館、2004年)


    【本書の内容】
    序章 ふたつの室町文化

       第1部 室町社会の法慣習
    第一章 「御所巻」考――異議申し立ての法慣習
    第二章 中世社会の復讐手段としての自害――復警の法慣習
    第三章 政権抗争劇のなかの都市民衆――掠奪の法慣習
    第四章 室町幕府「流罪」考――失脚者の末路をめぐる法慣習
    第五章 室町殿の紛争解決法――紛争解決の法慣習

       第2部 室町時代の都市生活
    第一章 足利義持の禁酒令について
    第二章 正長の徳政一揆と山門・北野社相論
    第三章 ある室町幕府直臣の都市生活――『碧山日録』と「春公」についてのノート
    第四章 荘園制と室町社会

       第3部 戦国時代の文化変容
    第一章 室町後期における都市領主の住宅検断
    第二章 織豊政権の成立と処刑・梟首観の変容
    第三章 「耳鼻削ぎ」の中世と近世
    第四章 戦国期における禁裏空間と都市民衆

    終 章
    あとがき
    学術文庫版あとがき
  • 1,210(税込)
    著:
    奥山儀八郎
    解説:
    旦部幸博
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    珈琲は、いつ、どのようにして日本に伝わり、広まったのか。世界の珈琲発見伝説・珈琲の異名熟字一覧・日本初の珈琲店の話から、江戸時代の長崎での交流、海外渡航者、はたまた海外漂流者の体験まで――膨大な史料を渉猟し、驚きに満ちた珈琲の歴史を明らかにする。生活文化史の古典である幻の名著、待望の復刊!(序・古波蔵保好/解説・旦部幸博)

    [本書の内容]
    序によせて 古波蔵保好
    一、珈琲の始まり
    二、世界の珈琲
    三、日本の珈琲の始まり
    四、珈琲研究に手掛かりを与えた人々
    五、日本の珈琲文献
    六、珈琲異名熟字ほか
    七、日本への渡航者と珈琲
    八、海外漂流者の珈琲記事
    九、海外渡航者の珈琲記事
    十、新日本と珈琲
    十一、その後の日本の珈琲
    十二、珈琲の栽培
    あとがき
    解説 旦部幸博
  • 1,265(税込)
    著:
    桜井満
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    万葉の花、正月の花、花と祭り……
    日本人の生活と文化に花はどのように生きてきたか

    日本人にとって花とはいったい何であろうか――。豊かな実りへの願望をこめて開花を待ち、四季折々に花を愛で、その移ろいに「あはれ」を感じ、いけ花という芸術を生んだ日本人。その心の原点を、万葉集、古今和歌集など古典の世界に渉猟し、各地の祭りや正月、雛祭り、端午の節供、重陽の節供など年中行事の民俗に探訪する、花をめぐる生活文化史。

    本来、ハナは、実りの先触れ・前兆といった意味をもつのであり、サクラという語は、サは田の神・穀霊のことで、クラは神座の意であったから、田の神の依代と考えられての呼称とみられる。その花は、田の神の意志の発現であると信じられたに違いない。それは、田仕事にとりかかろうとする時期に、パッと咲くみごとな花に名づけられたのであろう。――<本書「花見の伝統」より>

    ※本書は、1985年4月、雄山閣出版より刊行された『花の民俗学〈新装版〉』を原本としました。
  • 990(税込)
    著:
    田中塊堂
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

    「真心をこめて綴れば、その一字ずつが仏になっていく」。
    七世紀末、仏教流通のための経典書写から始まった写経は、
    信仰の拠り所となり、室町時代には文字を護摩符として服用するのが流行るほど
    霊験あらたらかものでした。
    何故これほどまでに、写経は日本人の心を虜にできたのか。
    そのはじまりや写経所作の歴史的意味、一七字詰めの理由や
    美しい書体バランス考察や毛筆の選び方・使い方まで、ていねいに説明。
    仏教や日本文化を深く知るための「写経」という知見を、
    現代仮名書壇の基礎を築いた名書家が、豊富な手本図版とともに細やかに披露する。

    この底本は1971年、創元社より刊行されました。
    文庫化にあたり、巻頭カラー頁を図版解説項へ移し、
    付録頁を「講談社BOOK倶楽部」内『写経入門』サイトへ移行しています。

    目次

    1 写経とは
    2 感謝の生活
    3 神と仏
    4 神仏混淆ということ
    5 信仰と信念
    6 清浄心
    7 写経のはじまり
    8 写経の方式
    9 写経の作法
    10十七字詰の解
    11写経の用度
    12写経の順序
    13願文の書き方
    14皇室と写経
    15観音さま
    16心経の略説
    17心経の書写文字
    18学習にはーー手本のこと
    19筆写体と辞典体
    20細楷の練習法
    21装幀について
    22所用料紙数の概算
    23文人墨客の写経
    24写経と私

    図版一覧
    図版解説
  • 絶景、奇怪、絢爛。"物神【フェティッシュ】の聖堂"のスペクタクル!

    現在も世界各国が競って開催する万国博覧会。
    それは、サン=シモンという男が思い描いた「産業という宗教」を奉ずる者たちが、物神たる機械と商品の数々によって荘厳した神殿として創められた。
    万博というものを、単なる近代産業技術のひとこまとしてではなく、来たるべきユートピアとして構築され、資本主義文明の展開そのものを懐胎した運動であったことを活写する、この著者だからこそ書けた万博論の決定版!

    【本書「まえがき」より】
    もしこの万博理念の形成過程史が解明され得るなら、それは、むしろ実際の万博の歴史よりも、絶対に面白いはずだ。なぜなら、それは単なるモノの歴史ではなく、モノに関するイデアの歴史、さらに言うなら近代文明についての観念の歴史となるはずだからである。

    【本書の内容】
    まえがき 万博の神学、あるいは万博史の逆説
    第1章 サン= シモンの鉄の夢
    第2章 転向サン= シモン主義者ミシェル・シュヴァリエ
    第3章 パリ万国博覧会にむけて
    第4章 万博理念の確立
    第5章 サン= シモン主義のユートピア、一八六七年パリ万
    国博覧会
    第6章 アミューズメントとしての万博会場
    第7章 博覧会場の外で
    第8章 新たなユートピア〈恒久的万国博覧会〉にむけて
    文献目録

    ※本書の原本は、『絶景、パリ万国博覧会』として1992年に河出書房新社より、その後2000年に小学館文庫より副題「サン・シモンの鉄の夢」として刊行されたものです。
  • ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-92年)の名は『エセー』とともに知られています。全訳だけでも5種類を数えるほど日本ではなじみのある著作ですが、岩波文庫で全6冊という分量、そして著者身が全2巻の初版(1580年)公刊後も改訂を続け、1588年には第3巻を増補するとともに最初の2巻に加筆を行った版を出し、さらに没年まで改訂を進めたため、さまざまな時期に書かれた文章が混在した書物になっていることから、決して分かりやすいとは言えないこともまた事実です。
    そうした事情ゆえ、これまで『エセー』の入門書や概説書が陸続と出版されてきました。しかし、本書はそのどれとも異なる、決定版と断言できる1冊になっています。
    断言できる理由は明確です。『エセー』第3巻第2章で、モンテーニュは「ここでは、私たち、つまり私の本と私自身が一致してひとつの道を進んでゆく。よそでは作者のことをわきに置いて作品をほめたりけなしたりできるが、ここではだめである」と記しています。つまり、「私の本」である『エセー』と「私」であるモンテーニュは不可分であるというわけですが、ここに示されているのは、作者の意図を知らなければその著作を理解できない、といった単純なことではありません。直後には「そのことをわきまえずに私の作品を判断する者は、私をというよりも、むしろ自分自身を傷つけることになるだろう」という言葉が続いているのですから。
    なぜ『エセー』をモンテーニュから切り離して読む者は「自分自身を傷つける」ことになるのか――本書は、この問いに答えるために、『エセー』をモンテーニュから切り離すことなく、ていねいに読んでいきます。『エセー』を一度も読んだことがなくても、モンテーニュについて何も知らなくても、名前を聞いたことがあるだけでも読めるように書かれています。むしろ、そのような人のためにこそ、本書は書かれました。
    本書によって大著の全容を知ることができるのはもちろん、本書を通して『エセー』を読むことは人間が紡いできた精神の歴史そのものを読むことにほかならないと気づくでしょう。そのような著作は他にありません。そして、そのことをありありと伝え、実践する『エセー』についての書物も、これまでありませんでした。渾身の書き下ろしによる1冊、ここに自信をもってお届けいたします。

    [本書の内容]
    第I部 若すぎた世紀
    第1章 宗教戦争
    第2章 十六世紀ルネサンス
    第3章 モンテーニュのほうへ

    第II部 「自分」・「私」・〈魂〉
    第4章 執筆開始
    第5章 マニフェスト
    第6章 だれが?――〈魂〉が

    第III部 〈魂〉の軌跡
    第7章 もうひとつの背景
    第8章 ソクラテスへの視線
    終 章 百姓のかたわらで
  • 1,265(税込)
    著:
    藤井貞和
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    人間はなぜ物語を必要とするのか? 
    精神分析、政治、戦争、神話、歴史、そして昔話、小説、うた――。
    物語は社会のいたるところにある。
    平家物語などの「語り物」やアイヌのユカラとの対比、源氏物語の婚姻制度と母殺しの阿闍世コンプレックス……日本列島の物語を起源から、そして世界文学との比較から考える。
    「もの」とはなにか。
    「語り手」は誰なのか。
    物語理論の金字塔となる、伝説の東大講義18講、待望の文庫化!

    【目次】
    I 物語理論の進入点
     1講 ものがたり と ふること
     2講 うたとは何か
     3講 うたの詩学
     4講 語り手を導きいれる

    II 物語理論の基底と拡大
     5講 神話から歴史へ
     6講 神話的思考
     7講 語り物を聴く
     8講 口承文学とは何か
     9講 昔話の性格
     10講 アイヌ語という言語の物語

    III 物語理論の水面と移動
     11講 物語人称
     12講 作者の隠れ方
     13講 談話からの物語の発生
     14講 物語時称
     15講 テクスト作りと現代語訳

    IV 物語理論の思想像
     16講 『源氏物語』と婚姻規制
     17講 物語と精神分析 
     18講 構造主義のかなたへ
  • 鉄道とは、人類のドラマである!
    その胸躍る軌跡のすべて

    鉄道誕生から約二〇〇年――そこには、爛熟する豪華列車もあれば、等級制が生み出す人間模様もある。廃線問題が起こる一方で、座席や照明は進化し、激化するスピード競争はついにリニア開発までいたりついた。他に類を見ない独特な文化を生み運んできた鉄道の全軌跡を、第一人者が新聞や文学、写真や絵画を渉猟して描き切る、壮大にして無二の世界史!

    「二等車は一等車の上流と三等車の大衆を分かつ、ちょっと曖昧な漠とした中間ゾーンであるだけに乗客心理は微妙であった。誰でも二等車に乗ると、あるいは乗れる身分になると、ほっと安心する。それでいい気になって、不遜な態度で乗務員に接する、知らぬ男女の二等客が思わぬ不倫関係で突如途中下車してゆく……」(「第六章 等級制と社会」より)

    [本書の内容]
    第一章 のびゆく鉄道
    第二章 コンパートメントと大部屋式
    第三章 無謀なスピード競争は終わったが、スピードはわが命
    第四章 鉄道旅行の時代
    第五章 鉄道快適化物語
    第六章 等級制の人間模様
    第七章 日本にもあった「一帯一路」
    第八章 鉄道はデザインの宝庫
    第九章 超高速時代と反芻
    第一〇章 豪華列車からクルーズ列車へ
    第一一章 芸術が描いた鉄道
    第一二章 リニア新時代と鉄道の公益性
  • 990(税込)
    著:
    鈴木正崇
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    男女同権はすくなくとも社会通念上は、あたりまえの前提となって久しい。
    だが、日本の各地には、女性の立ち入りを禁止する聖域や、特定の神事には女性を参加させないという慣行が現在も存在している。
    そして、大相撲の土俵についての「禁制」は、たびたび物議をかもしてきた。

    「女人禁制」とはいかなる背景から生まれ、変化する政治や社会の中で受け継がれてきたか。
    なぜ、時に激しい批判にさらされながらも、人々はそれを守ろうとするのか。
    女性たちは禁制をどのように受容し、あるいは抵抗し、つくり変えてきたのか。

    「差別」として批判をする人々と、「伝統」として守ろうとする人々。
    この対立構図は、当事者達にとって調停不可能であり、今後も継続することが予想される。
    本書では、文化人類学的分析を柱にしつつ、宗教学、民俗学、歴史学、国文学、社会学など様々の分野の成果を取り込んで、
    暗黙の前提を覆し、賛成か反対か、伝統か差別かという二分法を乗り越える視点を提示するものである。

    第一人者が、真の解決に不可欠な知見を、この一冊でわかりやすく示す!


    【本書の内容】
    学術文庫版の刊行に際して
    女人禁制の現在―プロローグ
    女人禁制への視角
    大峯山の現状
    山と女性
    女人結界
    仏教と女性
    穢れ再考
    あとがき
    二十年の後に―学術文庫版あとがき
  • 東京は京都より敬語が多い? 「ご遠慮ください」は失礼? 「お前」は敬語だった? 貴人は「する」より「なる」?

    「敬語は日本語の美しさである。しかし、度をすぎるとうんざりする。」敬語はなぜ生まれたのか。尊敬と相殺される親愛の感情は、どう表現したらいいのか。原日本語、上代から奈良、平安、そして現代へ。敬語の起原と変遷をたどり、情況にふさわしい使い方を考える。一級の言語学者がじっくり向き合う、敬語の歴史と実用。(解説・滝浦真人)
    底本:『日本の敬語』角川新書、1959年

    【本書の内容】

    第一章 序説
    一 英語と日本語 
    二 日本の敬語は文法的 
    三 日本の敬語は相対性敬語 
    四 敬語の起原と階級 
    五 敬語の起原とタブー 
    六 アイヌの妻女 
    七 アイヌの婦人語と敬語 
    八 アイヌ代名詞の構造 
    九 日本代名詞の構造 
    一〇 名詞の敬称 
    一一 結 論 

    第二章 起原:どうして日本の敬語が起ったか
    一 原日本語と敬語法 
    二 上代日本語の敬語法1 「ます」考 
    三 上代日本語の敬語法2 「せす・けす・めす・をす・なす・こやす」考 
    四 上代日本語の敬語法3 「たまふ」考 
    五 上代日本語の謙称動詞1 「たぶ・たばる・まつる」考 
    六 上代日本語の謙称動詞2 「まをす(申)」考 

    第三章 変遷:奈良から平安への敬語のずれ
    一 上代敬語と古代敬語の対比 
    二 平安時代の敬語助動詞の起原 
    三 奈良・平安の相違 
    四 万葉語における「頂戴す」について 
    五 「見めす」の忘却
    六 「せす」のまちがい 
    七 御立為之の誤訓 
    八 物語文学と敬語
    九 後代の敬語 

    第四章 現代の敬語:どうあり、どうなるべきものか
    一 序 論 
    二 名詞・代名詞 
    三 動詞 
    四 地方別 
    五 現代敬語の無軌道さについて 

    第五章 結論
    一 敬語のとどかない名歌 
    二 歌から見た敬語の本質 
    三 結びの言葉 

    付録 これからの敬語

    解説 滝浦真人
  • 永仁の徳政令――日本史上、飛びぬけて有名なこの法の本質を「「もとへもどる」という現象」と喝破し、躍動する13世紀の社会を深く鮮やかに描き出した不朽の名著、待望の文庫化!
     日本人は「所有すること」をどのように捉えていたのか。サブスクリプション制やフリマアプリの登場によって、所有の概念がかつてないほど揺らいでいる今こそ読みたい、中世人の法と慣習を解き明かす一冊。(原本:岩波新書、1983年)

     「今国家の債務を消すために、その他一切の債権債務を破棄する、つまり天下一同の徳政を実行すれば、日本経済は収拾のつかない混乱におちいるかもしれないし、意外にも大したことなくすぎてしまうかもしれない。いずれにせよ、少なくとも現時点ではそれが「夢のような話」にすぎないことはいうまでもない。
     だが、中世社会ではそれは夢ではなかった。永仁徳政令B‐3条のように、あるいは室町幕府の徳政令がもっぱらそれを主張していたように、債権債務破棄の徳政令を発布するという現実的な道があったからである」(第一〇章「新しい中世法の誕生」より)。
     日本の歴史のなかでも、単行法としてずば抜けて有名な法「永仁の徳政令」。永仁五(1297)年に出されたこの法は、21世紀の日本のみならず、制定された13世紀当時から有名な法であった。現在からは想像もつかないが、法の実在さえ法廷でまじめに争われた時代にあって、ある法の存在を同時代の人々が短時日のうちに共有したということ自体が、極めて異例のことであった。実際に、永仁の徳政令の立法からわずか二週間後には、この法に基づいた訴訟が起こされて、土地が返却されている。その後も、この法に基づいて多くの土地が売り主のもとに戻ることになった。
     新幹線もSNSもない時代に、なぜこのようなことが可能だったのか。そしてなぜ徳政令は、現在もなお異色の有名法であり続けているのか。そもそも幕府自身は当初そう言っていなかったにもかかわらず、この法はなぜ「徳政」と呼ばれたのか。
     永仁の徳政令にまつわる数々の謎を解き明かし、売買や贈与から浮かび上がる所有に対する意識や、「天下の大法」と呼ばれる社会規範の存在、幻の政治改革「弘安徳政」、さらにその背後にある合理主義的な政治的思潮の登場に至るまで、この不思議な法を軸に中世社会の本質に迫る。著者のエッセンスがふんだんに盛り込まれた日本中世社会史の金字塔!

    【主な内容】
    一 無名の法、有名の法
    二 徳政令の出現 
    三 なぜ徳政なのか 
    四 天下の大法
    五 贈与と譲与
    六 消された法令
    七 前代未聞の御徳政
    八 人の煩い、国の利
    九 徳政の思想
    一〇 新しい中世法の誕生
    あとがき
    解 説(小瀬玄士)
  • 妖怪に秘められた敗者たちの怨み声を聞く。
    大江山の酒呑童子、那須野の妖狐・玉藻前、是害坊天狗、大魔王・崇徳上皇……

    妖怪は山ではなく、人の心に棲息している。妖怪とは幻想である。そして、自分たちの否定的分身である。国家権力に滅ぼされた土着の神や人々の哀しみ、怨み、影、敵が形象化されたものである。
    酒呑童子、玉藻前、是害坊天狗、崇徳上皇、紅葉、つくも神、大嶽丸、橋姫。日本妖怪変化史に燦然と輝く鬼神・妖怪たちに託されたこの国の文化史の闇を読み解く。

    酒呑童子は山の神や水の神と深いつながりを持っている。彼ら鬼たちは龍神=大蛇=雷神のイメージと重ね合わされており、酒呑童子が大酒飲みと描かれているのは、近江誕生説にしたがえば、彼がヤマタノオロチ=伊吹大明神の血を引く異常な「人間」であったからである。酒呑童子は仏教によって、もともと棲んでいた山を追われてしまう。それは山の神が仏教に制圧されたプロセスと同じであろう。(中略)酒呑童子の物語から、土着の神や人びとの哀しい叫び声が聞こえてくる。征服者への怨み声が……そしてその声は、自然それ自体が征服されていく悲鳴であるのかもしれない。――<「第一章 大江山の酒呑童子」より>
  • 1,210(税込)
    著:
    有岡利幸
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    松はいつの時代にも、日本人には特別な存在でした。奈良時代より松明(たいまつ)として照明に使われ、平安貴族は、贈り物や文を、〈雅(みやび)〉なしきたりとして、松の折り枝を結んでいました。神が宿るといわれた聖なる木は、いかに私たちの美意識や文化に影響を与えてきたのでしょうか。『古事記』『万葉集』『日本書紀』などの文学、『源氏物語絵巻』や仏画、和歌での描写を渉猟し、そこに隠された、日本人の死生観や宗教観を探ります。

    本書の底本は、人文書院より一九九三年に刊行されました。


    目次)
    第一章『魏志倭人伝』の植生と松

    第二章 やまとたけると松
    尾津崎の一つ松
    磐代の浜松
    童子女(うない)の松原
    聖徳太子と飛仙

    第三章 正倉院絵画の松
    東大寺領の山境絵図
    藤をまといつかせた松樹「樹下囲碁図」

    第四章 のびやかな松と平安時代
    宇治平等院鳳凰堂扉絵の松
    雅のしきたり・松の折り枝
    「源氏物語絵巻屏風屏風の松

    第五章 松明と明かり

    第六章 人の死と松

    第七章 日本人と松

    あとがき
    主な参考文献
    学術文庫版あとがき
  • 1,320(税込)
    著:
    目崎徳衛
    解説:
    佐藤全敏
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    ■桓武天皇による平安遷都から摂関政治前夜まで、■
    ■明と暗が交錯する歴史を名手が生き生きと描く!■

    貴族たちの豊かな古典文化に彩られた九~十世紀、しかしその繁栄の底流では律令体制の解体が静かに進行し、中央は全国統治の力を失いつつあった。
    平安遷都から摂関政治前夜まで、古代国家の崩壊と封建社会の誕生のあいだの長い転換期を政治・社会・文化から多面的に捉え、
    表舞台で脚光を浴びる者のみならず、闘争に敗れ表舞台から去っていった人々の姿にも目を配りながら、光と影が交錯する歴史像を描く、無二の論考。

    ■ゆるやかに時は移り、世は変わる。―本書より■
    「社会の根本的な変化は、奥底の流れとしてきわめてひそかに、しかもおだやかに進んでいた。したがって、地方や被支配層の発展あるいは国家体制の転換をはっきりと具体的に示す史料は極端に少ない。このもどかしいまでに悠長で不透明な移り変わりこそ、この時代の特徴である」【「まえがき」より】

    解説=佐藤全敏(東京女子大学教授)

    *本書の原本は、一九六九年刊「日本歴史全集」第四巻を元に改訂された「日本の歴史文庫」第四巻として、1975年に刊行されました。

    ■本書の内容■
    第一章 律令体制崩壊の端緒
    1 平安時代の前奏曲
    2 桓武朝の権力と政治姿勢
    3 律令体制の矛盾
    4 長岡京の暗い影
    6 桓武朝の蝦夷征討
    第二章 宮廷と詩文と密教と
    1 平城朝の悪戦苦闘
    2 「平安的なもの」の発展
    3 花開く唐風の詩文
    4 巨人、最澄と空海
    5 渡海僧と仏教の貴族化
    第三章 良房・基経の時代
    1 承知の変と良房の権力把握
    2 反抗者と疎外者
    3 基経の天皇廃立
    4 律令政治の衰退
    5 地方勢力の胎動
    第四章 寛平・延喜の治
    1 「寛平の治」とその挫折
    2 菅原道真の運命
    3 延喜の荘園整理令
    4 「古今和歌集」なる
    5 延喜の太平とその暗転
    第五章 承平・天慶の乱と「天暦の治」
    1 武者の起こり
    2 平氏一族のあらそい
    3 東西二つの謀反
    4 将門・純友の末路
    5 藤原氏と後宮
    6 「天暦の治」の内幕
    7 退廃の栄え
    8 藤原氏の時代へ
  • 日本の東洋史学が生んだ20世紀の巨人、宮崎市定(1901-95年)。広範な領域にわたる魅力的な著作の数々から、全集未収録作品を含め、これまで文庫に収録されてこなかったものを中心に精選したアンソロジー。長年の愛読者はもちろん、宮崎史学初めの一歩にも。
    「歴史は須(すべか)らく世界史でなければならぬ。事実、私の研究は常に世界史を予想して考察して居り、世界史の体系を離れて孤立して個々の事実を考えたことは一度もない」(『アジア史研究』第一、「はしがき」より)。出発点となった宋代史研究をはるかに超えて、中国史のあらゆる時代、さらに西アジア史や古代日本史にまで及ぶ優れた業績は、いずれも偉大な歴史家の理念に力強く裏打ちされている。
    鋭く細やかな洞察、時間・空間ともに壮大な展望を予感させるスケールの大きさと独創性、生き生きとした人物描写、これらを可能にする文章力……。枚挙に暇がない魅力ゆえに、宮崎の作品は、専門家にとどまらず長きにわたって多くの読者を得てきた。専門とする時代・領域ともに異なりながらも、宮崎への思い入れが嵩じて評伝を著し話題になった西洋古代史研究者の井上文則氏もその一人である。その井上氏が、歴史家としての宮崎市定、とりわけその人となりがわかるような作品を厳選、解説では宮崎の人生のなかにそれらの作品を位置づける。
    中国の歴史は中国周辺の民族に代表される素朴主義と、中国社会そのものである文明主義の入れ替わりの歴史であったと喝破し、素朴主義に共感を寄せる「素朴主義と文明主義再論」。本作品をはじめとする宮崎独自の雄大な歴史観、そして古代・中世・近世史、さらに文化史についての各論を通して、巨峰宮崎市定の威容に迫る決定版セレクション!

    【本書の内容】
     1 歴史の見方
    世界史序説
    素朴主義と文明主義再論
    歴史と塩
    『宋詩概説』吉川幸次郎著〔書評〕

     2 歴史学各論
      ・古 代
    中国上代の都市国家とその墓地――商邑は何処にあったか
    条支と大秦と西海
      ・中 世
    晋武帝の戸調式に就て
    六朝時代江南の貴族
    清 談
      ・近 世
    五代宋初の通貨問題梗概
    王安石の黄河治水策
    雍正時代地方政治の実情――シュ批諭旨と鹿洲公案
      ・文化史 
    シナの鉄について
    江戸時代におけるシナ趣味

     3 全集未収録作品
    大きな静けさ
    はしがき〔『地獄の決闘』〕
    中国漢代の都市
    中国における易占の発達

    付録 宮崎市定と青木木米(リチャード・ピアソン&一枝?・ピアソン)
    解 説(井上文則)
  • 本書の中心は太地五郎作氏の著作『熊野太地浦捕鯨乃話』です。古式捕鯨とそれを行った人々の思考と感情を、内部から正確に観察し繊細に表現した驚異的な著作です。国際社会からの深刻な問い「日本人はなぜ捕鯨をあきらめないのか」という問いに対して、答えるための必読書です。
    捕鯨には二つの側面があります。
    一つは海中を泳ぐ「富」=鯨を捕らえた後、その富を貨幣へと変えるマニファクチュアの原初形態があったことです。鯨を、肉、油、髭、骨、皮などに分けて、利用しつくすための加工過程のすべてが集合し緊密に組み合わされています。
    そして、二つめが鯨を捕るという行為に、組み込まれた「戦争機械」において、人間は媒介を通さず、直接的に自然の力と戦うことです。物理的な力では鯨に劣る人間が、知力をもって集団で鯨に対峙し、執拗な攻撃を加え、鯨を弱らせ、最後に羽刺と呼ばれる若者が海中に飛び込み、一騎打ちをおこないます。その戦いで鯨を仕留めることが、この戦争機械の活動の終了地点となります。
    この古式捕鯨の二重構造は、とても日本的と言えるでしょう。非農業的マニファクチュアと農業型ものづくりマニファクチュアは、「半農半漁」を営んでいた海民の生活形態の二重構造と関係が深いと思われます。
    以前の輝きを失った日本のものづくりは、農業的マニファクチュアを基礎として発達をとげてきたが、その方法論は、非物質的情報産業が中心の現代では通用しなくなっているのかもしれない。
    日本はものづくり、産業の根本に立ち返った自己認識を必要としている。そのとき「異形のマニファクチュア」としてそのレガシーを今日に伝える、太地古式捕鯨の本質を再考することは、未来の文化再生に向けて重要な意義を持つ。本書は、過去を追慕するだけにとどまらない、未来的な意味を持っています。

    【目次より】
    学術文庫版序文(中沢新一)

    太地五郎作『熊野太地浦捕鯨乃話』について

    原本口絵より

    熊野太地浦捕鯨乃話(太地五郎作)
    ・太地捕鯨の起源 ・徐福来熊の批判 ・事務所の事 ・大納屋の事
    ・山見の事 ・沖合の事 ・勢子船の事 ・六鯨の事 ・鯨切り捌きの事
    ・明治十一年の大惨事
      和田金右衛門「明治十一年寅十二月二十四日 旧十二月朔日也 背美流れの扣へ」
     追 記 ・太地にて初めて洋式にて鯨を捕りたる ・きおいの式
     鯨潮を吹く吹かぬの説に就いて実例を説明して置く

    熊野太地浦捕鯨の談
     昔の鯨の捕り方 ・捕鯨の起源 ・熊野捕鯨の終末の原因 ・太地にて初めて洋式捕鯨の事

    鯨肉の料理に就いて

    原本あとがき

    鯨を捕るということ(サイモン・ワーン)

    解 説 中沢新一
  • 仏教学に民俗学の方法を接続し、日本人の宗教を深く掘り下げた五来重。本書は、厖大な著作を遺した宗教民俗学の巨人の「庶民宗教論」のエッセンスを知るのに最適な1冊である。
    日本人の死生観とは、すぐに連想される「ハラキリ」や殉死など、武士道的なものだけではない。貴族や武士の死生観、いわば「菊と刀」ばかりでなく、「鍬」を持つ庶民の死生観は、一体どんなものだったのか。本書では、教祖・教理・教団から成る西洋起源の宗教や、文献研究と哲学的思弁にこだわる仏教学ではなく、仏教伝来以前からの霊魂観や世界観が息づく根源的な「庶民の死生観」を明らかにしていく。
    著者によれば、庶民にとってあらゆる死者は一度は怨霊となる。それは鎮魂によって「恩寵をもたらす祖霊」に変えなくてはならない。そのための信仰習俗や儀礼の有様を探索し、日本列島を歩きに歩いた著者の視線は、各地に残る風葬や水葬の風習、恐山のイタコと円空仏、熊野の補陀落渡海、京都の御霊会、沖縄のイザイホウ、遠州大念仏、靖国神社などに注がれる。
    巻末解説を、『聖地巡礼』『宗教と日本人』の著者・岡本亮輔氏(北海道大学准教授)が執筆。〔原本:角川書店、1994年刊〕
  • 「現地はつねに文献以上の何物かをもっている。しかし問いがなければ、現地は何も答えてくれない」。沖縄・八重山諸島から九州、大和、紀伊、関東、東北…… 日本各地を旅し、森かげや海のほとりに息づく、いにしえから百年千年つづいてきたものを、ひとびとの生き方のうちに見る。個々の事象の羅列では見えない、習俗の背後の全体性を、他界観や宇宙観ごと考えながら、ていねいに掘り起こす。「中央の高級社会だけにあると信じられてきた優雅さや高貴さや幽玄は、すべて庶民の生き方の中にこそある」。「日本の歴史」には載らない、名もなき生者と死者たちの生きた場所から、現在にも連なる精神史をひもとく、谷川民俗学の真髄。

    本書の原本は『埋もれた日本地図』(筑摩書房、1972年)です。

    【目次】
    1 埋もれた日本地図
    大王崎紀行
    八重山民謡誌
    由布島由来記
    月夜の愛の歌
    関東地方に遺る古代朝鮮の文化
    追分宿の女たち
    庶民遺文抄
    下北半島紀行
    獅子島の若者たち
    白鳥伝説を訪ねて
    霧島山麓のカヤカベ信仰

    2 琉球の宇宙観と他界観
    太陽の洞窟――琉球の宇宙観
    あかるい冥府――琉球の他界観
    沖縄の日本兵
  • 関孝和、貝原益軒、渋川春海、杉田玄白、平賀源内……。伝記を通して、江戸に花開いた科学や技術の発展の軌跡を紹介する。科学者小伝付き!(解説:池内了氏)

    『解体新書』、『蘭学事始』で知られる杉田玄白が生まれたときは大変な難産でした。看護の人たちは母親に気をとられ、生まれたばかりの赤ん坊のことは忘れてしまいました。死産だろうと思われ、とり合わせの布に包んで横に置いたままにされたのです。しかし、ようやく落ち着き、赤ん坊を見ると元気で生きていました。その後の玄白は元気に育ちます。17,8歳のころ、医官である父に医業を学びたいと申し出ると、幕府の医師である西玄哲に入門することになりました。西玄哲は通訳の家の出身で、ポルトガルやオランダの医術を覚え医師となった人物でした。玄白はこの頃から西洋医術の優秀さに触れることとなったのです。――西洋医術の導入、日本人のための暦、エレキテル、鉄砲の大量生産……など。著名な杉田玄白や渋川春海から砲術家の坂本天山まで、江戸時代を代表する科学者たちの幼少時や師事した先生とのエピソード残した業績をコンパクトに紹介する伝記集です。科学者たちの生涯を通し、江戸時代の科学や技術の発展の過程を生き生きと描き出します。29人の科学者小伝付き。解説は池内了氏。
    (原本:吉田光邦『江戸の科学者たち』、社会思想社(現代教養文庫)、1969年)

    本書の内容

    関流をめぐる人びと
    ――関孝和たちと会田安明――

    本草から大和本草へ
    ――貝原益軒――

    本草から博物学へ
    ――稲生若水・小野蘭山――

    日本暦の誕生
    ――渋川春海――

    町人天文学者たち
    ――麻田剛立の一門――

    測地事業の推進者
    ――伊能忠敬――

    幸福な蘭学の始祖
    ――杉田玄白――

    異端の科学者
    ――平賀源内――

    電気学の正統
    ――橋本宗吉――

    最初の自然哲学者
    ――三浦梅園――

    自然哲学の展開者
    ――帆足万里――

    通訳から科学者へ
    ――本木良永・志筑忠雄・馬場貞由――

    桂川家の人びと
    ――名門の学者たち――

    宇田川家の人びと
    ――家学を守った人たち――

    悲劇の科学者たち
    ――シーボルトとその門下――

    職人と発明家
    ――国友藤兵衛――

    哲学的な砲術家
    ――坂本天山――

    農業技術の変革者
    ――宮崎安貞・大蔵永常――

    科学者小伝
    参考文献とあとがき
    解説(池内了氏)
    索引
  • 平安時代から多くの絵師が描き、歌人が詠んだ夕映えの空。江戸時代、人々が愛した浄瑠璃の義理人情劇、子守歌が奏でる、哀しい短調のメロディ・・・・・・。
    かつて日本人が持ちえた<共感の場>が消え、確たる死生観すら見えなくなった昨今、私たちは人生をどうまとめたたらいいのか。宗教学者が、来し方を振り返りつつ、次世代に伝える、いのちの作法集。

    *本書は、第一章から第七章までを、『こころの作法――生への構え、死への構え』(中公新書 2000年刊)を底本に、終章をこの文庫のために書き足したものである。


    目次)

    はしがき
    学術文庫版 はしがき
     
    第一章 こころの原風景
    消えゆく短調のメロディー/夕焼け信仰/山のお寺の鐘/二羽の「夕鶴」

    第二章「語り」の力
    歌のリズムと生命のリズム/語ること・聞くこと/フェアプレイか無私か/友情の語り方

    第三章 人間、この未知なるもの
    子どもの犯罪にどう立ち向かうか/放っておくと、子どもは野性化する!/犠牲と奉仕/全身運動と数学的1

    第四章 私の死の作法
    どのように死ぬべきか/現代の無常物語/臓器移植ははたして布施の精神の発露か/断食死こそ死の作法の出発点

    第五章 精神性について
    人間批評の尺度/任きょう道〈長谷川伸〉/浄瑠璃と町人道〈司馬遼太郎〉/武士道の「仁」〈新渡戸稲造〉

    第六章 伝統のこころ、近代のこころ
    チャンバラ映画/人間を信じる/遠景のなかの仏教/身もだえの話/人情の極致

    第七章 眼差しの記憶
    司馬さんの鋭い眼差し/丸山政治学と司馬文学/日本人の中の日本人/『燃えよ剣』の夕日

    終章 辞世の作法
    挽歌の作法/一期一会の歌/自然葬の行方
    「あとがき」に代えて 辞世の弁「若き魂たちよ」

    内容紹介)
    日本の子守唄が、遠くなってしまった。もうどこからもきこえてこない。(中略)
    悲哀の旋律を忘れた社会というのは、ひょっとすると他人のこころの痛みや悲しみに鈍感になっている社会なのではないか。われわれはいつのまにか短調排除の時代を生きて、感性の大切な部分を失いつつあるのかもしれないのである。(本書「第1章」より)
  • いつの時代も私たちを惹きつけてやまない神話。
    文学や絵画はもちろんのこと、現代でもアニメやゲームのキャラクターとして神話のモチーフは取り入れられています。神話の知識がなければ興味は半減してしまうでしょう。
    神話が人を楽しませ、ときには人を感動させるのは人間世界の真実の断面を私たちの目の前に投げ出して見せてくれるからです。神話は人間そのもののあり方、本質に迫ろうとします。そして倫理や法などの根本理念を考えさせます。
    西洋古典学の第一人者が世界の神話の成り立ちや共通点を、ギリシア神話を中心にやさしく紹介する、神話を味わうために最適の一冊。(原本:『入門・世界の神話』講談社、1965年)

    目 次
    はじめに
    第1章 神話のさまざま
    1 大蛇退治――アポロンと素戔嗚尊
    2 花物語――ヒヤシンスとすいせん
    3 星座――天に上ったくまの母子
    4 七夕祭り
    5 湖畔に立つポプラとかしの木

    第2章 神話の成り立ち
    1 裁く神から踊る神まで
    2 『死と少女』
    3 金色のひつじの皮衣
    4 オデュッセウスと百合若
    5 史謡の世界――トロイの木馬

    第3章 世界の神話
    1 永遠の生を求めて
    2 ノアの大洪水
    3 ピラミッドの秘密
    4 美しく奥深い北欧の神話
    5 さるのつくった岩橋

    第4章 世界のはじめ――ギリシア神話(1)
    1 世界のはじめ(天地開闢)
    2 神々の誕生
    3 人類のはじめ
    4 黄金時代

    第5章 オリュンポスの神々――ギリシア神話(2)
    1 オリンピックの由来
    2 銀の弓と竪琴との神――アポロン
    3 処女神宮のいわれ――アテーナとポセイドン
    4 海のあわから生まれた女神――アフロディテ(ヴィーナス)
    5 酒と芝居の神――ディオニュソス
    6 商人とどろぼうの親方――ヘルメス神
    7 月の女神アルテミス

    第6章 海と地下の神々
    1 ほら貝ふきのトリトオン
    2 六粒のざくろの実

    第7章 英雄時代
    1 ヘラクレスの一生
    2 迷宮と牛人退治
    3 スフィンクスのなぞ
    4 白鳥の皇子
    5 さかはぎの駒

    第8章 日本の神話
    1 よみがえり
    2 日の御子
    3 海幸彦と山幸彦
    4 因幡の白うさぎ
    5 金色の鵄

    第9章 伝説と史実
    1 トロイア遠征の伝説
    2 帰還の物語
    3 説話の世界
    4 神話の永遠性
    5 神話と現代

    索引
  • 火除け、虫除け、雨乞い、失せ物探し、道中安全、子守歌、祝いと祭り……
    日本各地の古老たちが伝え続けてきた〈ことばの力〉の探究!

    病や禍いを遠ざけ、暮らしのささやかな稔りを願うため、この国の先人たちは、土地魂を動かす呪言を生み、ことばに内在する霊力・呪力を発現させてきた。全国の山峡や海辺の村々を訪ね歩き、古老が唱える呪歌(まじないうた)に耳を傾け、失われゆく多彩で不思議な口踊・口承の文化に光をあてる。「言霊の幸わう国」日本を描く、貴重なフィールドワークの集大成。

    ※本書の原本は、『言霊の民族 口踊と歌唱のあいだ』として1993年に人文書院から刊行されました。


    ■本書の内容
    序章 誦唱民俗論に寄せて
    ! 口誦民俗
     一 呪歌の民俗 
     二 口誦と伝承 
     三 年中行事の口誦要素 
     四 暮らしの中の口誦 
     五 ことばと禁忌 
    !! 民謡再考
     一 子守唄と子守の民俗 
     二 民謡における復唱と継唱 
     三 民謡と囃し口 
     四 囃しの諸相 
     五 民謡をめぐる時と場の習俗 
     六 唄の中のアイドル 
     七 口説節の魅力―兄妹心中絵模様
  • 平安時代の人々は病気に罹ると怨霊・物の怪の所為とそれにおびえ、加持祈祷を大々的に行った。また仏教の伝来、遣唐使の派遣は海外の伝染病をもたらした。そして疾病の蔓延は人々を苦しめ、政治を動かし、大きく変えもした。
    寄生虫に冒され、結核やポリオも病んだ縄文・弥生の人々、贅沢病ともいえる糖尿病で苦しんだ藤原家一族、江戸時代猛威をふるったインフルエンザやコレラ。
    その他、天然痘、麻疹、梅毒、眼病、脚気など、各病気と当時の人びとがいかに闘ってきたかを、歴史上の事件、有名な人物の逸話を交え、〈病〉という視点を軸に展開していきます。
    日本武尊の死因・脚気の原因はいつ明らかにされたか?
    もし武田信玄がガンで急死しなかったら?
    具体的な謎解きをまじえ、読者の興味を引き付けながら、それらの病が日本の歴史に及ぼした影響をさぐってゆきます。

    医学史研究の第一人者が語る病気の文化史であり病気の社会史です。

    原本 『病が語る日本史』講談社、2002年刊


    ●主な内容
    第一部 病の記録
    骨や遺物が語る病/古代人の病/疫病と天皇/光明皇后と施療/糖尿病と藤原一族/怨霊と物の怪/マラリアの蔓延/寄生虫との長いつきあい

    第二部 時代を映す病
    ガンと天下統一/江戸時代に多い眼病/万病のもと風邪/不当に差別されたらい・ハンセン病/脚気論争/コレラの恐怖/天然痘と種痘/梅毒の経路は?/最初の職業病/長い歴史をもつ赤痢/かつては「命定め」の麻疹

    第三部 変わる病気像
    明治時代のガン患者/死病として恐れられた結核/ネズミ買い上げ--ペスト流行/事件簿エピソード/消えた病気/新しく現れた病気/平均寿命と死生観

    関連文献 
    あとがき
  • ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

    植物、動物、幾何学、自然風景、天体・・・・・・。
    古くは縄文時代にはじまり、高麗文明と隋文明の影響を受け、日本独自の美意識から研ぎ澄まされていった和の文様。衣装、装飾品、装身具、器、仏具、神具に見られる中から、
    江戸時代の小袖文化により、日常着として柄が圧倒的に増えた和装文様をとりあげ、786柄を収録。
    読み方、名の由来、特徴ときものとしての用途を紹介する。

    きもの研究家として活躍した、石崎忠司による『きものの文様―初心者から専門家までの解説書―』。1973年に刊行された名著を、きものプロデューサーである次男の石崎功による、丁寧な解説加筆、可能な限りの図版カラー化により、リニューアル復刊!
    見て、読んで、和の文化が学べる、和文様大全、ついに完成。

    *本書は、衣生活研究会より一九七三年に刊行された
    『きものの文様-初心者から専門家までの解説書-』を改題し、大幅加筆修正の上、
    写真や図版を撮り直し、文庫化したものです。
  • 本邦初訳!「サラエボの悲劇」の主人公が綴る日本紀行
    長崎―熊本―下関―宮島―京都―大阪―奈良―大津―岐阜―名古屋―宮ノ下―東京―日光―横浜

    1892年末、オーストリア帝国帝位継承者、皇太子フェルディナントは世界周遊の旅に出た。翌年長崎に到着した彼は東京を目ざすが、その途次、各地で日本文化との出会いを堪能しつつ、のちにウィーン民族学博物館日本部門の礎をなす18000点もの美術品等の蒐集も行う。21年後、サラエボで暗殺される悲運の皇太子若き日の日本紀行。

    園内は無数の提灯がまるで妖精のようにきらきらと輝き、真昼のような光に満ちあふれていた。日本人というのは、まことに照明の達人だ。簡素きわまりない装置を巧みに用い、すばらしい効果を生み出す術をじつによく心得ている。(熊本クラブの庭園にて)
  • 記紀と『風土記』の記述の相違
    神話に隠された秘密を明かす

    記紀神話の3分の1以上を占める出雲神話。しかしその出典たる『出雲国風土記』には、記紀とは異なる舞台、神々の美しく雄大な詩が綴られていた。それらを抹殺し、出雲国を強大な国であるかのように仕立てあげた大和朝廷の策略とは、どのようなものだったのか。国引き説話や大神の麗しい物語が、支配者によってねじまげられ、被支配者たちに受け入れられていく過程を解き明かす。

    出雲の弱小国がどういう理由で神代巻の3分の1も占めるとともに、それに基づいて起こった錯覚によって、1000年もの長い間、大和朝廷に対立する強大な出雲国を、われわれに想像させてきたのであろうか。まず読者のすべての方に申したいが、これまでの出雲観のすべてを完全に拭い去って、白紙の立場で新しく出雲を見直す心がまえを持っていただきたいと思う。――<本書より>
  • 時代劇でおなじみの名奉行や悪代官の意外な実像から、驚くほど便利な江戸の暮らしまで、研究者ならではの視点で江戸の風もあざやかに切り取った短編集。
    桜吹雪で知られる「遠山の金さん」の父は、とある試験を転機に異例の大出世を遂げた名官吏だった!? 
    「おれがわるかつた」、「ゆるせゆるせ」とざっくばらんに詫びる「暴れん坊将軍」吉宗の肉声に、文字通り女房を「借金のカタ」に差し出してしまった旗本、年利一二〇〇%の超高金利金融「烏金」利用者の実態に、宛名に記された「殿」と「様」の格付けをめぐるひと悶着……。
    読めばもっと江戸が好きになる。第一人者の篋底から取り出された珠玉の掌編の数々!
    (原本:『大江戸世相夜話』中公新書、2003年)

    【本書の内容】
    はしがき

      遠山金四郎の入墨
    遠山金四郎の入墨/遠山金四郎父子/江戸の受験参考書/名奉行の「条件」/官職名の由来/銭形平次と目明/親の歳を間違える金四郎

      お代官様――悪の代名詞
    将軍吉宗の肉声/遊芸を許す田沼意次/お代官様――悪の代名詞/秘薬「熊胆」の値段/「謙譲の美徳」の裏側
    二十二時間・二十三日間・三年間/白いカラスは吉兆か/殿と様はどちらが偉いか

      大御所の犯罪
    大御所の犯罪/無 尽/談合体質の根深さ/拾った金は誰のものか/象をめぐる暗闘/国民の生命の重み/女房を借金のカタに置いても

      女髪結い繁盛記
    便利すぎて困る/女髪結い繁盛記/江戸の贈答事情/江戸の高利貸し/証文の怖さ または、江戸の女性はしたたか/地獄の沙汰も金次第

      放蕩息子の矯正
    読み書き算盤/放蕩息子の矯正/「うろたえる」老人たち/天明七年のポスター/上流女性をどう呼ぶか

    初出一覧
    あとがき
    学術文庫版あとがき
  • 山に富み、森林に覆われ、海に囲まれた列島。そこに棲む日本人は自然の恵みを享受し、生計を立て、カミに礼を尽くしては人生の節目とした。また、参詣・巡礼に言寄せた遊山や漂白・旅の渡世は、楽も苦も味わう深さをもたらした。
    近世に固まったそうしたスタイルは、しかし高度経済成長期を境に変容を余儀なくされる。見失われた日本人の暮らしと人生の豊穣はどんな形だったのか。民俗学者がフィールド観察と研究の蓄積をもとに語る。
  • 880(税込)
    著:
    池内紀
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    「むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある」。ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986年)は、『幻獣辞典』の序でそう語る。
    マルコ・ポーロがスマトラで目にした一角獣、フランスの教会の壁面に刻まれた大耳人間、日光東照宮を彩る幾多の霊獣に、目まぐるしく姿を変える千変万化のバルトアンデルス.......。古今東西の書物に記された、不思議で興味深い生きものたちをめぐるエッセイは、まさにボルヘスが語る「喜び」に満ちている。
    龍のように、洋の東西を超えて同じような想像上の生きものが生み出されるのはなぜか。人間はなぜ、くり返し、異様なもの、奇妙なもの、ときにはグロテスクなものを生み出したがるのか――。軽妙洒脱な語り口で繰り広げられる世界に引き込まれていくにつれて、私たちの意識に、あるいは無意識のうちにこそひそむ「幻の獣」の姿が浮かび上がる。
    古代中国の『山海経』から、二十世紀にカレル・チャペックが生み出したロボットに至るまで、書物を広く深く愛した著者ならではの幻獣奇譚集。

    1 一角獣――マルコ・ポーロが見たもの
    2 アジアとヨーロッパ――幻獣という知の遺産
    3 不思議な生きもの、不思議な人――狂気と文学のあいだ
    4 幻獣紳士録1
    5 幻獣紳士録2
    6 百鬼の奇――日本の幻獣
    7 霊獣たちの饗宴――日光東照宮の場合
    8 中国の宝の書――『山海経』入門
    9 私という幻の獣――寺山修司の夢
    10 ゴーレムからロボットへ――二十世紀の幻獣
  • 阪急創業者・小林一三は、「政治中心」の東京に対して、大阪を「民衆の大都会」と呼んだ。

    ターミナル・デパート、高級住宅地……国鉄に対抗し「官」からの独立を志向する関西私鉄は、沿線に市民文化を花開かせ、「民衆の都」大阪は東京を凌駕する発展を見せた。
    だが、大正から昭和への転換、昭和天皇行幸を機に、街は次第に「帝都」へと変質してゆく―。

    権力の装置=「国鉄」と関西私鉄との葛藤を通し、「都市の自由」の可能性とその挫折を描く、原武史の代表作。
    第20回(1998年) サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞。

    [解説(鹿島茂)より]
    「横軸としての鉄道に、縦軸としての天皇が交差することによって、思考の座標軸が形成され、二つのパラメーターが思考の軌跡をさまざまに描き出す」


    [本書の内容]
    はじめに―昭和大礼の光景
    第一章 私鉄という文化装置
     「帝国」と「王国」
     『細雪』から
     関東私鉄と関西私鉄
    第二章 「私鉄王国」の黎明
     第五回内国勧業博覧会
     法の抜け穴
     二つの風土
    第三章 「阪急文化圏」の成立
     往来ふ汽車を下に見て―小林一三という人物
     民衆の都
     沿線文化の確立
     反官思想の結実―阪急デパート

    第四章 昭和天皇の登場
     「大大阪」の誕生
     昭和大礼と都市空間の変容
     官民協力奮励セヨ―一九二九年の行幸
    第五章 阪急クロス問題
     「官」の巻き返し
     逆風
     小林一三、社長を辞任す
    第六章 「帝都」としての大阪
     大阪市民たるもの
     天皇のまなざし
     一生一代の御奉公
    おわりに―「紀元二千六百年」の光景

    解説=鹿島茂

    ※本書の原本は1998年に講談社選書メチエより刊行されました。
  • 1,430(税込)
    著:
    石井進
    レーベル: 講談社学術文庫
    出版社: 講談社

    平安時代後期から戦国時代の終わりまで、中世をになった特徴的存在が武士団です。
    「土」と結びついたイエ支配権の強力さと独立性、生活の実際と意識のあり方、10世紀初頭の武士団の実体と鎌倉武士団への発展の過程、「板碑」が語る武士団の歴史、安芸国の小早川氏に見る鎌倉的武士団から南北朝・室町的武士団への変貌の経過と武士団の支配下の荘園の様相、北陸の雄たる朝倉氏の城下町、越前一乗谷の考古学的発掘の成果をとり入れた戦国武士団の一面。そして中世から近世へと移りゆくなかで武士団が喪失した「自立性」への惜しみない哀悼。
    本書は、日本中世史の泰斗が「中世武士団」という社会集団の実態と特色、そして中世社会の構造を、歴史書、文学作品、碑文、考古学資料を駆使し鮮やかに描き出し、高い評価を受け続けている作品です。30年以上前の著作ではありますが、学生や研究者にとっては今なお必読書であり、一般読者層にとっては最良の日本中世史入門といえる名著です。

    〔原本/1974年、小学館「日本の歴史」12巻『中世武士団』〕
    ※本書の原本は1974年、小学館より「日本の歴史」第十二巻『中世武士団』として刊行されました。講談社学術文庫収録にあたっては、同社より1990年に刊行された「文庫判 日本史の社会集団」第三巻『中世武士団』を底本とし、2005年に山川出版社から刊行された「石井進の世界」第二巻『中世武士団』を参照しました。

    【目次より】
    中世武士団の性格と特色――はじめに
    曾我物語の世界
    敵討とその周辺
    「兵」の館をたずねて
    「兵」から鎌倉武士団へ
    板碑は語る
    武士団とは何か
    小早川の流れ(一)――鎌倉時代の歩み
    小早川の流れ(二)――南北朝・室町時代の武士団
    埋もれていた戦国の城下町――朝倉氏の一乗谷
    失われたもの、発見されるもの――おわりに
  • 本書は、現代最高峰の人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009年)の全貌を描いた決定版の誉れ高い1冊です。
    ベルギーに生まれたレヴィ=ストロースは、フロイトやマルクスに触れた青年期を経て、南仏で高校教師になりました。その中で育まれた情熱を抑えられなくなった1935年にブラジルへ旅立ち、カデュヴェオ族やボロロ族、そしてナンビクワラ族の調査に乗り出します。その後、第二次世界大戦の勃発を受けて従軍しますが、1941年にはユダヤ人への迫害を回避するべくアメリカに亡命したレヴィ=ストロースに、ニューヨークで決定的な出来事が訪れました。それが言語学者ロマーン・ヤコブソン(1896-1982年)との出会いです。
    のちに『音と意味についての六章』として公刊されるヤコブソンの講義の内容は、レヴィ=ストロースの中で若い頃からあたためられていた「構造」の概念と交錯しました。そうしてヤコブソンの勧めを受けて書き始めたのが、構造主義の誕生を告げる『親族の基本構造』であり、4年をかけて完成されたこの大著は1949年に刊行されることになります。
    ここから旺盛な執筆活動を開始し、『人種と歴史』(1952年)、『悲しき熱帯』(1955年)、『構造人類学』(1958年)を生み出したあと、1959年にはコレージュ・ド・フランス教授に就任したレヴィ=ストロースは、一世を風靡した『野生の思考』(1962年)を発表すると、ついに全4巻に及ぶライフワーク『神話論理』(1964-71年)に着手しました。
    その後も100歳で逝去するまで活躍し続けた偉大な人類学者が残した数々の仕事を、その生涯や時代との関係を描きつつ明快に解説してみせた本書は、1996年の刊行以来、概説書のスタンダードとして四半世紀にわたって読み継がれてきました。このたび、最新の書誌情報を追加するとともに、生前の著者と深い交流のあった小泉義之氏の書き下ろし原稿を併載した文庫版としてお送りいたします。

    [本書の内容]
    序 章 構造主義のエシックス
    第一章 歴史の影のなかで
    第二章 声とインセスト
    第三章 旅の終わり
    第四章 神話と詩のあいだに
    第五章 幻想から思考へ
    第六章 新石器のビルドゥングスロマン 1――南半球の森から
    第七章 新石器のビルドゥングスロマン 2――北半球への旅
    終 章 「構造」の軌跡

    主要著作ダイジェスト
    キーワード解説
    読書案内
    レヴィ=ストロース略年譜

    解 説 小泉義之

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