『経済、思想、講談社(実用、新書)』の電子書籍一覧
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本書は、激動する19世紀フランスに生きた社会思想家ピエール=ジョゼフ・プルードン(1809-65年)の初期の主著である。
スイスとの国境に近いフランス東部のブザンソンに生まれたプルードンは労働者階級出身であり、向学心旺盛でありながら学業を断念せざるをえなかった。そうして働き始めた印刷所での日々は、のちの社会思想家を生み出す養分を提供することになる。すなわち、校正作業を通じてヘブライ語を習得したほか、聖書や言語学をはじめとする学的関心を養うとともに、同郷の社会思想家シャルル・フーリエの著書を校正することで、現実とは異なる社会を構想する動機を与えた。さらに、印刷工として働く傍らでフランス各地を巡行して印刷所の現場監督を務める中で労働者の境遇を身をもって知り、これが「社会の構成単位は仕事場である」という発想を導くことになった。これらの成果が結実したのが本書にほかならない。その冒頭には「最も数が多く最も貧しい階級の物質的、道徳的、知的境遇を改善する手段」を見出すというプルードンの動機が明確に宣言されている。
本書は第一章で提示される「所有とは盗みである」という警句によって物議をかもした。これは「奴隷制とは殺人である」という命題を「変形させただけ」だと言われるとおり、「所有」とは合法化された「盗みの権利」にほかならない。ならば、それが奴隷制につながらないための線引きを担保する必要がある。その方策を実現するものこそ、プルードンが構想した理想の社会だった。
紛れもない社会哲学の古典である本書の邦訳は1971年になされたあと半世紀以上、新しいものは登場していない。本書は、気鋭の研究者が清新な日本語で作り上げた新訳であり、格差が激化する今こそ熟読したい1冊である。
[本書の内容]
ブザンソン・アカデミー会員諸氏へ
第一章 本書が従う方法論――革命という観念
第二章 自然権とみなされる所有について――所有権の始動因としての先占と民法について
第三章 所有権の始動因としての労働について
第四章 所有は不可能であること
第五章 公正・不公正の観念の心理学的説明および、統治と法の原理の確定
訳者解説 -
かつては「人口爆発」が、そして現代では「人口減少」が、重大な危機として社会に浮上している。
人口が増えたり減ったりすることは、社会においていかなる問題として捉えられてきのか。
経済学の歴史を振り返ると、それは制度や統治という問題圏と常に重なり合いながら論じられてきた。
本書はそれの道のりを、社会思想史の底流にある大きな流れとして描き出す挑戦である。
人口というものは、とりわけ現在の日本において喫緊の問題となっているが、それはわたしたちが社会をいかなるものとして捉え、統治するかという問題と表裏一体となっている。
アダム・スミス、マルサス、ミル、ケインズ――本書でたどる彼らの思想的格闘のあとは、いまわたしたちがまさに直面する危機を考えるにあたり、見逃すことのできない発見をもたらすだろう。
【本書の内容】
序文
第一章 重商主義の時代 人口論の射程の広さとデータ主義の起源
1.はじめに
2.ペティ:人口を測る
3.重商主義と人口
4.おわりに
5.補説:ベーコン主義
第二章 スミスの時代 自由と平等の条件と、経済学の生成
1.はじめに
2.モンテスキュー
3.ヒューム・ウォーレス論争
4.ステュアートとケイムズ卿
5.スミス
6.おわりに
第三章 マルサスと古典派経済学 フランス革命後の統治論の平等論的転回
1.はじめに
2.コンドルセとフランス革命
3.ゴドウィンとフランス革命
4.マルサス
5.リカードウ
6.J・S・ミル
7.おわりに
第四章 ケインズと転換期の経済学 人口減少論の勃興
1.はじめに
2.マーシャル
3.優生学
4.ケインズにおける人口変動
5.成長理論と人口:ハロッドとソロー
6.おわりに
第五章 現代の経済学 人口法則とその統治論的含意
1.はじめに
2.人口転換論
3.現代経済学と人口論
4.世代間所得移転
5.経済の成長と長期停滞
6.おわりに
結語
注
参考文献 -
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現代新書の新シリーズ「現代新書100(ハンドレッド)」刊行開始!!
1:それは、どんな思想なのか(概論)
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経済学者・宇沢弘文は、半世紀も先取りして、行き過ぎた市場原理主義を是正するための、新たな経済学づくりに挑んだ。すべての人々の人間的尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に享受できる。そのような社会を支える経済体制を実現するため、「社会的共通資本の経済学」を構築した。
この小著では、経済学の専門的な話はできるだけ避け、宇沢が「社会的共通資本」という概念をつくりだした経緯や思想的な背景に焦点をあててみたい。宇沢が環境問題の研究を始めたのは半世紀も前であり、地球温暖化の問題に取り組んだのは30年あまり前からだった。先見の明というより、問題を見定める際の明確な基準、つまり、思想があったからこそ、これほど早く問題の所在に気づくことができたのである。
ロシアがウクライナに侵略して戦争が始まったとき、欧州のある金融機関が、武器を製造する企業への投資をESG投資に分類し直すという動きがあった。ふつう、ESG投資家は人道主義の観点から、軍需産業への投資には抑制的だ。しかし、アメリカなどがウクライナに武器を供与する現実を目の当たりにして、「防衛産業への投資は民主主義や人権を守るうえで重要である」と態度を豹変させたのである。
ESGやSDGsに先駆けて「持続可能な社会」の条件を探求した宇沢なら、このようなESG投資を認めることは絶対にあり得ない。思想が許さないからだ。「ステークホルダー資本主義」「ESG投資」「SDGs」を叫んでみたところで、一本筋の通った思想がなければ、結局は換骨奪胎され、より歪な形で市場原理主義に回収されてしまうのがオチだ。
資本主義見直しの潮流が始まった直後、世界はコロナ・パンデミックに襲われ、ウクライナの戦争に直面した。危機に危機が折り重なって、社会は混沌の度を深めている。
宇沢の思想に共鳴するかしないかが問題なのではない。生涯にわたって資本主義を問いつづけた経済学者の思考の軌跡は、かならずや混沌から抜け出すヒントを与えるはずである。(はじめに より) -
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【内容紹介・目次・著者略歴】
資本主義はたんなる経済体制ではなく、それ自体一個の文明である。本書はこの文明の命運を社会主義経済体制の変化だけではなく、時代精神の変遷に重点をおいて解明し、資本主義解体の道程とその後に予想される社会類型にまで言及。そこに内在する諸問題を究明した論文集。
【目次】
一 資本主義(一九四六年)
二 戦後の世界における資本主義(一九四三年)
三 英国経済学者と国家管理経済(一九四九年)
四 今日における社会主義の可能性(一九二〇年)
五 英国ならびにわが国における社会主義(一九二四年)
六 共産党宣言の社会学と経済学(一九四九年)
七 私的企業の将来(一九四六年)──現代の社会主義的傾向に直面した
八 社会主義への前進(一九五〇年)
あとがき
増補第二版あとがき
シュムペーター
1883~1950年。オーストリア・ハンガリー帝国の経済学者。企業家によるイノベーション(革新)の経済成長への影響を理論化した。
著書に、『経済発展の理論』『経済学史 : 学説ならびに方法の諸段階』『租税国家の危機』
『景気循環論 : 資本主義過程の理論的・歴史的・統計的分析』『資本主義・社会主義・民主主義』『経済分析の歴史』などがある。 -
対・社会主義/対・国家/対・前近代社会――
対比するものや時代によって「資本主義」の意味は変わる。
市場経済・企業組織の変容、中国の台頭。
いま「資本主義」は、どんな現実をうつすのか?
「市場」と「所有」のバランスにその本質を見出し、
歴史と概念から付き合い方を考える、AI時代の「資本主義の哲学」。
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もちろん私たちは「資本主義」という言葉、概念にだけ関心があるわけではなく、そのような言葉で指示されている現実そのものに対してこそ深刻な関心があります。しかしながら我々は「資本主義」という言葉、概念なしにはその言葉が指し示す現実について考えることはおそらく不可能なのです。――「はじめに」より
【目次】
はじめに
1 資本主義・対・社会主義
2 資本主義とは何か
3 仕組み
4 核心
5 AI時代の資本主義
おわりに
補論 資本主義と国家 -
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【内容紹介・目次・著者略歴】
ヨーロッパの伝統的な自由思想を踏まえ、市場競争を前提に公正さと効率を実現しうる資本主義の可能性を分析する。
【目次より】
第1部 自由と公正および市場システム
I 自由主義の伝統とその再建
II ハイエクとネオ・リベラリズム
III シカゴ学派の自由主義
IV 自由主義と市場システム
V 自由な社会とその哲学 ハイエクの社会理論について
VI 自由主義
VII 自由と平等 ロールズ正義理論の一考察
VIII ロールズ正義理論再考 基礎構造と正義の二原理について
IX 福祉と公正 福祉国家と分配についての省察
第2部 シュムペーターの歴史的経済学をめぐる諸問題
I シュムペーターの体系と方法
II シュムペーターと資本主義の将来
III シュムペーターの未来学について
第3部 現代経済学批判
I 経済学における危機と革命
II 革命の意義と現代経済学
付論
あとがき
初出一覧
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大野 忠男
1915~1998年。経済学者。大阪大学名誉教授。東京帝国大学法学部卒。大阪大学経済学博士。
著書に、『ス・フ織物規格と解説』『シュムペーター体系研究 資本主義の発展と崩壊』(日経・経済図書文化賞受賞)『経済学史』『自由・公正・市場 経済思想史論考』など、
訳書に、J.M.ケインズ『人物評伝』(共訳)『ケインズ全集 第10巻 人物評伝』ヴァルター・オイケン『経済政策原理』シュムペーター『資本主義と社会主義』サミュエル・ホランダー『アダム・スミスの経済学』(共訳)シュムペーター『今日における社会主義の可能性』シュムペーター『理論経済学の本質と主要内容』(共訳)などがある。 -
経済学は、なぜ人間の生から乖離し、人間の幸福にはまったく役立たなくなってしまったのか? 経済学の堕落の跡をたどると同時にその再生の可能を探る。「科学的客観性」「ヴァリューフリー」を標榜し、いつしか「人間の心」を失ってしまった経済学。19世紀後半ドイツにおいて始まった経済学「科学化」の動き。ハイエク、「ゲーム理論」、さらには「シカゴ学派」の「ゴッドファーザー」シュルツへと至る、極端な経済の自由化と「脱倫理化」の強化。そして「クズネッツ曲線」をめぐる「新自由主義」の欺瞞。その一方での、上記の流れに抗して「人間の顔をした経済学」を目指した、ポランニー、イリイチ、あるいはウォーラーステインら世界システム論者などにによる、経済学における「社会的公正」理念復権への模索。経済学の歩みを「自由」と「正義」という二つの相対立する思想の相克の歴史と捉え、21世紀の「来たるべき経済学」の可能性を探る。
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私たちはいつまで誤った経済学を信じ続けるのか? いまだ収拾のつかないグローバル金融危機。これに対する各国の対応は、結局は対処療法に過ぎず、次のバブルを招来させるものでしかない。そして資本主義の危機を底で支えているのは、社会主義国の中国という喜劇的状況。なぜこのような状況に陥っているのか。筆者は経済学の根本、貨幣の根源にまで遡り、いまの過ちを論じる。 (講談社現代新書)
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