『文芸・小説、歴史、中央公論新社』の電子書籍一覧
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疫病に荒れた世を建て直す救国の英雄か、
古代社会を破壊する稀代の逆賊か。
謎多き人物の実像に、直木賞作家の筆が迫る。
時は天平。都には天然痘が蔓延し、朝廷にて我が世の春を謳歌していた藤原一族も権勢に陰りを見せていた。その中において、ひとり異彩を放つ男がいた。藤原仲麻呂(恵美押勝)。祖父・不比等や父・武智麻呂の血を色濃く受け継いだこの男は、叔母の光明皇后や次代の天皇である阿倍内親王の寵愛を受け、急激に頭角を現していく。だが仲麻呂は、祖父や父も持ちえなかった、危険な野望を胸に宿していた。北辰の門――この国の皇帝となる道を開こうとした男の、鮮烈なる一生。 -
謀略に次ぐ謀略!
有力皇族の誅殺、忍び寄る疫病の影――。
藤原家の四子がこの国にもたらしたのは、栄光か、破滅か?
直木賞作家にしてノワール小説の旗手が、古代史上最大の闇に迫る衝撃作。
藤原武智麻呂、房前、宇合、麻呂の四兄弟は、父・不比等の意志を受け継ぎ、この国を掌中に収めるため力を合わせる。だが政の中枢には、不比等が唯一畏れた男、長屋王が君臨していた。
皇族と藤原家。それぞれの野心がぶつかり合い、謀略が交錯するとき、古代史上最大の闇が浮かび上がる――。
〈解説〉木本好信(元龍谷大学教授、奈良時代政治史) -
歴史小説家たちが紡ぐ時代の違う5つの物語が、あるひとつの「怪異」で繋がる。
読後に訪れるこの震えは、恐怖か、驚愕か――?
異端にして傑作の歴史小説集、ここに誕生。
5つの「畏怖」が、この国の歴史を塗り替える
矢野 隆 有我 ――鎌倉時代、壱岐。元寇に抗う男に訪れたある異常。
天野純希 死霊の山 ――室町時代、近江比叡山。霊峰に現れた狐憑きの正体は。
西條奈加 土筆の指 ――江戸時代初期 中部地方。墓の土饅頭から土筆が生え……。
蝉谷めぐ実 肉当て京伝 ――江戸時代後期、江戸市中。山東京伝の妻は、自らを「人魚」だという。
澤田瞳子 ねむり猫 ――江戸時代末期、大奥。城内に現れる不可思議な病。 -
元式部丞・藤原為時の娘で二十歳の小姫(のちの紫式部)は、創作の腕を評価され、左大臣源雅信の娘・倫子に「物語の女房」として仕えていた。小姫の書いた「光る君」を主人公とする短編は、貴族社会の一部で評判を取り、回し読みされている。倫子の要望に従い次々と執筆しているうちに創作の「種」に詰まってしまった小姫は、ある日、隣家の中流貴族の娘で幼馴染みの月乃に「取材」へ誘われる。女房たちの間で噂になっている七の宮の恋の真相を知るため、宮が女と逢瀬を重ねているという廃院に行ってみようというのだ。月乃の父の荘園を治める荘官の子・鶴丸を供に、廃院に向かった三人だったが……。
若き日の紫式部が、相棒とともに都大路の「謎」に迫る!
【目次】
第一話 六条の廃院
第二話 尋ねゆく幻術士
第三話 あこがれの草子
第四話 車争い
第五話 鳴滝参り -
文政六年、いじめに耐えかねた西丸書院番二番組の新参・松平外記が三名の古参を城中で斬り殺す大事件、いわゆる「千代田の刃傷」が起きた。幕閣が混乱する中、二百二十五石の小旗本で無役の小普請組・北条志真佑は、番士を一新し再編成された二番組に抜擢され、妹の幸や叔父の相模八左衛門とともに喜んでいた。上泉新陰流を使い、十一代将軍徳川家斉の世子・家慶の力にならんと腕を撫す志真佑だったが……。待望の新シリーズ始動!
【目次】
第一章 騒動の後始末
第二章 役付の誉れ
第三章 城中規律
第四章 恨の根
第五章 盾の意味 -
お江戸日本橋に、ちょっとワケありな旅籠が誕生!?
料理屋「夕凪亭」の娘ちはるは、雇われ人の裏切りで両親と店を失い、長屋でひとり借金苦に喘いでいた。そこに元火付盗賊改の工藤怜治が現れ、借金を清算してしまうと、日本橋室町に新しくできた旅籠「朝日屋」を手伝うようちはるに迫るが、ちはるには素直に頷けない事情があり……。
お腹も心も満たされる「朝日屋」の物語、ここに開店!
●主要登場人物●
ちはる――17歳。いまはなき料理屋「夕凪亭」の一人娘
工藤怜治――28歳。朝日屋の主。元は腕利きの火付盗賊改で熱血漢
慎介――54歳。朝日屋の料理人頭。朝日屋の前身である料理屋「福籠屋」の主で、料理の腕前はピカイチだったが……
たまお――31歳。水茶屋の茶汲み女。外見はおっとりしているが、客あしらいがうまい。過去に悲惨な事件を経験している
綾人――16歳。乙姫一座の女形。かつての奉公先で事件に遭い、怜治に救われた過去を持つ
慈照――27歳。眉目秀麗な「天龍寺」の住職。幼い頃からちはるに目をかけている。甘党
柿崎詩門――24歳。火付盗賊改で、怜治の元同僚。怜治と違い、品のいい優男だが有能 -
廉太郎の頭のなかには、いつも鳴り響いている音があった――
最愛の姉の死、厳格な父との対立、東京音楽学校での厳しい競争、孤高の天才少女との出会い、旋律を奏でることをためらう右手の秘密。
若き音楽家・瀧廉太郎は、恩師や友人に支えられながら、数々の試練を乗り越え、作曲家としての才能を開花させていく。そして、新しい時代の音楽を夢みてドイツ・ライプツィヒへと旅立つが……。「西洋音楽不毛の地」に種を植えるべく短い命を燃やした一人の天才の軌跡を描き出す。
時代小説家最注目の俊英が、ついに新境地・明治へ!
第66回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部) -
本能寺で織田信長が討たれた。わずかな供と堺にいた盟友の徳川家康は、明智光秀の追っ手から逃れるため切腹せんとするも、本多忠勝ら重臣に止められる。ここで死ねば、三河と駿河・遠江の家臣がそれぞれ幼少の息子たちを担ぎ、家が「割れる」というのだ。家康は、今は亡き長男信康の不在を嘆くが……。二人の英傑とその後継者の相克を描いた、二部構成の骨太な戦国ドラマ。
【目次】
第一部「夢の天下」 徳川家康
序 章
第一章 夢の始まり
第二章 苦難の舟出
第三章 動くべきとき
第四章 当主として
第五章 危難の日々
第六章 夢の果て
終 章
第二部「幻の天下」 織田信長
序 章
第一章 夢の始まり
第二章 混迷する西
第三章 ひとときの休息
第四章 継承の始まり
第五章 坂の途中
第六章 見えた頂
終 章
解 説 細谷正充 -
本能寺で織田信長が討たれた。わずかな供と堺にいた盟友の徳川家康は、明智光秀の追っ手から逃れるため切腹せんとするも、本多忠勝ら重臣に止められる。ここで死ねば、三河と駿河・遠江の家臣がそれぞれ幼少の息子たちを担ぎ、家が「割れる」というのだ。家康は、今は亡き長男信康の不在を嘆くが……。英傑とその後継者の相克を描いた、骨太な戦国ドラマ第一部・徳川家康篇。
【目次】
第一部「夢の天下」 徳川家康
序 章
第一章 夢の始まり
第二章 苦難の舟出
第三章 動くべきとき
第四章 当主として
第五章 危難の日々
第六章 夢の果て
終 章 -
東大医学部を卒業後、父の診療所を手伝う森林太郎(鷗外)。それぞれの事情を抱えた患者たちの生と死に立ち会いながら、医療のあるべき姿を模索する。青年医の人間的成長を描く連作集。好評既刊『鷗外青春診療録控 千住に吹く風』の続編。
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「飢饉に沈む人々に元気を与えたい」。
男たちの熱い想いがあの花火大会を生んだ。
時は享保。江戸の町は飢饉に沈み、失業者、果ては餓死者までが出る始末。為政者ですら救えないこの町を、文字通り明るく照らそうとする男がいた。花火師・六代目鍵屋弥兵衛。困った人を放っておけないこの男は、江戸中の人を放っておけなかった――!
弥兵衛は自らの小さな工場に仲間を集め、ある計画を練り始める。大川(のちの隅田川)で、将軍の号令のもとに行われる「水神祭」。その場に江戸中の人を集め、一世一代の大仕掛けを披露することであった。 -
自ら海軍に進んだ著者が、提督三部作や『軍艦長門の生涯』には書けなかった海軍を、実体験や取材メモをもとに綴ったエッセイ五〇篇。海軍軍人のスマートさだけではない蛮勇・武勇伝・失敗談や、軍隊の悲惨さ愚かさから潜水艦のトイレ事情まで、人間味たっぷりに描く〝わがネイビー賛歌〟。単行本未収録の講演録「日本海軍の伝統と気風」を増補。
「ネイビーはスマートネスを以てモットーとする」陸軍とちがい敵性国語廃止などと野暮なことは言わなかったけれど……(「青春の旅立ち」)
制服の海軍士官は雨の日でも傘をさすことを許されていない。外出中にわか雨にあったらどうするか? 中尉はこう教わった。「ゆっくり濡れてこい」(「なぜ負けた」)
「お前は何故海軍を志願したか」「はいッ、陸軍がきらいだからであります」試験官の中佐がニヤッとした。(「人のいやがる軍隊に」)
【目次より】こぼれ話の始まる話/青春の旅立ち/なぜ負けた/カールビンソン/仰ぐ誉れの軍艦旗/サセコイ/へんな英語/ヘル談哀話/まあうれしい/艦長自ら操艦しつつあり/人殺し/軍人勅諭/よく学びよく遊び/町人服/大蔵省は海軍省/泥水すすり草をかみ/気ヲツケラレマス/人のいやがる軍隊に/六ツかしござる/ドナウ河の水深/靴磨き海軍/見て地獄/次元が低い/逆ごよみ/ミッドウェー/われらが知性/乱数表/腐れ士官の捨てどころ/坊さんパイロット/海軍馬鹿/ネルソンと東郷/親英派と親独派/罐焚き/侯爵の植木屋/文壇海軍見立て/航空母艦の幽霊/公用特急券/少将の墓/海軍士官とフランス語/狸の親ごころ/ロイヤル・サルート/オモチャの造船所/海軍糞尿譚/満艦飾/遺骨還送/女たちの大東亜戦争/ラッタルはかけあし/考課表/日付変更線/こぼれ話の終る話/講演録「日本海軍の伝統と気風」 -
炒米粉、魯肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――。
結婚から逃げる日本人作家・千鶴子と、お仕着せの許婚をもつ台湾人通訳・千鶴。
ふたりは底知れぬ食欲と“秘めた傷”をお供に、昭和十三年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。
「私はこの作品を過去の物語ではなく、現在こそ必要な物語として読んだ。
そして、ラストの仕掛けの巧妙さ。ああ、うまい。ただ甘いだけではない、苦みと切なさを伴う、極上の味わいだ。」
古内一絵さん大満足
1938年、五月の台湾。
作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。
現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、
台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。
しかし、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子は焦燥感を募らせる。
国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差―――
あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅はどこへ行く。 -
深川で娘が惨殺された。もう四人目だ。続いて刺殺された男の死体が吾妻橋近くで見つかる。その頃、「江戸の雷神」と呼ばれ町人に人気があった前火付盗賊改役の伊香雷蔵は、わけありの剣の達人・安斎六右衛門、元盗賊の玄慈、幼馴染みで拳法使いの女医・長飛とともに、「よりよい江戸」をつくらんとしていたが……。
個性的な仲間たちが正義のために奮闘する、痛快時代小説シリーズ! -
累計50万部突破!
『一路』『壬生義士伝』の浅田次郎が贈る、新たなる国民的時代小説。
万延元年(1860年)。姦通の罪を犯したという旗本・青山玄蕃に、奉行所は青山家の所領安堵と引き替えに切腹を言い渡す。だがこの男の答えは一つ。
「痛えからいやだ」
玄蕃には蝦夷松前藩への流罪判決が下り、押送人に選ばれた一九歳の見習与力・石川乙次郎とともに、奥州街道を北へと歩む。口も態度も悪い玄蕃だが、道中で行き会う抜き差しならぬ事情を抱えた人々を、決して見捨てぬ心意気があった。この男、仏か、罪人か? -
「彼の一生は失敗の一生也。彼の歴史は蹉跌の歴史也。彼の一代は薄幸の一代也。然れども彼の生涯は男らしき生涯也。」――芥川龍之介
平安末期。十二歳の少年・駒王丸は、信濃国木曽の武士・中原兼遠の養子として、自然の中でのびのびと育つ。兼遠の息子たちとも実の兄弟のように仲良く過ごすが、彼は父と母の名も自分が何者なのかも、いまだ知らずにいた。
ある日、駒王丸はささいなきっかけから、同じく信濃の武士の子・根井六郎と喧嘩になる。だが、同等の家格であるにもかかわらず、六郎と根井家当主が後日謝罪に訪れる。二人は畏れ多そうに深々と頭を下げて言う。
「駒王丸殿はいずれ、信濃を束ねる御大将となられる御方。我ら信濃武士は、ゆくゆくは駒王丸殿の旗の下に集わねばならぬ」
初めて知る実父の存在、自らの壮絶な生い立ち。駒王丸、のちの木曽義仲の波乱の生涯が始まろうとしていた。
類い希なる戦の腕で平家を追い落とし、男女貴賤分け隔てない登用で、頼朝・義経より早く時代を切り拓いた武士。
彼が幕府を開いていれば、殺戮の歴史はなかったかもしれない。
日本史上最も熱き敗者、「朝日将軍」木曽義仲の鮮烈なる三十一年。 -
難事業に立ち向かった叩き上げの天才――
老中・松平信綱は何故「知恵伊豆」と称されたか?
明暦3年(1657)1月、江戸が燃え尽きた――。のちに言う「明暦の大火」である。日本史上最大、世界史的に見ても有数の焼失面積と死者数を出したこの大惨事に立ち上がった男がいた。代官の息子に生まれながら、先代将軍・家光の小姓から立身出世を遂げた老中・松平伊豆守信綱。その切れ者ぶりから「知恵伊豆」と呼ばれた信綱は、町奴の長兵衛を「斥候」として使いながら、「江戸一新」に乗り出した。現在の東京に繋がる大都市・大江戸への「建て替え」が始まったのだ。
読売新聞連載「知恵出づ 江戸再建の人」より改題。
目 次
第一章 大火発生
第二章 復興開始
第三章 米の値段
第四章 復興景気
第五章 抗 争
第六章 大移動
第七章 討ち入り
第八章 遷 都 -
武士とは、何だったのか?
千年に亘る戦いの系譜を一冊に刻みつけた、驚愕の傑作歴史小説。
〈螺旋プロジェクト〉中世・近世篇。
負け戦の果てに山中の洞窟にたどり着いた一人の武士。死を目前にした男の耳に不思議な声が響く。「そなたの『役割』はじきに終わる」。そして声は語り始める。かつてこの国を支配した誇り高きもののふたちの真実を。源平、南北朝、戦国、幕末。すべての戦は、起こるべくして起こったものだった――。〈巻末付録〉特別書き下ろし短篇
【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みができます】
※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画
〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(本作)
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』 -
「全き天皇であること」
――その何人にも推し量れぬ孤独。
756年、東大寺大仏を建立した首(聖武)太上天皇が崩御。
道祖王を皇太子にとの遺詔が残されるも、
その言に疑いを持つ者がいた。
中臣継麻呂と道鏡は、密かに亡き先帝の真意を探ることになるが、
ゆかりの人々が語り出したのは、
母君との尋常ならざる関係や隔たった夫婦のありよう、
御仏への傾倒など、死してなお謎多きふるまいや
孤独に沈む横顔ばかりで――。
国のおおもとを揺るがす天皇家と藤原家の相克を背景に、
聖武天皇の真実をあぶり出す!
〈螺旋プロジェクト〉の1冊としても話題。
【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みができます】
※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画
〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』(本作)
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』 -
私の目を引いたのは、沖縄から届く封筒に貼られた美しい切手でした。
「琉球郵便」の文字、額面はセントで表示されている切手の図柄は多彩でした。見たことのない南国の植物、鮮やかな色をした魚、紅びん型がた紋様、琉球舞踊、文化財や工芸品……。いつも異なる図柄の切手だったので、手紙が届くとまっさきに確かめるようになりました。いきいきと描かれている動植物はとてもきれいで、友だちに「沖縄のお魚は青いの」と言っても信じてもらえなかったのですが。琉球舞踊の切手には県人会で見た演目が描かれていてうれしくなりました。
ふだん目にする日本の切手とはまったく違うそれらの切手は「琉球切手」と呼ばれるもので、沖縄で作られているということでした。
米軍施政下に置かれたのち一九四八年七月から七二年四月まで、普通切手・記念切手・航空切手など二百五十九種(再刷含む)の琉球切手が発行されていたと知るのはのちのことです。(第1章より)
……………………
琉球切手はいまも沖縄の家に多数残っているという話を耳にします。切手としては使えないけれど、手放したくないという人や、ブームのさなかに買い、売りそびれてしまったという人。どこかの家の古い箱に忘れられたまま、ひっそりと眠っている切手もあるでしょう。
そんな琉球切手は、こんなふうにつぶやいているのかもしれません。沖縄が米軍施政下だったころ、私たちは「言葉」を運んで、旅をしたのだよ、と。
「Final Issue」の切手が発行されてから五十年。けれどいまも沖縄には米軍基地が広がり、米軍統治時代の終止符が打たれたとはいえない状況です。そんな沖縄からの「言葉」は、本土に届いているのでしょうか。(第十章より) -
(一)神話から楚辞へ
中国文学の原点である『詩経』と『楚辞』の成立、発想、表現を、『記紀万葉』と対比し考察する。古代共同体的な生活が破壊され封建制が根付いたとき、人々はそれぞれの運命におそれを抱き、そこに古代歌謡が生まれた。斬新で美しい論の展開、すべてを網羅した知識、知的興奮が味わえる白川静の世界。
(二)史記から陶淵明へ
古い国家の羈絆から解き放たれ、自らの運命に生きはじめた孤独な生活者たち。彼ら「士人」は体制への埋没を拒否し、自然の情感に沿って天の道に合しようとした。「天道是なるか非なるか」と厳しく問うことによる文学精神の成立から、現実を避けて桃源郷を求める創作詩にまでいたる、文化の道筋を探る。
(全二巻) -
太平洋戦争さなかの昭和17年。日本統治下のパラオ・コロール島。小学校教員である宮口恒昭の長男・智也はある事件をきっかけに、パラオ人少年のシゲルと親友となった。だが、父の転勤で智也も隣島へ転校することに。二年が過ぎ偶然再会したふたりは喜び合うが、戦争の冷たく暗い影は、この長閑な南の島々にも迫っていた――。時は流れ、昭和63年末。パラオ共和国独立準備で訪日したシゲルは、天皇の容体悪化が報じられる中、戦後すぐ消息が途絶えた宮口家の人々を捜しはじめるのだが……。日本人とパラオ人の歴史と心の交流、戦争の悲惨さ、そして日本人の未来(エレアル)を問う、感動長篇。
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〈北条サーガ〉に待望の新シリーズ
富樫倫太郎が、今度は北条家3代目の生涯を描き出す!
「北条早雲」と「軍配者」――
ふたつの人気シリーズを受け継ぐ壮大なストーリー「北条氏康」が幕を開ける
祖父・早雲に可愛がられた伊豆千代丸は、やがて3代目・氏康として立つ。
関東全土の支配を目指す氏康の生涯には、今川義元との対立、河越夜襲、そして武田信玄や上杉謙信との死闘……幾多の試練が待つことに。
新シリーズ第一弾は、早雲に可愛がられた伊豆千代丸時代から、軍配者・風摩小太郎との出会い、小沢原の初陣まで! -
王莽の台頭によって、官位についた兄たちに変わって、家主となった馬援は、馬の世話をし、田を耕し生活していた。しかし、敬愛する兄の死によって、故郷を離れ、北地で牧畜を営むことになる。馬援の牧場経営は軌道に乗り、大きな富を築くが、馬援はその富を皆に平等に分ける。各地で王莽への叛乱軍が蹶起し、かつての友、公孫述、隗囂らも兵を挙げるが、馬援は劉秀に惹かれ、共に天下統一の戦いに加わることになる。夜に輝く巨星のような馬援と、天高く上る日のような劉秀。互いを「君」「臣」と選び取った二人が挑む新王朝樹立の戦いのゆくえは。
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歴史は「昔、むかし」の物語。さあ今から昔話をはじめよう――。『美術の物語』の著者がやさしく語りかけるように、時代を、出来事を、そこに生きた人々を活写する。ネアンデルタール人の登場から自ら体験した第二次大戦まで。一九三六年の初版刊行から半世紀を経て復刊されて以来、各国で読みつがれてきた“物語としての世界史”の古典。文庫上下巻を合本とし、最新版を参照して訳文を見直した、待望の改訂版。
目次
1 「昔、むかし」
2 偉大な発明者たち
3 ナイル川のほとり
4 日月火水木金土
5 唯一の神
6 だれもが読める文字
7 英雄たちの時代
8 けたちがいの戦争
9 小さな国のふたつの小さな都市
10 照らされた者と彼の国
11 大きな民族の偉大な教師
12 偉大なる冒険
13 新しい戦い
14 歴史の破壊者
15 西方世界の支配者
16 よろこばしい知らせ
17 帝政のローマ
18 嵐の時代
19 星夜のはじまり
20 アッラーの神と預言者ムハンマド
21 統治もできる征服者
22 キリスト教の支配者
23 気高く勇敢な騎士
24 騎士の時代の皇帝
25 都市と市民
26 新しい時代
27 新しい世界
28 新しい信仰
29 戦う教会
30 おぞましい時代
31 不幸な王としあわせな王
32 その間に東欧で起こったこと
33 ほんとうの新しい時代
34 暴力による革命
35 最後の征服者
36 人間と機械
37 海の向こう
38 ヨーロッパに生まれたふたつの国
39 世界の分配
40 わたし自身が体験した世界史のひとこま -
大政奉還前夜、史上最大の乱痴気騒ぎはなぜ起こったのか。やくざ者に老婆に童、新米御庭番と御用町人。三河国吉田宿に降った数枚の御札が、彼らの命運を、そして天下をも混沌の渦に陥れていく――
作家生活10年目に切り拓く新境地。人智を超えた運命の交錯が、歴史を、物語を駆動する! -
「聞けや、者! 前右大臣ここにあり!」
本能寺の変から生還し、関ヶ原合戦で柴田勝家を下し、天下獲りを目前にする信長。だが、密かに伊達政宗、上杉景勝と手を組み力を蓄えた家康が、ついに叛旗を翻す!
異貌の戦国史長篇(未完)、待望の合本版。
短篇時代小説「葉桜」を収録。
【目次より】
信長伝
Ⅰ 本能寺炎上
緒言
転換点
序 本能寺炎上
一 その日まで
二 猟狗たち
三 第一次関ヶ原合戦録
Ⅱ 天下普請
一 築城
二 大海の彼方で
三 叛逆
四 要塞
Ⅲ 家康謀反
一 城塞
二 到着
三 衝突
葉 桜 -
「別れた女に金の無心までして、あの人が目指すのは何なのでしょう――」
明治に浪漫主義運動の旗頭「明星」を創刊し、数多の才能を育てた与謝野鉄幹。その人生には、彼に身も心も翻弄された女性たちがいた。「明星」の草創期を支え、子をなすも裏切られ続けた滝野、歌の才を愛されながら夭折した登美子、鉄幹の妻となり歌人として大成した晶子。それぞれに訪れる鉄幹との修羅場、女たちのふしぎな連帯、そして鉄幹を凌ぐ歌人となった晶子の壮絶な運命とは――。心も金も才能も燃やし、自らの足で歩み始めた明治女性たちの不屈の歴史恋愛長篇。 -
長崎奉行の任を解かれ小普請入りした荻生但馬は、船宿の二階で三味線三昧の気ままな日々を送っていた。しかし、公平で人情味溢れる仕事ぶりが長崎でも評判だった男を幕閣も放っておかず、新役の御蔵入改方頭取に任命する。南北町奉行所や火付盗賊改が取り上げない訴えや未解決事件を探索する御蔵入改方は、但馬を入れてもたったの五人。頭取自身が「一癖も、二癖もある面白い奴ら」と評するはみ出し者たちが、各々の特技を活かし、難事件に挑む!
【目次】
第一話 消えた花嫁
第二話 吝嗇の夢
第三話 木乃伊取り
第四話 名門の穢れ -
農民から江戸随一の材木商へ成り上がり、江戸中の人々に愛されながらも一代にして店を閉じた天才の生涯とは?
時は元禄。文吉は、幼い頃に巨大な廻船に憧れたことをきっかけに、故郷の紀州で商人を志す。だが許嫁の死をきっかけに、彼は「ひとつの悔いも残さず生きる」ため、身を立てんと江戸を目指す――。蜜柑の商いで故郷を飢饉から救い、莫大な富を得ながらも、一代で店を閉じた謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生き様に迫る痛快作。 -
時は鎌倉末期。幕府の命数はすでに尽き、乱世到来の情勢下、大志を胸に雌伏を続けた男がひとり――。その名は楠木正成。畿内の流通を掌握した悪党は、倒幕の機熟するに及んで草莽の中から立ち上がり、寡兵を率い強大な六波羅軍に戦いを挑む。楠木一党は、正成の巧みな用兵により幕府の大軍を翻弄。ついには赤松円心、足利高氏(のち尊氏)らと京を奪還、後醍醐帝の建武新政は成就したが……。信念を貫くも苛酷な運命に誘われ死地へ赴かざるを得なかった、悲運の名将の峻烈な生を迫力の筆致で描く、北方「南北朝」感涙の最終章。
【目次】
第一章 悪党の秋
第二章 風と虹
第三章 前夜
第四章 遠き曙光
第五章 雷鳴
第六章 陰翳
第七章 光の匂い
第八章 茫漠
第九章 人の死すべき時
解説 細谷正充 -
われわれがこれまで、人類の過去の生き残りと教えられてきた人々――彼らのもとの世界の廃墟の中で、今現在「かろうじて存続する」ことを余儀なくされている人々――が、思いがけず、われわれ自身の未来の姿として現れてきます。
クレナッキは言っています。私たち先住諸民族は、五世紀にわたって西欧の血なまぐさい「人道主義」に抵抗してきた。私が心配しているのは、むしろあなた方白人のことだ。これから起こることに対して、あなた方が耐えられるか、私にはわからないから、と。
――ヴィヴェイロス・デ・カステロによる「あとがき」より -
真田家と両軍の思惑が交錯する大坂の陣――男たちの陰影が鮮やかに浮かび上がるミステリアスな戦国万華鏡。
誰も知らない真田幸村
神秘のベールに包まれた武将の謎を、いま最も旬な作家が斬る!
亡き昌幸とその次男幸村――何年にもわたる真田父子の企みを読めず、翻弄される諸将。徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、ついには昌幸の長男信之までもが、口々に叫んだ。「幸村を討て!」と……。戦国最後の戦いを通じて描く、親子、兄弟、そして「家」をめぐる、切なくも手に汗握る物語。 -
『商う狼』で新田次郎賞をはじめ数多くの文学賞を受賞。
大注目の作家が紡ぐ、知られざる鎌倉時代を生きた女性たちの物語。
「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
建久六年(1195年)。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。
「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。
その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、わかり合えない母と娘の物語があった。
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