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『日本文学、小学館、21~30冊(文芸・小説)』の電子書籍一覧

1 ~60件目/全129件

  • デビュー作「ブルジョア」を含む初期作品集。

     父が天理教に入信し、叔父夫婦に育てられた芹沢光治良。帝国大学卒業後、農商務省に入省したが、経済の研究を志してパリに留学するもそこで結核に感染し、フランス、スイスで療養生活を経験する。そんな体験から書かれたデビュー作品集である。
     雑誌「改造」の懸賞創作で1等に入選した「ブルジョア」は、結核患者が集まる町を舞台に、病に侵された夫と妻、多国籍の入院患者らの懊悩を描いた作品。
    「結核患者」「昼寝している夫」「椅子を探す」は、杉夫妻を主人公に、結核に倒れた夫が心身ともに復活していく様子を描写し、「橋の手前」「風迹」は、共産主義に対する市井の人々のとらえ方を描出している。
  • 高橋たか子パートの最終巻。没後刊行の『終りの日々』等3冊のエッセイ集に、単行本未収録エッセイや書評等を収録。

    高橋和巳、高橋たか子の全作品をテーマごとに編纂する電子全集の24巻は「高橋たか子 エッセイ4」と銘打ち、没後に刊行された日記形式のエッセイ集『終りの日々』と、『高橋たか子の「日記」』に加え、自選エッセイ集『どこか或る家』より再録分を除いた14篇と、巻末エッセイを収載。
     加えて単行本未収録エッセイ22篇、書評16篇、文庫解説2篇、その他として「創作合評」や大庭みな子氏への追悼文等13篇を収録する。

    『高橋たか子の「日記」』は2002年11月22日から2004年9月30日までを綴った第一部のほか、第二部とパリ日記で構成され、2005年4月に講談社から刊行された。フランス文学に定着している「日記文学」を、「一人の人間としての自分を、その自分が生きた人生を、直視して、証言する姿」として倣い、自身の新しい表現手法として試みた意欲作。
     その続編ともいえる『終りの日々』は、2006年6月15日から2010年6月26日までの日記で、2013年7月12日に81歳で没したたか子の遺稿として、同年12月にみすず書房より刊行された“最後の作品集”である。

     高橋たか子パートの最終巻として、監修を務める鈴木晶氏が作成した年譜と「あとがき」を収録。解説と解題は、たか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。付録として、『きれいな人』で受賞した第45回毎日芸術賞の授賞式のスナップ写真を採録する。

    ※この作品はカラー写真が含まれます。
  • 戦争を冷徹な目で見つめた梅崎春生の出世作。

    「ねえ、死ぬのね。どうやって死ぬの。よう。教えてよ。どんな死に方をするの」
     米軍上陸が迫るなか、桜島の海軍通信基地に異動になった村上兵曹は、一夜をともにした女性に、そう詰められる。しかし、どういう死に方をすればいいのか、そのときになってみなければわからない。ただ、死が目前に迫っていることをひしひしと感じるだけだった。
     生きることへの執着と諦観、どうせなら美しく死にたいという願望と、それはかなわないだろうという無力感……。背反する思いを抱えたまま散歩に出た村上に、グラマンの銃弾が降り注ぐ――。
     出世作「桜島」に、戦地で自死同然に亡くなった弟の足跡を、双子の兄たちがたどっていく芸術選奨作「狂い凧」を併録。
  • 関係者のエゴイズムが交錯する傑作心理劇。

    ――今日私が申し述べました真相は、あるいは大部分が嘘であるかも知れません。嘘であるという証明も本当であるという証明も出来ないのであります。……有るものはただ外部的資料に過ぎない。私の行為、私の言葉に過ぎない。私の心にある真実は推察されるだけであります。――
     自殺幇助の疑いで裁判にかけられている雑誌編集長・神坂四郎。神坂が横領の事実を糊塗するために、梅原千代が持つダイヤを我が物にしようとし、心中を装ったとされているが、証言台に立った被告の妻、同僚女性、被告の飲み仲間らは微妙に食い違う証言をする。
     被告のさまざまな顔が明らかになると同時に、証人のエゴイズムも露わになっていく表題作のほか、戦争で人生が変わってしまった二人の女性を描く「風雪」、常識や時代にとらわれず勝手気ままに過ごしているように見えた友人の本当の想いを綴る「自由詩人」という傑作短篇2篇を収録。
  • 高橋和巳パートの最終巻。全69件、延べ179人との対談、座談を一挙に掲載。あわせて、インタビュー、講演等を収録。

    高橋和巳、高橋たか子の全作品をテーマごとに編纂する電子全集の23巻は「高橋和巳 対話、講演」と銘打ち、1962年から71年にかけて企画された対談、座談全69件を掲載。あわせて、各種インタビュー、テレビ大学講座、講演等を収録する。
    「私を支えるのは、文学であり、その文学が自己を告発する」と語り続けた和巳は、わずか10年ほどの著作活動にもかかわらず、実にさまざまな人に会い、文学創造の喜びと真実を語りあった。収録された対談相手は延べ179人に及ぶ。
    なかでも、晩年に文学仲間と立ち上げた季刊文芸誌「人間として」から、編集同人・小田実、開高健、柴田翔、真継伸彦と語り合った座談8件は興味深い。
    インタビューは全6本収録。とくに自分の生い立ちから始まる原風景を明かし、小説を書く動機を語った「私の文学を語る」(秋山駿によるインタビュー)は注目される。
    立命館大学と読売テレビの共同企画で放映されたテレビ大学講座、1963年「現代小説の課題」(全5回)、1964年「文学思想史」(全9回)、北海道大学から島根大学まで全国各地での講演15件も収録する。
    高橋和巳パートの最終巻として、監修を務める作家・太田代志朗氏が作成した年譜を掲載。解題も太田氏が担当した。付録は、交流のあった人々とのスナップや、1971年5月9日に青山斎場で行われた和巳の葬儀告別式等の写真。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 一特派員がたどり着いたベトナム戦争の真実。

     すでにAPの記者たちが打った電報のカスを、まるで残飯を恵んでもらうような調子で拝読させてもらう自分の姿が、私には全然気に入らなかった。(中略)心の中で固く決心した――彼らの世話になんかなるものか、おれはおれの情報源と判断で対等に仕事をしてみせる。(本文より)

     新聞記者として戦地に赴任した著者は、特約を結んでいるアメリカの通信社からの情報や、ベトナム政府の公式発表、米軍のブリーフィングなどを鵜呑みにするのではなく、自分の足で開拓したニュースソースや自身の臭覚などを頼りに、ベトナム戦争の“真実”に迫ろうとする。
     のちに芥川賞を受賞する作者の、原点ともいえる作品。
  • 大庭みな子との対談集『対談・性としての女』ほか、単行本未収録対談、座談、往復書簡、インタビュー等を収録。

    大庭みな子との対談集『対談・性としての女』ほか、単行本未収録対談、座談、往復書簡、インタビュー等に、カルメル会司祭との対話集『意識と存在の謎 ある宗教者との対話』を収録。
    同じ昭和一ケタ世代の女性作家として晩年まで交流が続いた作家・大庭みな子との対談集『対談・性としての女』(1979年11月、講談社刊)は、「性としての女」をテーマに4回にわたって行われた対談(1978年11月~1979年4月)をまとめた1巻で、40代後半になった二人が自らの内的体験から「女」について熱く語り合う。
    単行本未収録の座談、対談は1972年から1985年まで行われた22本を収録。遠藤周作、中村真一郎、加賀乙彦、井上光晴、大庭みな子等の作家同士による対談に加え、音楽家・武満徹との芸術創造の源泉についての対談は興味深い。
    「魂の渇望――往復書簡と対話」は埴谷雄高との特別対談として、「群像」1994年1月号に掲載された。フランスでの霊的生活を経て、神体験と芸術創造が同じ深層世界で行われていることに気づいたたか子は、“巨人”埴谷とその深遠にして広大なテーマについて語り合う。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。付録として、たか子が編集した『神の小羊についてゆく』(1994年4月、女子パウロ会刊)等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 待望の合本版!!

    舞台は三浦半島の小さな産婦人科医院。主人公の医師・野辺地貞春のもとには、不妊治療や出産、中絶と、さまざまな苦悩と不安を抱えた人がやってくる。“仮性半陰陽の男性”と診断された女性、やっと懐妊した子がダウン症と診断された夫婦、眼球なく生まれた赤児、そしてその静かな死――。
    主人公が日々直面する数々の患者の実態を描いて、人間誕生の意味とその神秘に鋭く斬り込んだ衝撃の問題作の上下合本版。
  • 待望の合本版!!

    ――財部は一種の硬骨漢であった。最後の思い出に、大臣と官房長官を向こうに廻して、断固として竹田建設を叩き落としてやろうという意慾が、彼の心のなかで静かに疼いていた――
    総理大臣の金策のため、巨大ダム建設に絡んで政界、財界、官界を巻き込んだ大掛かりな不正が画策されていた。成否の鍵を握る〈電力建設〉の総裁・財部は、汚職に手を貸すことを断固として拒否するが……。
    1960年代に起きた九頭竜川汚職事件を題材として、芥川賞作家・石川達三が鋭い視点で描いた話題作の上下合本版。
  • 待望の合本版!!

    クルマに跳ね飛ばされたらしい、ちょっと変わった青年・松平陣太郎を自宅に連れ帰った浅利圭介。失業中で妻から尻を叩かれっぱなしの圭介は、目撃したナンバープレートを手掛かりに一発逆転を狙っていた。しかし、ボーっとしていると思われた陣太郎が意外としたたかで、徳川家の末裔を名乗り、賠償金を巡る工作の主導権を握りはじめる。
    加害者として浮上したのは、公衆浴場の主人と流行作家の2名。そこに浴場同士の争いや作家の美人秘書、浴場主人の愛人らが絡んできて……。
    渥美清主演で映画化もされたユーモア小説の上下合本版。
  • 待望の合本版!!

    “第三の新人”を代表する作家・小島信夫が、文芸誌「群像」に1968年10月から1981年3月まで、全150回に亘って連載した“執念の大作”全6 巻の合本版。
    夫婦の愛、男女の愛、人間の愛のカオスを複層的、かつエネルギッシュに描き、伝統的な小説の手法を根底から粉砕した文学世界が展開される。現在と過去が交錯しながら織りなされるように展開していく「姦通」をテーマにした異色の愛憎世界!第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞。
  • 小説集「吶喊」「彷徨」を中心に代表作や講演まで翻訳した『魯迅』や、高橋の早世により一部分のみ残る「三国志」を収録。

    「阿Q正伝」「狂人日記」等の作品で名高い近代中国を代表する作家・魯迅。彼の2冊の小説集「吶喊」「彷徨」を中心に代表作や講演を翻訳した『魯迅』に、高橋の早世により一部分のみ翻訳された「三国志」も収録。
    高橋和巳が翻訳した『魯迅』は、中央公論社刊『世界の文学』シリーズの第47巻として、1967年6月に刊行された。これは魯迅の作品の中から、代表的なものを日本語に翻訳したもので、小説集「吶喊」「彷徨」に、散文詩「野草」、魯迅の幼き日々の思い出を綴った「朝花夕拾」、高橋自身が翻訳に値すると判断した56編、さらに「ノラは家出してからどうしたか」など3編について、魯迅自身が行なった講演録なども収録されている。
    加えて、詳細な魯迅の年譜とともに、魯迅の生涯を追いつつ、社会の動きに反応した彼の思想的な変遷と作品形成について記した解説文は大いに注目され、とかく「阿Q正伝」に注目があたる一般的評価に一石を投じたものとなっている。
    また、筑摩書房『世界古典文学全集』シリーズの一冊として、陳寿「三国志」の日本語訳に着手していたが、高橋の早世により、“高橋和巳翻訳版”が完成をすることはなかった。当巻では、翻訳された一部分を収録した。
    解説は、京大大学院時に「論文指導」を高橋和巳に受けた中国文学研究者・小南一郎氏が担当。付録として「三国志」の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 770(税込)
    著:
    外村繁
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    蝦夷に商圏を広げようとする近江商人の物語。

    「東の地の適する産物を、西に運び、西の地に適する産物を、東に運びますれば、それぞれの地に最も適する産業が発達致します理でございまして……ところが、この蝦夷の地と申しますは……この広大な土地が殆ど白紙のままに残されているのでございます。」
     近江商人の家に生まれた藤村与右衛門、孝兵衛の兄弟が、江戸末期、経済が混乱するなかで未来を切り拓いていく物語。
     地図に魅せられ、旅をするのが大好きな与右衛門を差し置いて、浪人の新之助らとともに蝦夷に向かった孝兵衛。アイヌの人々から歓待を受けたり、巨大なアメリカの黒船と遭遇したりしながら、商売のタネを見出そうとするが――。
     芥川賞候補作『草筏』に次ぐ、「商店もの」三部作の第2弾。
  • 1995年から2002年に刊行されたエッセイ集『境に居て』『放射する思い』『この晩年という時』に、唯一の自伝『私の通った路』を、初刊発売順に収録。

    『境に居て』は、1995年5月に講談社から刊行されたエッセイ集で「受洗の頃」と「境に居て」の2部構成。「受洗の頃」は『高橋たか子自選小説集』全4巻の巻末エッセイ4編を再録したもので、「境に居て」は19編の書き下ろし作品から構成されている。
    『放射する思い』は1997年9月に講談社から刊行され、20編の書き下ろし作品によるI、雑誌、新聞等に寄稿した6編によるII、既出の詩編によるIIIの3章建てである。
    『私の通った路』は1999年月12月に講談社から刊行された、たか子唯一の自伝で、1980年9月から1988年11月まで、パリのエルサルム会で観想生活を過ごした時代の回想記。
    『この晩年という時』は、2002年3月に講談社から刊行された4章から成るエッセイ集。31編から成るIと、IIの「ジュリアン・グリーンをめぐって」は書き下ろし作品、9編の既出エッセイによるIII、キリスト教関連の3編によるIVで構成されている。

    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。特別寄稿として、たか子に師事した近現代文学研究者・関野美穂氏による「愛し方を知りたい 高橋たか子の求道性」を収録。
    付録として、「テレーズ・デスケイルー」改訳(未完成)の生原稿等を収録する。
  • 晩唐の詩人・李商隠を論じた「詩人の運命」、「陸機の伝記とその文学」、京都大学修士論文「顔延之と謝霊運」等、中国文学者・高橋和巳が遺した中国文学評論文を一巻に収録。

    京都大学大学院文学研究科中国文学科で、魏晋南北朝文学を専攻していた高橋和巳は、作家活動の傍ら、京都大学文学部助教授等を務め、中国文学研究者として、中国古典を現代人に語ることに努めた。
    代表的な論文である、西晋時代を代表する文学者・陸機の独自の文学世界を、強い観念性に起因していると分析した「陸機の伝記とその文学」と、晩唐の詩人・李商隠を論じた「詩人の運命」は、広範な資料の収集と、資料の厳密な読みを基礎に組み立てられた、中国学の王道に則っているのと同時に、綿密な資料に基づいて書かれ、実質のつまった“小説”的な味わいのある論文である。
    陸機と同時代の潘岳を評した「潘岳論」、少し時代を下り、東晋時代の文学者・顔延之と謝霊運の生涯と作品を記述した「顔延之と謝霊運」(京都大学修士論文)等、六朝時代の美文文学に関心の中心があった高橋は、この時代を特徴づける美文作品について「美文にはそれを支える特有の文学的、さらには人生的な態度がある」として「六朝文学論」を記している。
    他に中国詩人選集15『李商隠』『王士禛』の解説文等も収録。

    解説は、京大大学院時に「論文指導」を高橋和巳に受けた中国文学研究者・小南一郎氏が担当。
    付録として「詩人の運命」等の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • エッセイ集『霊的な出発』『神の飛び火』『水そして炎』に、霊的著作『「内なる城」について思うこと』を収録。

    「高橋たか子エッセイ2」と銘打ち、1985年から1989年に刊行されたエッセイ集『霊的な出発』『神の飛び火』『水そして炎』の3巻に、霊的著作三部作のうちの『「内なる城」について思うこと』で構成する。

    『霊的な出発』は1985年1月に女子パウロ会から、たか子の4冊目のエッセイ集として刊行された。
    これまでの文学的なエッセイ集とは異なり、キリスト教雑誌「あけぼの」に連載された最初の“霊的な内容”のエッセイ集となった。
    前作から4年半ぶりとなるエッセイ集刊行の間に、たか子は渡仏し、パリでエルサレム会と出会い観想生活を送ったことが本書成立の背景にある。
    『神の飛び火』は1986年10月、『水そして炎』は1989年10月に、いずれも女子パウロ会より刊行された“霊的な内容”のエッセイ集。
    『水そして炎』の発表誌は『霊的な出発』同様に「あけぼの」だが、『神の飛び火』は「群像」等の一般誌発表の作品も収められていて、『怒りの子』までの小説家であった彼女と、以後の修道者としての彼女が混在している。

    『「内なる城」について思うこと』は、1992年9月に、自費出版書き下ろし作品として、著者・発行者/高橋たか子」「発売元・女子パウロ会」として刊行された。
    霊的著作三部作の一冊として、改革カルメル会創立者アヴィラの聖テレサの著作『内なる城』をめぐるエッセイである。

    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、『「内なる城」について思うこと』のメモ等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 1968年以降の『孤立の憂愁の中で』『わが解体』『人間にとって』などに、単行本未収録作品も加えたエッセイ・評論95編を収録。

    『孤立の憂愁の中で』(1969年2月刊)、『わが解体』(1971年3月刊)、『自立の思想』(1971年5月刊)、『人間にとって』(1971年8月刊)、『暗黒への出発』(1971年10月刊)を中心に、1968年から1971年に書かれた単行本未収録作品も含めた、エッセイ・評論等を収録した一巻。
    学術的考察から、文学・思想評論、作家論、作品論(書評)、身辺雑記のエッセイまで多種多様作品な全95編から構成される。

    『孤立の憂愁の中で』は、「直接行動の季節」「闘いの中の私」「孤立の憂愁を甘受す」「極限と日常」などで、そのタイトルが容易ならざる事態を告げる学園闘争のこと、また中国やロシアの革命のこと、作家論等が収録されている。
    『わが解体』は著者最後の書であり、「わが解体」、「死者の視野にあるもの」、「内ゲバの論理はこえられるか」等を収録。
    京大紛争に関わり、思索・苦悩する生々しいドキュメントで、母校への思想的決別の書でもある。

    その他、没後に発売された『暗黒への出発』、雑誌「波」連載の諸篇を纏めた『人間にとって』に、『自立の思想』、単行本未収録作品49編を収録。
    解説は、文芸評論家・長澤雅春氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「わが解体」等の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 1975年から1980年に刊行されたエッセイ集『魂の犬』『記憶の冥さ』『驚いた花』の3巻で構成する一巻。

    『魂の犬』は1975年4月に講談社より刊行された髙橋たか子の第1エッセイ集で、1965年6月から1975年1月までに発表されたエッセイ67編を収録。
    2部構成でIには小説論、作家論、自作解説など文学関連、IIには身辺雑記、社会時評、紀行文、芸術関連が収録されている。
    そのうち最も古いものが、たか子33歳の時に「京都大学新聞」(1965年6月28日)掲載の「アンチ・ロマンの世界」である。

    第2エッセイ集『記憶の冥さ』は、1977年1月に人文書院より刊行され、55編が収録されている。
    「あとがき」の冒頭で、「ここに収められたエッセイは昭和五十年の始めから昭和五十二年の秋までに発表されたものである。
    この期間には、私の人生の大きな出来事ともいうべき、カトリック受洗がふくまれている。
    受洗の日は、正確には、昭和五十年八月五日であった」とあり、彼女の人生の大きな転換期に発表されたものだった。

    第3エッセイ集『驚いた花』は、1980年6月に人文書院より刊行され、1977年10月から1980年6月までに発表されたエッセイ51編を収録。
    3部構成で、Iは文学、美術、音楽、IIはヨーロッパ旅行、IIIはキリスト教と社会時評と分類されている。
    本書と前2作との大きな違いは、キリスト者として、小説家としての意識の変容がくっきりと記されていることである。

    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、1979年「ヨーロッパ旅行滞在の記録」のメモと生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 武蔵野を題材にさまざまな明と暗を描く。

    「おい、日清戦争の前の年まで、今の東京都下は神奈川県だったのを知っているか。……都下という言い方、いかにも東京白人の発想だ。植民地扱いじゃないか」
    関東大震災後に郊外に移ってきたサラリーマンの子・太田久雄は、武蔵野にルーツを持つ中学時代の友人たちからそう指摘される。彼らは自らを「武蔵野インディアン」と称し、地に足がついておらず「紙とインクの世界しか知らない」都会の“白人”とは一線を画する存在だというのだ――。
     武蔵野を題材に、都会と地方、戦前と戦後、保守と革新といった、さまざまなコントラストを見事に描出した珠玉作。
  • 1967年までに書かれた『文学の責任』『孤立無援の思想』『新しき長城』、単行本未収録を加えたエッセイ・評論220編を収録。

    『文学の責任』(1963年5月刊)、『孤立無援の思想』(1966年5月刊)、『新しき長城』(1967年10月刊)を中心に、「学園新聞」(京都大学新聞社)に掲載された、最も古い作品「ハンスト学生の手記」(1952年7月1日号初出)から、1967年までに書かれた単行本未収録作品も含め、エッセイ・評論等を収録した一巻。
    学術的考察から、文学・思想評論、作家論、作品論(書評)、身辺雑記のエッセイまで多種多様作品な全220編から構成される。
    『文学の責任』は高橋の文学的出発が垣間見られる作品集で、「表現者の態度」「中国の物語詩」等の中国文学論も収録されている。
    『孤立無援の思想』は〈革命と戦争の時代〉〈文学は何をなしうるか〉〈多岐な精神領域への志向〉〈水清ければ魚棲まず〉の4部構成による高橋の代表的著作集。
    『新しき長城』は「朝日ジャーナル」誌の取材で訪問した文化大革命真っただの中国を評した表題作のほか、暗殺の史的展望を試みた600枚の大作「暗殺の哲学」等を収録している。
    また、単行本未収録作品として、たか子夫人と二人で記した貴重なエッセイ「実感的観光ニッポン」(「婦人公論」1963年6月号初出)等、貴重な作品も収録している。

    解説は、言語文学研究者・田中寛氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「文學の責任」等の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 幻のデビュー作を含む留学時代までの半生記。

    「兎の結末」は、中学二年生の〈僕〉と高校受験を控えた兄が、兎の飼育をめぐって社会の現実に直面したり、自分の才能を生かす道は何かと煩悶したりする青春小説。著者が高校一年生のときに書いた短篇小説がベースになっており、いわば芥川賞作家・柏原兵三の“幻のデビュー作”でもある。
     これに、著者の自伝的作品としては最も幼い時代を描いた「幼年時代」、西ドイツに留学した経験から書かれた「バラトン湖」「カールスパートにて」を加えて刊行された『兎の結末』と、大学院時代の奇妙な留守番生活を綴った『独身者の憂鬱』を一冊にまとめた、ファン必読の作品集。
  • 『神の海 マルグリット・マリ伝記』『ライサという名の妻に』の伝記作品と、ラジオドラマ台本3作を収録。

    「高橋たか子伝記」と銘打ち、『神の海 マルグリット・マリ伝記』『ライサという名の妻に』の書き下ろし伝記作品2作と、「夜の客」「遠いあなたへ」「不思議な縁」のラジオドラマ台本3作品で構成。
    『神の海 マルグリット・マリ伝記』(1998年10月刊)は、17世紀フランスの修道女・マルグリット・マリ・アラコックの18年に及ぶ観想修道生活を「神と魂との愛」「苦しみの生」という大きく2つの視点から描いた伝記作品。
    たか子はマルグリット・マリの神への愛を「何という苦痛に切り刻まれた熱愛か!」と記し、伝記のテーマを「苦痛」と「熱愛」こそが「神の中に隠されている生」としている。
    『ライサという名の妻に』(2008年2月刊)は、フランス人哲学者ジャック・マリタンと結婚した、ロシア生まれの亡命ユダヤ人ライサ・ウマンコフの生涯を描いた作品。
    カトリック信者の二人は、互いの存在だけでなく、神をも愛する二重の熱愛で結ばれた夫婦として、たか子にとって理想の男女だったのである。
    「夜の客」(1978年8月放送)、「遠いあなたへ」(1980年12月放送)、「不思議な縁」(1995年4月放送)の3作品は、NHK・FMのラジオドラマのために、たか子が書き下ろした台本で、たか子の受洗後20年の歩みと重なる。
    たか子はテレビドラマを嫌い、ラジオドラマを愛していたのだった。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、『ライサという名の妻に』刊行決定のメモと、初刊本書影等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 人気絶頂で引退宣言の背景に中上健次が迫る。

    「春美は普通の子と違います」
     浪曲が好きだった北村春美の母は、春美の才能を信じて“うなり”を教え込み、それによくこたえた春美は全国規模のコンクールで優勝。翌年、都はるみとしてデビューすると、「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」と毎年のようにヒットを飛ばし、当代随一の歌手に上り詰めた。
     ところが、それから20年後、都はるみは「普通のおばさんになりたい」と突然、芸能界からの引退を宣言。その背景には何があったのか――。
     都はるみ本人はもちろん、市川昭介ら関係者への丹念な取材をもとに中上健次が綴った、渾身のノンフィクション小説。
  • 処女長編『捨子物語』を中心に、初めて書いた小説「片隅から」など初期の習作短編に遺稿「三人の父」等を収録。

    3度にわたって出版された処女長編『捨子物語』を中心に、初めて書いた小説「片隅から」から、「月光」「淋しい男」「退屈に就いて―チエホフ小論」「老牛」「藪医者」「生ける朦朧」「罪」「森の王様」「子供たちに与う倨傲の歌」「コプラの歎き」「奇妙な終宴」「神よ、我れこの児を殺さむ」の初期短編13編に、未完の戯曲「不可能な三幕」、ラジオドラマ・シナリオ「詠み人知らず」、没後に雑誌「人間として」6号に収録された「国家――あるいは『幻の国』」「三人の父」を収録。
    『捨子物語』が河出書房新社から単行本として発売されたのは1968年3月である。
    その「あとがき」によれば「最初、京都大学在学中、たしか昭和二十七年、友人の小松左京、近藤龍茂らと出した同人誌に冒頭の一部を掲載し、ついで大学卒業後、多くの友人の援助によって、ごく少部数を印刷に付し、知友に配布した」と記されている。
    冒頭の一部が掲載されたのは「現代文学」第一号(1952年10月)で、自費出版したのが足立書房版(1958年6月)である。
    当巻では1952年の[初出版]、1958年の[足立書房版]、1968年の[決定版]の3種すべてを収録している。
    高橋和巳が初めて書いた小説「片隅から」は、戦時中の工場動員をテーマに描かれたもので、「京大作家集団」のガリ刷りの作品集第三号(1950年3月)に発表され、後日「あの花この花と」と改題し、「文學界」1965年9月号に掲載されている。
    解説は、文芸評論家・藤村耕治氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「捨子物語」等の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 世間を震撼させた猟奇事件に中上健次が迫る。

     海と山に囲まれた熊野の寒村。そこでひときわ広い土地を所有する池田家の長男・達男は、小さいころから悪行が絶えず、猿の肉を食べたり、神事に使う魚を獲るなどやりたい放題。それでも面と向かって文句を言う者は誰もいなかった。
     そんななか、何者かがハマチの養殖場に重油を流して地元に大損害を与える事件が発生。次いでぼや騒ぎまで起きた。だれもが達男の仕業だと考えたが――。
     実際に起きた「熊野一族7人殺害事件」をもとに、中上健次が映画シナリオを書き下ろした話題作と、のちに雑誌連載されたノベライズ版を収録。
  • 晩年の長編『きれいな人』『巡礼地に立つ』『墓の話』『過ぎ行く人たち』に、14の短編(うち7編は未発表)を収録。

    2003年から2009年にかけて発表された長編『きれいな人』『巡礼地に立つ フランスにて』『墓の話』『過ぎ行く人たち』に加え、「群像」に断続的に発表された短編6編と、それに続く未発表の短編7編等を収録した一巻。
    『きれいな人』(2003年6月刊)は、『亡命者』『君の中の見知らぬ女』に続く大河小説3部作の最終作として、フランスを舞台にしたキリスト教的テーマで描かれた歴史小説で、第45回毎日芸術賞を受賞。
    『巡礼地に立つ フランスにて』(2004年11月刊)は、『土地の力』の続編として書き下ろした「霊的著作」作品。
    『墓の話』(2006年4月刊)は、「群像」に5回にわたった発表された「短期連作という型」の長編。
    『過ぎ行く人たち』(2009年6月刊)は、1980年以後のフランス体験の集大成として、ブノワというフランス人の少年を18年間にわたって探し歩く物語で、執筆時、たか子は72歳、生前最後の著作である。
    また、単行本未収録の短編として「假の家」「遠い水、近い水」「二つの、お話」「この世の底にいて」「終りの日」「あこがれ」「空(そら・くう)」の7編と、没後に発見された手書きの未発表作品「顔」「物の力。あるいは、独身者」「庭」「メモ。あるいは思い出のごとく」「あの頃」「レミニッサンス」「或る近くて遠い迷路」の7編も併録する。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、未発表短篇7編の生原稿(一部)等を収録。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 880(税込)
    著:
    日野啓三
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    事故で記憶をなくした男の“再生”物語。

    ――見えないはずの物が見え、覚えているはずのことが消えて何が悪い? おれの記憶の中心には穴がある。それが〈現実〉というもので、掛け値なしの現実は何と異常で気味悪く透明なものだろう。――
     月面基地での作業中に事故に遭った〈男〉。帰還したものの強い逆行性健忘症になってしまい、さまざまなことが思い出せない。
    しかし、中国人看護師との会話や、放浪していたところをかくまってくれた老婆、ホームレスの老人との出会いによって徐々に記憶を取り戻していく。はたして、〈男〉にとって光とは、闇とはなんだったのか――。
     近未来を舞台に、物質文明や人間の陰陽を見事に描出した傑作長編。第47回読売文学賞受賞作。
  • 39歳で夭折した作家晩年の未完小説『黄昏の橋』『白く塗りたる墓』「もう一つの絆」に遺稿「遥かなる美の国」等を収録。

    39歳で夭折した高橋和巳晩年の小説『黄昏の橋』『白く塗りたる墓』「もう一つの絆」(いずれも未完)に加え、遺稿として「遥かなる美の国」、「清角の音」「他者の古里」等を収録する。
    『黄昏の橋』は雑誌「現代の眼」1968年10月~1970年2月にかけ連載された未完作品。
    古美術世界に沈潜する学芸員・時枝が、偶然、機動隊と学生の衝突で一人の学生が橋から転落するのを偶然目撃し、封印されそうな事件の深層に迫っていくという当時の世相を反映した作品。
    続く『白く塗りたる墓』は、開高健や柴田翔らと共同編集した、季刊「人間として」創刊号(1970年3月)に発表された。
    内容はテレビ局を舞台にした作品で、第一部完のまま、続きを描かれることがなかった最後の小説である。
    「もう一つの絆」は「群像」1967年9月号に発表され、第一部第五章まで書かれた未完作品。
    遺稿として、小説の断片である「遥かなる美の国」、「清角の音」「他者の古里」も収録。
    解説は、芥川賞作家・高城修三氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「白く塗りたる墓」「遥かなる美の国」、「清角の音」「他者の古里」の生原稿等を掲載する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 1992年から2001年にかけて発売された『土地の力』『始まりへ(小説ふう戯曲)』『亡命者』『君の中の見知らぬ女』を収録。

    1992年から2001年にかけて発売された長編『土地の力』『始まりへ(小説ふう戯曲)』『亡命者』『君の中の見知らぬ女』を収録した一巻。
    『怒りの子』(1985年9月刊)を最後に小説家をやめ観想生活に入ったたか子が、「霊的著作」と名付け、文学と明確に区別した霊的三部作の『土地の力』(1992年5月刊)と、『始まりへ(小説ふう戯曲)』(1993年4月刊)は、女子パウロ会より書き下ろしで刊行され、信仰書として「信仰を生きつつある人の証言」の書であり、神探求を実行する人の書でもある。
    ちなみに霊的三部作のもう一作はエッセイ『「内なる城」について思うこと』。
    『亡命者』は、「群像」1995年8月号に一挙掲載された作品で、『怒りの子』以来10年ぶりの小説作品。
    たか子自身をモデルとする「私」の物語と、「私」が修道院で出会った30代のキリスト者の夫婦を主人公とした「小説『亡命者』」から構成されている。
    『君の中の見知らぬ女』(2001年3月刊)は『亡命者』から6年後に刊行された書き下ろし作品である。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、未発表の戯曲「人生の終りの時」(未完)の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • ドストエフスキー作品に着想を得た『日本の悪霊』に、戦争に運命を翻弄された男を描く「堕落」「散華」等を収録。

    秘密革命組織が起こしたネチャーエフ事件を素材としたドストエフスキーの作品『悪霊』に着想を得た『日本の悪霊』。
    敗戦に運命を翻弄された男を描く「堕落」、「散華」、小編「革命の化石」を収録した一巻。

    『日本の悪霊』は、戦後革命の挫折を素材として、「文藝」1966年1月号から1968年10月号に6回にわたって記された作品。
    逃亡生活に疲れた犯罪者・村瀬は、「つまらぬ犯罪行為」で収監される。
    担当刑事の落合は村瀬に“惹きつけられた”ように過去の捜査にのめり込んでいくのだった……。
    留置場での実態を生々しく描く様は同じドストエフスキーの作品『死の家の記録」を彷彿させる。

    その他、かつて満州建国に奔走した過去を持ち、現在は混血児養育施設の園長を務める青木隆造が、その“虚しさ”から公金流用の疑いをきっかけに失踪し町を彷徨っていく作品「堕落」、電力会社の鉄塔建設予定地にある孤島に一人暮らす元右派の思想家だった中津老人の孤独な死を描く「散華」等を収録する。

    解説は、文芸評論家・立石伯氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として『日本の悪霊』「堕落」「散華」の生原稿等を収録。

    ※この作品は一部カラー写真が含まれます。
  • 米国最北端の町で繰り広げられる人間ドラマ。

    ――彼等はみんなその祖先に流れ者の血を持っているので、流れ者に対して寛容であり、理解もあった。――
     命からがらの逃避行でロシアから逃れ、中国、そしてアメリカ最北端へと流れ着いたマリヤ。マリアの飼う4頭のシベリア犬に飼い猫を殺されたにもかかわらず、友人づきあいをする日本人アヤ。そのアヤは、前夫との子を連れ日本に一時帰国するが、元夫とはやはり心を通わせることができず、親子ともどもさみしい思いを抱いてアメリカに戻る。
     アヤとも知り合いのカルロスはスペイン、中米から自作のヨットで漂着し、そのまま居着いてしまった印刷屋の主人。ある日フェリーでやってきた東洋系の女性と知り合うが、彼女もまた、韓国系の母親と日本人の父親を持つ“漂流者”の一人だった――。
     第14回女流文学賞を受賞した名作長編。
  • 1,485(税込)
    著:
    白尾悠
    レーベル: ――
    出版社: 小学館

    人生の黄昏を希望に変える温もり溢れる一冊。

     女子中学生、40代独身女性、定年退職後の男性、認知症の男性、LGBT男性、妻と姑、老優……。人生十色、生きづらさを抱え、悩み傷つきながらもそれぞれが小さな希望を掬い取って行くさまを丁寧に描く感涙小説。
    第一幕 ひろった光---同級生がいじめにより自殺。その事実に傷つきもがく少女が出逢う、隣部屋の老優。その奇妙な行動の果てには。
    第二幕 金の水に泳ぐ---真面目に頑張って生きてきた40代独身女性。求職と婚活に戸惑いながら、人生を、自分を見つめ直して得た答えは。
    第三幕 ゴールデンガールズ---定年後の男性。自分がかつてパワハラ、セクハラをしていた女性に偶然出逢うが……。痛快なラスト。
    第四幕 なつかしい夕映え---老人の家を訪れる二人の若い男。その正体は一体?そして、珠玉の思い出とは。
    第五幕 黄金色の名前---かつて女性の誰もが抱いていたつらさと葛藤を、女性ならではの目線で描ききる。
    幕間 登場人物達が織りなす、出会いと絆。
    終幕 ゴールド・ライト 老優の心に去来する悔恨に満ちた人生。そして戻らない深い愛。それでも生ききる強さ。

    人生が、歳を重ねることが愛おしくなる作品です。
  • 高橋たか子の長編『装いせよ、わが魂よ』『怒りの子』、小説集『遠く、苦難の谷を歩いている時』を収録。

    1982年から1985年にかけて発売された長編『装いせよ、わが魂よ』『怒りの子』、小説集『遠く、苦難の谷を歩いている時』の3冊に、短編「恋う」、中編「終りなき出会い」を収録。
    『装いせよ、わが魂よ』(1982年10月書き下ろし作品)は、『天の湖』『荒野』に続く、高橋たか子のカトリック受洗後3作目の長編小説で、彼女が神に直進していく霊的な予感に満ちた作品。
    一方、『怒りの子』(1985年9月書き下ろし作品)は彼女が“小説家として最後の作品”として、作品の舞台に故郷・京都を選び、京都弁によって殺人というテーマを描いたもので、第37回読売文学賞を受賞した。
    小説集『遠く、苦難の谷を歩いている時』は「甦りの家」「遠く、苦難の谷を歩いている時」「病身」の3編で構成され、うち「甦りの家」は年上の女性と美しい少年との愛の儀式を描き、「人形愛」「秘儀」とともに三部作ともいえる背徳的な小説である。
    また、短編「恋う」は第12回川端康成文学賞を受賞している。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、『装いせよ、わが魂よ』の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部、カラー写真が含まれます。
  • 880(税込)
    著:
    辻井喬
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    母の不遇な半生と実業家一家の愛憎を描く。

     柴山芳三が事業に失敗して困窮しているとき、管財人として現れ、救いの手を差しのべた小田村大介は、じつは芳三が没落するきっかけを作った人物だった。
     豪腕の実業家であり、気鋭の政治家でもあった小田村は、あるとき芳三の娘・月子を強引にさらい、自分のものにしてしまう。月子は一男一女をもうけ、愛人として空しい日々を送っていたが、短歌に生きる希望を見いだし、小田村の死後もたくましく生きていこうとするのだった――。
     作者の父・堤康次郎をモデルとした『父の肖像』と対をなす作品で、歌人でもあった作者の母・青山操とそのきょうだい、そして作者自身と思われる人物が登場する自伝的長編。
  • 自ら指揮したストの敗残者となった組合活動の指導者の“身の破滅の過程”の独白で描かれる『我が心は石にあらず』と、大阪・釜ヶ崎を背景にした自伝的な小編「我れ関りを知らず」を収録。
    『我が心は石にあらず』は、雑誌「自由」1964年12月号から1966年6月号に連載され、のち1967年に単行本が刊行された。
    主人公・信藤誠は精密機械メーカーの研究所員かつ労働組合委員長としてエリート街道を歩んでいる一方で、妻子ある身でありながら組合活動で知り合った久米洋子と不毛な愛を続けていた。
    運動が緊迫するなか、久米が妊娠したことで、怪文書が出回り“エリートの不倫スキャンダル”として信藤は窮地に追い込まれていくのであった……。
    日本の高度経済成長期に、組合活動の指導者の“身の破滅の過程”を描いた同作は、その後ラジオドラマとして、1964年12月1日にNHKラジオで放送された。その台本も併録する。
    自伝的な小編「我れ関りを知らず」は、雑誌「VIKING」第165号(1964年8月)に発表されたもの。
    解説は、文芸評論家・小林広一氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「我れ関わり知らず」の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部、カラー写真が含まれます。
  • 高橋たか子の初期作品集『彼方の水音』『骨の城』『双面』『共生空間』と、最初の長編『空の果てまで』を収録した一巻。

    1971年から1973年にかけて発売された小説集『彼方の水音』『骨の城』『双面』『共生空間』に加え、書き下ろし長編小説『空の果てまで』を収録する。
    『彼方の水音』は高橋たか子が1971年8月、39歳の時に刊行された第1小説集で、実質的な文壇デビュー作「子供さま」(1969年「群像」7月号初出)等の5編の短編を収録。
    『骨の城』は同人誌「白描」に掲載された「白夜」など、主に60年代に描かれた習作10編からなる。
    続く『双面』は表題作等3編の短編集、『共生空間』は「螺旋階段」等5編からなる短編集。
    長編『空の果てまで』(1973年2月刊)は、たか子にとって初の長編小説。
    「悪こそは 人間を超えたものが不可能な顔をのぞかせる。 
    人間の唯一の場だからかそんな情念を秘めた女の反省をこの小説で描いてみた」とたか子が述べるとおり、“人間の悪”を描き、第13回田村俊子賞を受賞した代表作の一つ。
    当時、新進気鋭の“内向の世代”の作家の一人として注目を浴びていた。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、収録した作品の単行本初刊の表紙などを掲載する。

    ※この作品は一部、カラー写真が含まれます。
  • 高橋和巳が自身の青春の総括として、学生運動で傷ついた世代の10年後の「生」を辿った長編『憂鬱なる党派』等で構成する一巻。

    学生運動で傷ついた世代の10年後の「生」を辿った長編『憂鬱なる党派』と、自身が育った地域(貧民街)を舞台にした“高橋和巳文学の原景”を鮮烈に描いた短編「貧者の舞い」を収録した一巻。
    『憂鬱なる党派』は出世作『悲の器』より早く、雑誌「VIKING」108号(1959年8月)から連載開始されるも、122号(1960年10月)に第七章(一)まで11回分連載された後中断、丸5年放置された後、1965年11月に完全版として全十六章建てで単行本として発売となった。
    この長編は、高橋自身が属した「京大文芸同好会」(後に「京大青年作家集団」)での体験が下地となって記されている。
    主人公・西村と同様に、高橋自身も無期停学処分を受けた学友のために処分撤回のハンストに参加しており、まさに自身の青春の総括ともいえる作品。
    当巻では、『憂鬱なる党派』の完全版はもちろん、連載中断となった「VIKING」連載の初出版も併録する。
    「貧者の舞い」は「世界」1964年12月号に初出掲載された短編。その小説の原型が、1955年の「文學界」新人賞に応募したものだといわれている。
    同年の新人賞は後の芥川賞作品『太陽の季節』(石原慎太郎)だった。
    解説は、文芸評論家・黒古一夫氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。付録として『憂鬱なる党派』の生原稿等を収録する。

    ※この作品は一部カラーが含まれます。
  • 高橋たか子の人気作品集『人形愛』や長編『天の湖』『荒野』、小説集『怪しみ』、掌編「鏡狂」を収録。

    1977年から1981年にかけて発売された小説集『人形愛』『怪しみ』と、長編『天の湖』『荒野』、さらに『山本美智代オフセット版画集2 銀鏡』(1976年9月刊)に収録された掌編「鏡狂」を収録した一巻。
    『人形愛は』は1978年に発売された小説集で、「人形愛」「秘儀」「見知らぬ山」「結晶体」の4編からなる。
    うち「人形愛」は、たか子が傾倒していた三島由紀夫作品の影響を受け、背徳思想と美意識が結びつき“女が犯す悪”を描いた作品として人気の高い一編。
    長編『天の湖』(1977年12月刊)はカトリック受洗後初の作品として、内なるカトリック的主題が深く追求されており、『荒野』(1980年3月刊)は聖書の読み「あらの」と読ませるように『天の湖』の世界を深化させた神探求のための作品。
    さらに小説集『怪しみ』(1981年3月刊)は「怪しみ」「招き」「顕われ」「誘い」の4編から構成されている。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、収録した単行本初刊の表紙画像を収録する。

    ※この作品はカラーが含まれます。
  • 770(税込)
    著:
    外村繁
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    商家の主人とその義子、弟らとの葛藤を描く。

    「晋! お前のお父つあんやぞ。お前のお父つあんが、美代に子産ませよつたんやぞ。」
     あまり家業に熱心ではない近江商人の主人・藤村治右衛門と、正反対な性格の弟・真吾、そして、治右衛門の義子・晋。真吾が密かに心を寄せ、晋の母親がわりを務めていた女子衆の一人・美代が、治右衛門の子を死産し精神を病んでしまう。やがて真吾に結婚話が持ち上がったとき、断固として首を縦に振らない裏には、美代の一件によるわだかまりがあった――。
     商家に生まれた著者が、その体験から描く「商店もの」3部作の第1作にして、第1回芥川賞の候補にもなった名作。
  • 高橋和巳の文壇デビュー作『悲の器』(第1回文藝賞受賞)を中心に、妻たか子が和巳死後に記した2冊の回想記からなる一巻。

    高橋和巳の文壇デビュー作『悲の器』と「飛翔」に加え、妻たか子が記した回想記『高橋和巳の思い出』『高橋和巳という人――二十五年の後に』の2冊を収録。
    『悲の器』は1962年、河出書房新社主催の第1回文学新人賞「文藝」の長編部門受賞作として、高橋和巳の名を文壇に轟かすこととなる記念碑的な書き下ろし作品。法曹界の権威で官学系大学教授の正木典膳は、神経を病んだ妻をもつ中、やがて家政婦と関係を持つ。しかし妻の死後、彼は知人の令嬢と婚約し、家政婦から婚約不履行で告訴される……。
    理性と愛の相剋のもとに破滅していく戦後知識人の苦悩と葛藤が描かれた長編である。
    一方、「飛翔」は「芸術生活」1964年4月号に発表された小品。
    また、“奇蹟の夫婦”電子全集の特性に順じ、妻たか子が和巳没後に記した回想記2冊を併録。
    2冊の間に20年のブランクがあり、その味わいの変化にも注目したい。
    解説は、文芸評論家・井口時男氏。解題は和己巻の監修者も務める作家・太田代志朗氏が担当。付録として「悲の器」の生原稿等を収録する。
  • 715(税込)
    著:
    阿部知二
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    映画化もされた戦前のベストセラー作品。

    「私にとっては、霧島家の貧寒で乱雑な空気だけが身を置くべき場所となっていた。泥水の中でなければ落ちついて棲むことのできないある種の魚たちのように……」
     大学生の〈私〉は、学校にも学友ともなじめず、下宿していた叔父一家ともしっくりいかずに、貸間と貼り紙のあった霧島家の6畳間を借りることになった。
     ところがその主人・嘉門は自分勝手な暴れ者で、幼いふたりの子を抱えたクリスチャンの妻・まつ子を泣かせてばかり。しかし〈私〉はなぜか嘉門を嫌いになれず――。
     原節子出演で映画化もされたベストセラー作品。
     旧制高校の同窓会を通じて、戦後の現実をシニカルに描いた「アルト・ハイデルベルヒ」を併録。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    芥川龍之介の代表的な名文を音読しよう!

    音読に適した日本の文学作品を、総ルビ大活字で、しかも安価に提供する音読用テキストシリーズ。今回は『羅生門』『鼻』『蜜柑』『杜子春』『魔術』『地獄変』ほか、芥川の名文をじっくり音読で楽しめます。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    漢字の美しさ、楽しさを音読破で感じよう。

    ことばを身体全体で楽しみ、脳が活性化する音読。日本語の至宝ともいうべき文学作品を音読しながら読破する音読破の第四弾です。「山月記」ほか、中島敦の小説三作品を、総ルビつき本文で音読破をお楽しみください。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    日本語で書かれた名作を音読で読破しよう!

    ことばを身体全体で楽しみ、脳が活性化する音読。日本語の至宝ともいうべき文学作品を音読しながら読破する音読破の第三弾です。「銀河鉄道の夜」ほか、宮沢賢治の童話四作品を、音読破でお楽しみください。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    幸田露伴の永遠の名作を音読で読破しよう!

    ことばを身体全体で楽しみ、脳が活性化する音読。日本語の至宝ともいうべき文学作品を音読しながら読破する音読破の第四弾です。江戸の職人の気風、言葉と行動をみごとな文体で描く作品を音読破でお楽しみください。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    音読して読破するための、日本語テキスト!

    ことばを身体全体で楽しみ、脳が活性化する音読。まとまった文学作品をまるまる、「音読しながら読破」する活動を「音読破」と呼びます。総ルビ付き大活字の夏目漱石『坊っちゃん』を、音読でお楽しみください。
  • 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

    日本語で書かれた名作を音読で読破しよう!

    ことばを身体全体で楽しみ、脳が活性化する音読。日本の至宝ともいえる文学作品を、音読しながら読破する音読破の第二弾です。「走れメロス」ほか、太宰治の名作四作品を音読破でお楽しみください。
  • 高橋たか子の代表作『誘惑者』『ロンリー・ウーマン』ほか、『失われた絵』『没落風景』『華やぐ日』の計5タイトルを収録。

    1974年から77年にかけて記された小説集『失われた絵』『華やぐ日』、長編『誘惑者』『没落風景』、連作長編『ロンリー・ウーマン』の小説5タイトルを収録。
    『誘惑者』は1976年に本格的な書き下ろし単行本として発表された長編作品で、たか子初期の代表作の一つ。
    昭和初期に起こった女学生の三原山での自殺幇助事件に着想を得て、小説の舞台を昭和25年の京都とし、「死とは何かの追及」をテーマに、同年、第4回泉鏡花文学賞を受賞した。
    『ロンリー・ウーマン』は、5篇の短篇連作による小説集(1977年6月刊)。
    それぞれ独立した物語ながらも、ある作品で主人公だった人物が他の作品では脇役で登場するなど連鎖的構成をとった実験的な作品で、同年に第16回女流文学賞を受賞。
    さらに、小説集『失われた絵』(1974年2月刊)、長編『没落風景』(1974年4月刊)、小説集『葉やぐ日』(1975年7月刊)を収録する。
    解説と解題は、生前のたか子と交流のあった文芸評論家・山内由紀人氏が担当。
    付録として、1977年2月にNHK・ラジオ第一放送「文芸劇場」にて放送されたラジオドラマ『誘惑者』(板谷全子脚色)のシナリオなど、貴重な資料も収録されている。
  • 高橋和巳の代表作ともいえる宗教団体の破滅を描いた一大長編『邪宗門』を中心に、未完作「古風」を併録した一巻。

    高橋和巳の代表作ともいえる一大長編『邪宗門』。
    序章+3部構成の体裁をとる物語は、「ひのもと救霊会」なる宗教団体が昭和初期に治安維持法違反や不敬罪といった罪科に問われることで、国体論的国家権力によって徹底的に弾圧され、壊滅の危機に迫られるも、戦後、新たなる世の到来とともに、信徒それぞれが希望と復讐の念を交錯させつつ再起、再興を志しながらも、今度は駐留軍によって弾圧され解体していく宗教団体の破滅までのさまを描いた作品。
    当巻では、決定版ともいえる単行本に加え、「朝日ジャーナル」1965年1月3日号~1966年5月29日号まで全74回にわたり連載された初出版も完全併録。
    決定版では改稿に加え、特に第3章で、大幅な増補が施されていることも確認できる。
    また、併録した未完作「古風」は1957年3月から1958年8月まで、同人雑誌「対話」第一、二、三号に発表され、壮大な構想にもとづく長編小説として書かれたが、中断したまま、未完となった作品で、和巳最後の小説『黄昏の橋』に受け継がれる作品といえる。

    解説は、和巳と同じ京都大学文学部卒で関西学院大学文学部教授・橋本安央氏(『高橋和巳 棄子の風景』を執筆)が務め、解題は和己巻の監修を務める作家・太田代志朗氏が担当。
    付録として「邪宗門」「古風」の生原稿等も収録する。
  • 希代の詐話師が2軒の浴場をきりきり舞いに。

     クルマに当て逃げされた自称“松平”陣太郎は、その犯人を捜す過程で三吉湯の主人・猿沢三吉には大学生の愛人がおり、小説家・加納明治が当て逃げ犯だったことを知る。一方、三吉湯に押され、捲土重来を期す泉湯の長男と三吉湯の長女は恋仲だった。
     こうした人間関係を利用し、巧みな弁舌で脅したり焚きつけたりして利益を得ていた陣太郎を、当て逃げの現場を目撃した浅利圭介は「君がそこらをうろちょろすると、その度に、そこらに波紋がおこって、あぶなくて仕様がない。まるで君は春先のつむじ風みたいだ」と評する。
     はたして、三吉湯と泉湯の争いの行方は? 陣太郎の正体は? 名作ユーモア小説の完結編。
  • 金の亡者たちの滑稽な争いを描いた傑作。

     クルマに跳ね飛ばされたらしい、ちょっと変わった青年・松平陣太郎を自宅に連れ帰った浅利圭介。失業中で妻から尻を叩かれっぱなしの圭介は、目撃したナンバープレートを手掛かりに一発逆転を狙っていた。しかし、ボーっとしていると思われた陣太郎が意外としたたかで、徳川家の末裔を名乗り、賠償金を巡る工作の主導権を握りはじめる。
     加害者として浮上したのは、公衆浴場の主人と流行作家の2名。そこに浴場同士の争いや作家の美人秘書、浴場主人の愛人らが絡んできて……。
     渥美清主演で映画化もされたユーモア小説の前編。
  • 政財界を巻き込む疑獄事件の真相を暴けるか。

     総理官邸と電力開発会社、建設会社が描いた巨大ダム建設をめぐる錬金の仕組みは、入札時にリーズナブルな額を提示した業者を失格させることで完成。突出して高い額で入札した竹田建設が請け負うことになった。その結果、官邸には巨額のカネが献金という名目で還流し、関係者らは歓喜の声を上げたが、突然総理が病に倒れてしまい、歯車は逆回転を始める。
     無頼派の国会議員・神谷直吉は、政財界の裏情報を握る石原参吉、政治新聞社の古垣常太郎の協力を得て、国会の場で不正を暴こうとするが……。
     実際の事件を題材として社会派作家・石川達三が描いた名作の完結編。
  • 715(税込)
    著:
    芹沢光治良
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    病を機に主人公は人生の針路を大きく変える。

    「歓喜をともなわない仕事をして、どんな仕事ができよう……いつはてるか知れない命のある間、生命を歓喜にもやすような仕事をしたい」
     日本での役所勤めを辞め、パリの大学で社会科学の研究にいそしんでいた〈私〉。指導教官にも恵まれ、帰国するまでに学位を取得できるはずだった。ところが、結核に感染していることがわかり、療養生活を送ることに。気分を萎えさせる言動を繰り返す妻、一進一退を繰り返す病状に、〈私〉は重大な決心をする……。
    「離愁」「故国」と続く三部作の第一作。
  • 実際に起きた疑獄事件に、社会派作家が迫る。

    財部は一種の硬骨漢であった。最後の思い出に、大臣と官房長官を向こうに廻して、断固として竹田建設を叩き落としてやろうという意慾が、彼の心のなかで静かに疼いていた……。
     総理大臣の金策のため、巨大ダム建設に絡んで政界、財界、官界を巻き込んだ大掛かりな不正が画策されていた。成否の鍵を握る〈電力建設〉の総裁・財部は、汚職に手を貸すことを断固として拒否するが……。
     1960年代に起きた九頭竜川汚職事件を題材として、芥川賞作家・石川達三が鋭い視点で描いた話題作の前編。
  • 715(税込)
    著:
    中村真一郎
    レーベル: P+D BOOKS
    出版社: 小学館

    喪われた時を取り戻そうとする二人の男たち。

    太平洋戦争を示唆したと思われる「戦慄すべき時期」「精神の衝撃」のために、青年期の記憶をほとんど失ってしまった主人公の〈私〉。そして、定年間際の銀行マンで、流されゆく人生に疑問を抱いてしまった〈私〉の学生時代の友人〈K〉。
    50代になったふたりが、30数年前に輝くようなひと夏を過ごした高原の避暑地を再び訪れ、青春時代の記憶を辿って歩く。短くとも濃密な旅を終えたふたりに宿った思いとは――。
    『夏』『秋』『冬』と続く4部作の第1作目にして著者の代表作。作家・加賀乙彦氏の解説を再録。
  • 実在の小説家たちを巻き込んだ混沌の結末。

    前巻で、主人公・前田永造と『別れる理由』の作者が電話で延々と語り合うシーンが描かれたかと思えば、場面は急に作者が出席したパーティ会場に移る。そこには永造のほか、藤枝静男、柄谷行人、大庭みな子といった実在する小説家、評論家たちがおり、愛と性、文学、哲学などについてのとりとめもない会話が展開される。

    挙げ句、連載されていた雑誌「群像」の編集長が作者に話を早く進めるよう促すなか、「『月山』の作者」という人物(森敦)が登場し、物語はいよいよクライマックスへ――。

    第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞した小島信夫“執念の大作”最終刊。
  • 運命に翻弄される占領下の日本人たち。

    1945年8月、広島と長崎に原爆が投下され、その直後に迎えた敗戦。GHQ占領下の卑屈な統治時代を、市井の人たちがどのように生き抜いたのか、ある海軍中将一家の目線で描く。

    未亡人となり家財総てを失った中将夫人、米軍人に求婚される長女、原爆被害で恋人と離ればなれになってしまった長男、その長男を想いながらも米兵に身をゆだねてしまう恋人……。

    戦勝国・アメリカを呪いながら、その助けなしには生きていけない日本人の哀切と、それでも新時代に向けて歩みを始める強さを、心の奥底を揺さぶる独特な筆致で綴った秀作。
  • 台南を舞台にした表題作等、珠玉の短編5編。

    明治、大正、昭和の3つの時代にわたって、詩歌や小説、文芸評論など幅広い分野で足跡を残した佐藤春夫の、珠玉の小説アンソロジー。
    表題の『女誡扇綺譚』は、日本時代の台南を舞台に、鄙びた町の姿や、没落豪族の娘の霊との出会いを描いた作品で、作者自ら「五指に入るであろう」と評した幻想的な傑作。
    改稿を重ねた渾身の一作『田園の憂鬱』は、田舎に移り住んだものの周囲と溶け込めず、次第に病んでいく文学志望の青年を描く。
    他に処女作品『西班牙犬の家』のほか、『のんしゃらん記録』『美しき町』を収録。
    『大正幻影』で佐藤春夫を掘り下げた評論家の川本三郎氏が解説。
  • ついに作者が登場し、主人公と哲学問答。

    前巻で描かれた、アキレスとアキレスの馬による「トロイ戦争の原因」に関する考察は本巻でも延々と続き、一向に出口が見えない。

    と、そこに白い馬が現れ、ようやく物語は動き出す――かと思いきや、突然「作者特別回」が始まり、『別れる理由』という小説そのものについての考察がなされる。

    しかし、主人公・前田永造が作者に「ねえ、小説家」と電話で語りかけ哲学問答を始めるなど、物語は再び混沌の世界に――。

    文芸誌「群像」に150回にわたって連載された、小島信夫“執念の大作”の第5巻。当巻には第101話から第125話までを収録。
  • 新五千円札「津田梅子」の傑作評伝。

    日本の女子教育の近代化に生涯を捧げ、新五千円札の肖像画にも選定された津田梅子。
    ある日、梅子が創設した津田塾大学(女子英学塾)の倉庫から、おびただしい数の手紙が発見される。それは梅子と、留学先の里親アデリン・ランマンとの往復書簡の束であった。
    完全にアメリカナイズされた梅子と日本文化とのギャップ、開明的な政治家・伊藤博文一家との交流、女子教育にかける熱意などが生々しく記された手紙の真意を、同じく津田塾大学出身の著者が自らの渡米経験も踏まえて読み解いていく。
    第42回読売文学賞(評論・伝記賞)を受賞した傑作評伝。

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