『時代小説、小学館文庫、1年以内(文芸・小説、実用)』の電子書籍一覧
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土下座は屈辱にあらず、悪を斬る正義の剣だ!
廻り方同心・小野寺重吾は、ただならぬものを見てしまった。
昼下がりの北町奉行所で土下座をする、牧野駿河守成綱の姿だった。
土下座相手は三十代半ばの侍で、身なりからしてどこぞの用人あたりであろう。
歳といい、武士としての格といい、奉行よりうんと下のはず。
しかし、重吾は、
(……なんと、きれいな土下座であろうか)
風で桜の舞い散る中、奉行の姿に見惚れていた。
まるで茶道の名人か、あるいは剣の達人のする謝罪ではないか、と――。
小悪を剣で斬る同心、大悪を土下座で斬る奉行の二人組が、江戸城内の派閥争いがからむ難事件「かんのん盗事件」「竹五郎河童事件」に挑む!
そして、いま土下座の奥義が明かされる!!
小野寺重吾……北町奉行所の廻り方同心。あだ名は「しゅうとめ重吾」。
牧野駿河守成綱……北町奉行。江戸城内で「どげざ駿河」と呼ばれる。
八重……重吾の妹。「黙っていれば小町」と囁かれるほどの美形。
遠山左衛門尉景元……南町奉行。人呼んで「いれずみ金四郎」。
財前孝三郎……南町奉行所の廻り方同心。周りは「花がら孝三郎」と呼ぶ。
夜目鴉の菊……関八州を股にかけた大盗賊。 -
時代小説界最後にして最強の新人!
主人公・秋月六平太は、かつて信州・十河藩の供番(籠を守るボディーガード)を務めていたが、家中の権力闘争に巻き込まれゆえあって浪人となった。いまは裕福な商家の子女の芝居見物や行楽の付添い屋(これもボディガード)で身を立てている。
血のつながらない妹の佐和は、六平太の再士官を夢見て、浅草元鳥越の自宅を守りながら、裁縫で家計を支えているが、本人にその気はない。相惚れの髪結い・おりき、音羽界隈を取り仕切る毘沙門一家の菊次とともに、浮き草な日々を過ごしながら、付添稼業を続ける日々だ。
その六平太のまわりには、幸せになりきれないが、一生懸命生きている人たちの悩み事が今日も迷い込むのだった。妹・佐和の祝言までを描くシリーズ第一弾。「雨祝い」、「初浴衣」、表題作「留め女」、「祝言」の四話を収録。人情話ここにあり! -
無宿者と寂れた旅籠。奮闘の再出立物語!
やくざ者の下働きをして暮らす無宿者の直次は、ある日、賭場検めに現れた捕り方を誤って傷つけてしまう。もう、江戸にすら居場所はない……自らも重傷を負い朦朧としながら逃げてきた中仙道で、直次は追剥に襲われていた娘の危機を救う。
気を失った直次が目覚めると、そこは助けた娘・お路の両親が営む板橋宿の旅籠松丸屋だった。主人のお人好しが災いし、借金も抱える今にも潰れそうな松丸屋だが、その上、近頃は徒党を組んだ追剥が出没し、板橋宿全体が寂れ始めていると言う。
怪我の完治までせいぜい利用してやろうと決めた直次だが、穿鑿もせず受け入れてくれる松丸屋の居心地を、悪くないと感じ始める。提灯屋の若旦那・定之助をはじめ、余所者の直次を警戒する者も多いが、その働きぶりに少しずつ直次を認める住人も出て来た。
そんな折、いよいよ追剥被害が頻発。なぜ、板橋宿近辺ばかりが狙われるのか。直次は「最後の恩返し」として、道中奉行の命を受けた江戸四宿見廻り役・恩間満之助と共に解決に乗り出す。
全てを失った無宿者が旅籠を盛り立て、帰る場所を作ってゆく、奮闘の再生物語。
(解説・理流) -
からっけつの旗本が陰謀を暴き、巨悪を両断!
血筋はよくて二枚目で、剣も冴えわたるが、美しい娘子にはつい浮かれてしまう内藤三左衛門、二十三歳。
一見すると極楽とんぼだが、役に就かない旗本の当主だけに、懐はいつもからっけつ。
屋敷の庭に建てた道場を賭場にして、密かに寺銭を稼いではいるが、金に厳しい祖父の次郎右衛門に取り上げられて、今日も飲まず食わず。
しかも、内藤家の小者なのに、みずから用人を任じてはばからない嘉平にさえ、侮られる始末だ。
仕方なく喧嘩の仲裁で日銭を稼ぎ、なんとか食いつないではいるものの、腹が減っては目を回す「平穏な」日々を送っている。
ところがある晩、次郎右衛門にこき使われている博徒の親分・伝蔵の警固中、「妙な」辻斬りに出くわした。
大川橋の上で四人に囲まれたのだ。
得意の剣で切り抜けたはいいが、それがどうやら運の尽きだったらしい。
下は南町奉行所の定町廻り同心・大塚右門、上は白河藩主で老中首座の松平越中守定信を巻き込んでの、公儀を揺るがす大きな謀略に挑む羽目になり……。
温かくて胸のすく、痛快長編時代小説! -
消えた岡っ引きの父と、溺れ骸を結ぶ謎の器。
おまきは岡っ引きの父・利助を探していた。
火付けの下手人を追ったまま、行方知れずになっていたのだ。
手がかりは父が遺した、漆が塗られた謎の容れ物の蓋だけ――。
いったいどんな容れ物なのか? そして身はどこにあるのか?
おまきは材木問屋の息子・亀吉、目の見えない少年・要の力を借りるが、なかなかもつれた糸は解けない。
そんなある日、大川に揚がった亡骸の袂から漆塗りの容れ物が見つかったと臨時廻り同心の飯倉から報せが入る。
しかし、なぜか蓋と身が取り違えられているという。
後に、父の遺した蓋と亡骸が遺した容れ物は一対だったと判るが……。
父は生きているのか、亡骸との繋がりは? 容れ物は誰のものなのか?
おまきたちは、新しい手がかりをもとに下手人を探すべく、江戸の町を奔走する!
虚を突く真相に落涙する、第一回警察小説新人賞受賞作。
※この作品は単行本版『恩送り 泥濘の十手』として配信されていた作品の文庫本版です。 -
竹中半兵衛と木下藤吉郎を唸らせた遠慮深謀。
時は戦国時代。
不破与三郎は、美濃国主・斎藤龍興に仕える西美濃四人衆のひとり、不破光治の弟だ。ある日、身の覚えのない百姓一家皆殺しの濡れ衣を着せられ、捕縛されてしまう。不破家にとって、貧しい地侍の娘を母に持つ与三郎は家督相続に邪魔な存在なのだ。あやうく斬首されかけられるも、立会人として同座していた菩提山城主・竹中半兵衛の助けを得、真犯人探しを許される。
しかし、与えられた余裕は三日間。
与三郎は身の潔白を証明するため奔走するが、殺しを解く鍵を次々に封じ込められ、ついに八方塞がりに。脱走を図るも絶望する与三郎の前に、謎の男・木下藤吉郎が現れて……。
青雲の志を抱く若武者を描いた、文庫書き下ろし戦国小説。 -
直木賞作家の珠玉にして衝撃のデビュー作!
旗本の息子だが、ゆえあって家を出て町に暮らし、歌舞伎・森田座の笛方見習いをしている遠山金四郎は、朝帰りの日本堤田んぼで、女の骸を見つけた。
花魁の雛菊が斬り殺されていたのだ。
昨夜、狂歌師にして、戯作者でもある大田南畝の御伴で吉原遊廓で戯れた折、金四郎の隣に座っていた稲本屋の女だ。
胸の靄が晴れぬ中、興行の手伝いに戻る金四郎だったが、急に遠国に派遣されていたはずの父・景晋に呼び出され、素行を糺される。
景晋と旧知の間柄で、金四郎を心配して顔を見せた南畝の咄嗟の機転で難を逃れるも、なぜか雛菊の下手人探しをする羽目に――。
雛菊に妙な縁がある、森田座の役者絵を手掛ける浮世絵師・歌川国貞とともに、事の真相を探り始める金四郎。
調べるうちに、雛菊は座敷に出るたびに相手の男へ心中を持ちかけていたことが知れる。
一体何が雛菊を死へ向かわせたのか?
心中を望む事情を解き明かしたはいいが、重荷を背負った金四郎は……。
直木賞作家の珠玉にして、衝撃のデビュー作。 -
第六天魔王・信長の首、頂戴つかまつる!
元亀元年(一五七〇)六月二十八日(新暦七月三十日)、浅井・朝倉勢と織田・徳川勢が激突した姉川の合戦が、弓の名人・与一郎の初陣だった。父・遠藤喜右衛門が壮絶な戦死をしてから三年、家督を継いだ与一郎と、郎党の大男・武原弁造は、主君・浅井長政率いる四百の兵とともに巨大な山城・小谷城の小丸に籠っていた。まさに風前の灯だった。長政には、信長の妹で正室の於市との間に、五歳の長女・茶々以下三人の女子があり、於市ら四人を織田方に投降させるという。だが、十歳の万福丸と乳飲み子の万寿丸は、信長とは血の繋がりがない。信長は決して男児を許すまい。万福丸を連れて落ち延びよ。主命とはいえ、浅井家が果てようという時に、自分一人生き残るなど、与一郎には、及びもつかない。だが、死にゆく主人から嫡男を託されて、古風も美意識も矜持も吹き飛んだ。浅井家再興がなるまで守り抜く。与五郎と改名させた万福丸を弟に仕立てて、小谷城脱出を決行する与一郎。供は、元山賊の頭目・武原弁造ただ一人。天正元年(一五七三)旧暦八月二十八日未明、三人は敦賀を目指して出立した。 -
明治歌舞伎青春譚、ここに開幕!
全国を回り旅芝居を続ける傍流歌舞伎一座「花房座」。座頭の長女である百多は亡き母に代わり裏方の仕事を一手に担い花房座を陰から支えていた。
百多の頑張りもあり、一座の評判は上々。ついに東京の大きな芝居小屋での興行が決まった。
しかしそんな中、人気の若女形である弟の千多が失踪してしまう。千多なしで次の興行は成り立たない。急遽、百多が弟に化け舞台に立つことになるが、運悪く衣裳屋の職人・暁に正体が露見してしまい――。
女形の「女」と針子の「男」。一座と衣裳屋の危機を救うため、秘密を共有した二人が大舞台に挑む。明治歌舞伎青春譚、ここに開幕! -
育ちがいいお嬢様には、秘密があったのです。
日本橋にある将軍家御用達の扇店・善喜堂の娘である千秋は、方々の大店から「是非うちの嫁に……」と声がかかるほどの人気者。
ただ、どんな良縁が持ち込まれても、どこか物足りなさを感じ首を縦には振らなかった。
そんなある日、千秋は常磐津の師匠の家に向かう道中で、八丁堀同心である芦川柳之助と出会い、その凛々しさに一目惚れをしてしまう。
こうして心の底から恋うる相手にようやく出会えたのだったが、千秋には柳之助に絶対に言えない、ある秘密があり――。
「取次屋栄三」「居酒屋お夏」の大人気作家が描く、涙あり笑いありの新たな夫婦捕物帳、開幕! -
戦国武将は歴史を動かす碁石に過ぎぬのか?
囲碁名人・本因坊算砂の息が止まりかけた。
「信長公の首級は何処にある」
大御所・徳川家康のたった一言で、「炎の記憶」を呼び覚まされた算砂は沈黙せざるを得なくなった。
大坂の陣が勃発する七年ほど前、慶長十二年師走、駿府城で対局中の出来事だった。
日海と名乗っていた若かりし頃の算砂は、戦国の時流に弄ばれ、本能寺の変の渦中に放り込まれていたのだ。
行方知れずの織田信長の亡骸、底知れぬ明智光秀の本意、茶会や連歌の会、安土築城などの不気味な闇。
武将の松永久秀・荒木村重・佐久間信盛・斎藤利三ら、五摂家筆頭・近衛前久、連歌師・里村紹巴、堺商人・小西隆佐、雑賀衆・鈴木孫一と善住房、薬師・曲直瀬道三、神主・吉田兼和、宣教師・オルガンティーノたちは、天下布武という棋譜の碁石に過ぎないのか?
若き法華僧の名棋士が、戦国人の傍らで見た歴史を描く、刮目の長編歴史小説。
本能寺の変の真相を読み解く!
※この作品は単行本版『絶局 本能寺異聞』として配信されていた作品を改題した文庫本版です。 -
直木賞作家による、落語「人情小説」集!
●子別れ
腕の良い大工だが呑兵衛の熊五郎。呑み過ぎないよう妻のおとくに釘を刺されていたが、棟梁に前借りした50万円を、遊郭ですべて溶かしてしまった。愛想をつかしたおとくは、一粒種の亀吉を連れて出て行ってしまう。
●景清
腕のいい鏨彫り物師だった定次郎は、目の病を患い、わずか半年で失明してしまった。かつての仕事への未練を捨てられず、目の病に御利益があるという赤坂の圓通寺の日朝さまに、願掛け参りを始める。
●後家殺し
刃物研ぎ宿「研ぎ常」の親方である常吉の強みは、声の良さにある。義太夫の師匠中堀十元に、熱心に稽古をつけてもらっていた。天保三年六月、常吉は運命の女に出会う。
●火事息子
蔵前天王町の大身札差・伊勢屋四郎左衛門は、従弟で質屋を営む伊勢屋藤右衛門の息子・藤三郎を溺愛していた。火消しに憧れる藤三郎のために、四郎左衛門は火の見やぐらを建設し、半鐘番に就けるよう根回しをした。
●柳田格之進
彦根藩納戸役を免職となった柳田格之進は、浅草馬道の碁会所で質屋、万屋源兵衛と対局し意気投合する。対局はその後、万屋の離れにて行われることになり、二人の関係は、八月の十五夜まで盤石だった。
※この作品は単行本版『後家殺し』として配信されていた作品の文庫本版です。 -
「北海道の名付け親」の生涯を描く傑作小説。
明治十六年、絵師の河鍋暁斎を訪ねた松浦武四郎は、その娘・豊の問いに応じて自らを語り始める…。
武四郎は文化十五年、伊勢国に生まれた。竹川竹齋から〈神足歩行術〉を学び、地図や道中記を見て各地を旅したいという夢を抱く。十六歳で家出して江戸に行ったことを手始めに、全国を旅するようになった。その後、蝦夷地で頻繁にロシア船が出没していることを知り、都合六回に亘る蝦夷地の探検を行った。アイヌの人々と親しく交わり、大自然に寄り添った生き方に敬意を感じていた。なかでも、ソンという子どものアイヌを可愛がり、別れた後もその消息を確かめ合うことになる。江戸に戻った武四郎は様々な記録や報告書を作成し、和人によるアイヌへの搾取の実態と救済を訴え、九千八百ものアイヌの地名を記した地図を作成した。蝦夷地通としても、吉田松陰や坂本龍馬にも助言をした。そして、北海道の名前の制定に関わる。
幼い頃から好きだった古物蒐集家としても知られるようになった。晩年には、率先してユニークな墓や棺を用意するという終活の達人でもあった。
並外れた行動力と収集癖、膨大な執筆物で多くの人を魅了した人物を描いた伝記小説。
※この作品は単行本版『がいなもん 松浦武四郎一代』として配信されていた作品の文庫本版です。 -
殿さま出奔!頼みは秘剣“滝止”と博打!?
尾張徳川家の北隣、美濃北山三万石のあるじ百目鬼一郎太の楽しみは月に一度の賭場通いだ。九歳のみぎり、江戸下屋敷の中間部屋で博打を見聞して以来二十年、負けたことがない。どういう天の配剤か、賽の目が事前に脳裏に浮かぶのだ。もっとも、一郎太には別の目論見もあった。密かに城下に遊べば、民百姓の本音が聞けるからだ。北山藩は特産の寒天が藩の財政を底上げして、実収十万石。だが、年貢は依然として六公四民で、藩は百姓の犠牲の上に胡坐をかいていた。そこで一郎太が百年の計として打ち出した年貢半減令だったが、これが大きな災厄をもたらすことになる。ある晩、秘密の抜け穴を通り、城下外れの賭場に現れた一郎太は数十人の暗殺隊に襲撃される。頭格は大垣半象、北山三羽烏といわれた二天一流の遣い手で、国家老・黒岩監物の配下だ。突きの鬼一と異名をとる一郎太は二十人以上を斬り捨てて虎口を脱するが、襲撃者の中に年貢半減令に賛同する城代家老・伊吹勘助の倅・進兵衛がいたことに愕然とする。忸怩たる思いの一郎太は藩主の座を降りることを即刻決意、実母・桜香院が偏愛する重二郎に後事を託して江戸に向かう。だが、事はこれでは収まらなかった。 -
大坂商人、柳生一族の陰謀に巻き込まれる!
時は寛永十三年――江戸城黒書院に呼び出された、惣目付を務める柳生但馬守宗矩。
上段の間の襖が開くと、老中の堀田加賀守より、「役目に奨励をもって、四千石を加増する」との旨が伝えられた。
本禄の六千石と合わせて、ついに一万石となり、晴れて大名となった柳生家。
だが、宗矩の顔は沈んでいた。
大名を監察する惣目付が、大名になっては都合が悪いためだ。
案の定、宗矩は即日惣目付を解かれ、監察される側に回されてしまう。
惣目付時代に買った恨みから、痛くもない腹まで探られてはかなわない。
なにしろ旗本から大名になれば、典令や家政が大きく変わるため、隙を生みやすいのだ。
一族最大の危機から逃れるべく、策を講じなければならなくなった宗矩は、なかでも武士が苦手とする金勘定が危ういと考え、ある秘策を思いつく。
なんと、大坂一と言われる唐物問屋淡海屋七右衛門の孫である一夜を召し出すという。
いったい柳生家と一夜は、どんな関わりがあるのか?
武士となった一夜に、宗矩の嫡男である十兵衛は、柳生家の者として剣術を身につけよと新陰流を指南するが……。
果たして一夜は柳生家を救えるのか?
痛快時代小説シリーズ第一弾!
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